vol.65

年末年始、ほっこり楽しむ「本・DVD」

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各業界から本好き・DVD好きがセレクト!
年末年始にほっこり楽しみたい「本・マンガ・DVD」。

今年も残りわずか。忘年会や仕事であっという間に年越しを迎えるひとも多いのでは。そんな中でも、やはり一年の締めくくりにはじっくり今年を振り返って、来年の抱負のひとつでも考えたいもの。つまり自分の時間が必要ということですね。 ということで今回は自分時間を充実させてくれる「本・マンガ・DVD」を各業界のみなさんに紹介してもらいました。編集者やスタイリスト、プレスから本の専門家まで、本好き・DVD好きがさまざまなジャンルからおすすめの作品をセレクト。年末年始のおともに、是非参考にしてみてください。

本や映画を扱うディレクターや専門店がおすすめする作品は、それこそ専門的で何となく難しそう...と思いきや、話題のコミックやビジュアルで楽しめる本など、すんなり入り込めそうなラインアップ。 一般の人にも興味が持てる、プロならではのセレクト眼。頼りになります。

幅 允孝さんのおすすめはコレ!

幅 允孝
ブックディレクター
BACH(バッハ)代表。人と本がもうすこし上手く出会えるよう、
様々な場所で本の提案をしている。
http://www.bach-inc.com
「Man on the Moon」【DVD】
監督:アンディ・カウフマン 配給:東宝東和
ジム・キャリーの演技もスゴイし、音楽のR.E.Mもスゴイ。
とにかくスゴイとしか言いようかないくらい、1番好きな映画です。
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「The Other Final」【DVD】
監督:ヨハン・クレイマー 製作 : ジャクリーン・クウェンバーグ
なんて牧歌的な。
そしてオランダ人のポイント・オブ・ビュー。
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「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」【BOOK】
作者:加藤陽子 出版社 : 朝日出版社
自分の中の日本史がひっくり返りました。
まだまだ知らないことに満ちている日本の歴史を知りたい方は、是非。
最高です。

UTRECHTのおすすめはコレ!

UTRECHT
ブックショップ
アーティストブックの出版、国内外のインディペンデントパブリッシャー/マガジンの流通など、本を用いた全ての活動を行っている。
青山にあるUTRECHTのショップは、ブックショップとしてはもちろん、取り扱い書籍や雑誌のバックナンバーを一覧できるショールームになっている。エキシビションスペース「NOW IDeA」、 テラスを使ったカフェ「aMoule」も併設。
http://www.nowidea.info
「The Story of a Mug」【BOOK】
作者: ビュックスタジオ
この季節いつも側にあるものと言えば、マグ。ティーカップよりも丈夫で、どんなに熱いものでも大丈夫。そして何よりも、気負いなく使える。いまや日常の風景の一部となったマグの歴史と、マグにまつわる色々なストーリーを、たくさんのマグの写真とともに纏めた一冊。西洋社会にマグの文化が根付くまでを追ったエッセイ、マグ文化から派生したとも言える、コーヒーショップの大きな紙コップについての話などなど。暖かい部屋の中で、湯気のたつ飲物を片手に読みたいテキストがぎっしり詰まった、小さな本。
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「僕の夜」【BOOK】
作者: ロベール・クートラス
商業的成功から背を向け、部屋にこもってひたすらに「カルト」と呼ばれる小さなカード状の作品を描き続けたフランスの画家、クートラス。「僕の夜」と彼が呼んだ、テンドグラスの様な小さなカルトたち。拾った段ボールなどに暗めのトーンで描かれたそれらの絵の向こうからは、動物や、ピエロ、死者たちが、こちらを見つめる。キリスト教の時祷書にも似た不思議な暖かさを持つ作品集、静かな冬の夜に良く合う。おどろおどろしさを持ちながらも、時折現れる聖母のような像の優しいまなざしが印象的。
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「It's Nice That #4」【BOOK】
世界中のすぐれた才能を発掘、紹介するイギリスの人気webサイト、It's nice thatが半年に一度、そのアーカイブのなかから選り抜きの内容をまとめ発行するクリエイティブマガジン。映画「君とボクの虹色の世界」や短編小説集「いちばんここに似合う人」で注目を集めるアメリカのアーティスト、ミランダ・ジュライ、ビョーク「ホモジェニック」のジャケット写真を手がけたファッションフォトグラファー、ニック・ナイトなど、著名なクリエイターをおさえながらも若い才能を数多く多く紹介。紙面はカラフルにまとめられており、ぱらぱら眺めるだけでもインスピレーションを得られそう。

コミックナタリー 唐木 元さんのおすすめはコレ!

唐木 元
コミックナタリー編集長
旬なマンガのニュースを毎日更新中。
http://natalie.mu/comic
「進撃の巨人」【BOOK】
作者:諌山創 出版社:講談社
今年もっともセンセーショナルなデビュタントとなった、2010年マンガ界の事件。完全新人/メディアミックスなし/絵は粗雑。ただ面白い、それだけでここまで支持されうるのだと証明した事実は、ハイプそしてバッドニュース吹き荒れる出版界におけるひとつの希望の光とすらいえましょう。物語は21世紀のデビルマン(そしてウルトラマン)。読んだ者はみな絶望の淵に叩き落とされ、それでも、ページをめくる手が止まらない。なにはともあれ今年のうちに出会っておくべき。
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「海獣の子供」【BOOK】
作者:五十嵐大介 出版社:小学館
皆さんは帰省したりするんですかね。そうなれば実家、こたつ、ミカンというぬくぬくコンボで、もはや地上の竜宮城といった相を呈していることでしょう。しかしそれも数日、怠惰の楽園にも飽きが来るもの。そこで、フィクションの力ですよ。世界中の海という海を舞台に起きる怪現象を追うこの作品は、当代一、二を争う画力と細やかな皮膚感覚を武器に、読む者を、一気に海洋のまっただ中にぶっ飛ばしてくれるのです。こたつの中にいても、横で猫がニャー鳴いても、この本を開いている限りあなたはイルカの背に乗って、深海までダイブしていることでしょう。現在既刊は4巻まで。最終5巻は2012年春か夏まで出ないので、完結を待つよりいますぐ読むべき。
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「ガラスの仮面」【BOOK】
作者:美内すずえ 出版社:白泉社
まとまった時間が取れる年末年始、普段はなかなか手を着けられない長編にトライするチャンスです。「失われた時を求めて」「死霊」はたまた「カラマーゾフ」? いやいやここは「ガラかめ」ですよ。老若男女を一切問わず、誰しもを引き込み、夢中にさせ、ときに白目を剥かせる、エヴァーグリーンかつエポックメイキンな感動娯楽大河巨編。私はこれまで「ガラかめツマンネ」って人に出会ったことがない。そして知ってるんです、意外と読んでない人が多いことを。長い休載が明け、今年、美内先生はふたたび怒濤のペースで執筆を再開されました。そして物語は46巻のいま、まさに佳境! この年末に追いついて、リアルタイムで終幕を迎えようではありませんか。

福井盛太さんのおすすめはコレ!

福井盛太
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS CEO
1967年愛知県生まれ。「プレジデント」編集部勤務などを経て現職。雑誌「ROCKS」の編集人、受託出版物や広告物の制作とプロデュース、企業のコンサルティグ、イベント、セミナー、スクール事業の企画立案やプロデュースなども行っている。
http://www.shibuyabooks.net
「レニングラード カウボーイズ ゴー アメリカ」【DVD】
監督:アキ・カウリスマキ 出版社:UPLINK(絶版)
ロードムービーのようでロードムービーではなく、「ブラス!」のような小市民のサクセスストーリーのようでいて、サクセスストーリーではない不思議な映画。登場人物たちは徹底的に無表情。なのに、温かみを感じさせる映像の不思議。小津安二郎好きのアキ監督らしく、小津映画のエッセンスが随所に観られるところも面白いです。一度填ったらやめられません。
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「宇宙飛行士オモン・ラー」【BOOK】
作者:ペレーヴィン・ヴィクトル 訳:尾山慎二 出版社:群像社
子供の頃から宇宙飛行士に憧れ、実際に宇宙飛行士になるオモン(主人公)。しかし、宇宙飛行士になったオモンに下された命令は「帰ることのできない月への特攻飛行!」。結末を具体的に書くと読書の楽しみが半減してしまうので書きませんが、最後に、大どんでん返しが待ってます。村上春樹とカート・ヴォネガットを足して二で割ったような文体と、どこまでも諷刺に飛んでいて、どこまでも現実的で、想念的なところが素敵です。心に余裕のある年末年始だからこそ、味わいたい小説。
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「穴」【DVD】
監督:ジャック・ベッケル 出版社:東北新社(絶版)
僕に「低予算映画」の魅力を教えてくれた作品です。ある小さな牢獄の囚人たちが、脱獄を決意し、それを計画し、実行に移す......というだけのストーリーなのですが、クローズアップを多用したカメラワークによる各囚人の心理描写が秀逸で、最後までドキドキしてしまいます。ストーリーは、地味な『レザボア・ドッグス』〈クエンティン・タランティーノ監督〉のようで、映像は、ジョン・カサベテス監督の名作『FACES』にも通じるものがあります。この映画にも、とってもシニカルな結末が用意されていてビックリ!。たとえ低予算でも、限られたスペースでの演出でも、ここまで人を引き込めるとは......とにかく凄い映画です。
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