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歌うことって、どういうこと。 ハナレグミ×小池アミイゴ 『だれそかれそ』の歌とアートワークをめぐる ぽつんと優しい音で紡がれた町の景色の話し

2013.07.09

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さまざまなアーテイストのカバー曲が大流行を続ける中、満を持して届けられた ハナレグミのオールカバーアルバムが静かなブームを巻き起こしている。ヒット 曲だから取り上げるのではなく、自分の人生のサウンドトラック、生まれ育った町のBGMとして選ばれた曲たち。ハナレグミ誕生のきっかけとなったアーティスト/DJの小池アミイゴと永積 崇自身ががっぷりよつに組んだアルバムジャケットも話題。古くからの盟友でもある2人が、歌に寄せる思いをじっくり語り合った。

Photo_Tomoyo Yamazaki【Toishi Management】

Text_Ikki Mori ,Edit_Satoru Kanai【Rhino inc.】

ハナレグミ
高校2年の頃よりアコースティック・ギターで弾き語りをはじめる。1997年、SUPER BUTTER DOG でメジャー・デビュー。 2002年、夏よりバンドと併行して、ハナレグミ名義でひっそりとソロ活動をスタート。現在までにアルバム5枚をリリース。現在、サントリー「角ハイボール」のCMソングとして、ハナレグミによる「ウイスキーが、お好きでしょ」がオンエア中。2013年5月22日には、時代を越えて歌い継がれる12の名曲を、多彩なゲストミュージシャンを迎えてレコーディングしたハナレグミにとって初となる待望のカバーアルバム『だれそかれそ』をリリース。その深く温かい声と抜群の歌唱力を持って多くのファンから熱い支持を得ている。 www.laughin.co.jp/hanare

小池アミイゴ
1962年群馬県生まれ。長沢節主催のセツモードセミナーで絵と生き方を学ぶ。1988年よりフリーのイラストレーターとしての活動をスタート。CDジャケットや書籍、雑誌等仕事多数。DJとして唄のための時間OurSongsを主催、デビュー前夜のハナレグミなど多くのアーティストの実験現場として機能。現在は日本の各地で暮らす人と共に、ライブイベントやワークショップを企画開催。2011年個展「その辺に咲いている花」(吉祥寺にじ画廊)、2012年個展「東日本」(青山space yui)を開催。2013年7月30日-8月3日青山CAYにてOurSongs「青山純情商店街」、2014年1月space yui にて個展開催予定。www.yakuin-records.com/amigos

あなたの街のBGM
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-もともと、今回のアルバムのアートワークをアミイゴさんに頼もうと思ったきっかけは、どういうところだったんですか?

永積 崇(以下永積/敬称略): アルバムの曲がだいたい出て来て、そろそろジャケット等を誰かにお願いしないとなぁと思って、WEBとかを見ているときに、偶然アミイゴさんのホームページに行き着いたんです。そこに、東北の町のスケッチがYou Tubeの映像になって流れてた。見ているうちに、なんだか今回のアルバムを立体的に見せてもらってる感じがして、そのまま連絡しました。

小池アミイゴ(以下小池/敬称略): 今、だいたいみんなメールが多いんだけど携帯が鳴って、見たら、あぁ永積くんだなぁと思って、何だろうなと思った。だって、電話もらったのが、8年か9年ぶりくらいだったんで...。そしたらアルバム・ジャケットの依頼で、しかもカバーアルバム!

永積: 今回初めてカバーアルバムを作ったけど、昔バンドやってた頃、アミイゴさんがイベントに誘ってくれて、DJの合間に弾き語りで陽水さんのフォークソングとかをやらせてくれた。そういうのが全部、映像を見てるときに繋がって、これは絶対アミイゴさんにやってもらう以外には考えられないなって思ったんです。

小池: 出会った頃、僕らは渋谷系って呼ばれる中にいたんだけど、崇くんみたいにちゃんと歌える人が少なかったから、最初はシンプルに「羨ましいなぁ」と思った。そして、彼が歌う場所を作ってあげたいなと思った。どちらかと言うと、いつでも帰ってこれる場所みたいな......。

永積: みんながワァーって踊ってると、突然ライブになって、「真っ白な陶磁器を♬」って、弾き語りのフォークソングが始まる。そしたら、当時のオシャレな格好してるコたちも、みんな座って聞き入ってくれるような時間がそこにはあったんです。そのとき本能的に、新しい・古い・かっこいいじゃなくて、自分がいいと思ったものを歌えば、その日、そのときで繋がっていくものになる、伝わるんだなって思った。だからアミイゴさんイベントのときに感じたそれが、今回のアルバムの原点だったと思う。

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-『だれそかれそ』のアートワークは、どんなふうに始まったんですか?

小池: 電話をもらった次の日の午後にレストランでミーティングして、人を描いて欲しいって言われて。僕は人を描くって、ある意味挑戦なんだけど、崇くんの歌があって町を歩けるならできるかなと思った。話の途中から、とにかく国立へ行きたくなって、次の週、中央線に飛び乗って出会った風景をどんどん描いていった。国立っていうのは、今回の『多摩蘭坂』じゃないけど、ミュージシャンにとって特別な何かがあるみたいだよね。 (忌野清志郎作の『多摩蘭坂』は、国立にゆかりのあるミュージシャンばかりで録音されている)

永積: なんかそうみたいですね。まぁ美大が近いっていうのもあると思いますよ。多摩美と武蔵美とか、あとは位置的に言うとヒッピー系の人が国立とか、そっちの武蔵野には多くて、文教地区っていうか、町としてもきれいだし、大学がある側は特に美しい。

小池: 中央線、新宿から乗っていくと、だんだん東京的な価値観とかいろんなものが引き剥がされていくんですね。で、高円寺を過ぎた辺りから少しずつ武蔵野の気配が見え隠れして、雑木林の影とかがザーッと車窓から見えて、着くと国立。降りるとなんかのんびりとした人たちが歩いてる、びっくりしますね。だから、東京じゃなくて、国立という町なんですよね。地方都市の駅のこっち側は立派で、でも、もう一つの改札口から行くと、畑の中に高速道路とでかい建物が見えたりとか、郊外型のショッピングモールがデーンとあったりとか、そういう今の日本そのものの景色もあるし...。

永積: アミイゴさんがアルバムに描いてくれたのは国立の町なんだけど、ほんとこれをパッと見たときに誰の町にでも起こり得るシーンを描いているなぁって思ったんです。僕から見たら、ここはあの場所の角だなぁとか、大学通りのどこらへんかなあとか思ったりするけど。ふと、こういう風に改札口を出る後ろ姿って誰もが見る景色だと思う。だから僕が一人で歌い終わったときには、自分がパートナーだった町だけど、この絵と一緒になったときに誰の町にでもなってしまう。一人ひとりの「あなたの町のBGM」になれたと思う。

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