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誰もが手にとる魅惑のカバン。 GRIPSのモノ作りに迫る。

2011.10.08

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「バッグの取っ手を握られる、そして、すべての人々の心を掴めるように」をコンセプトに、流行に左右されない普遍的なバッグや小物をリリースする〈グリップス〉。その丁寧な作り込みと優れた機能美に共感し、長年愛用しているファッショニスタは数知れず。注目度の高さは、雑誌での反響や、メジャーレーベルとのコラボレーションが物語っています。中でも、シーンを牽引するセレクトショップ、エディフィスとの共同制作で発表されたトートバッグは、店頭に並ぶやいなや売れに売れ、入荷待ちが相次ぐほどの人気でした。その名作が生まれた背景にはいかなるドラマがあったのでしょうか。今回は、仕掛人であるエディフィスのバイヤー紺野氏と、〈グリップス〉のディレクター朝原氏に、制作の舞台裏を語っていただきます。

Photographs_Hiroyo Kai(STUH)
Text_Kyosuke Nitta

「普遍性を追及する両者が導き出した答えとは?」

―まず、エディフィスが〈グリップス〉とコラボをする経緯についてうかがいたいのですが。

エディフィスバイヤー:紺野浩靖氏/以下紺野:敬称略):一昨年くらい前にトートバッグの大きな潮流があって、主流だったアメリカンテイストだけでなく、エディフィスとしては、品のあるジャパンメイドのトートを探していて。いくつかのブランドさんの展示会などを拝見して、それこそたくさんのバッグを手に取ったんですけど、〈グリップス〉のショールームでこのトートバッグを持ったときに、「あ〜これは良いバッグ」だなって。飽きがこないデザインで、使い勝手の良いサイズ感で、汎用度も高い。しかも、縫製などの細かい部分まで日本製らしい細やかさが行き届いていて、誰からも愛されるトートバッグになるって、そのとき直感的に思いましたね。

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―それからマリンボーダーの別注トートバッグに至ったんですか?

紺野:そうですね。たくさんの生地や色で勝負するのではなく、エディフィスでも頻繁に使用しているマリンボーダーと、トリコロールテープをエッジにあしらった白のキャンバス。その2パターンで別注させていただきました。

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―〈グリップス〉の定番アイテムとしてもこちらのトートは展開されていますが、別注ではどう変わっているんでしょうか?

〈グリップス〉ディレクター朝原健氏/以下朝原:敬称略):素材やレザーの色味などはディスカッションして決めていったんですけど、〈グリップス〉で展開しているオリジナルトートの取っ手は、少し深みのあるキャメルのレザーを採用しているんですが、エディフィス別注では、マリンボーダーにマッチする淡いベージュにしたり。生地自体も、白のキャンバスにボーダーをプリントして、染み込んだような質感にして風合いを出したり、単なるボーダーのトートバッグにだけはならないように、さり気ない遊びを随所に散りばめていますね。

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―初めてこのトートを見た時の率直な感想は、エディフィスらしいなと思いました。

紺野:普遍的で新しいというエディフィスの在り方と〈グリップス〉のスタンスが合致していたので、"ボーダー"というキーワードだけをお伝えして、モノ作りの舵取りに関しては朝原さんにほとんど委ねてましたね。

―作り手として意識したことはありますか?

朝原:もともとエディフィスには足繁く通っていて世界観をつかんでいたので、そのスタイリングの中でどう調和するかを考えましたね。オーセンティックに終始せずに、ちょっとしたモダンな遊び心を入れるというバランス取りが難しく、かつ楽しかったですね。

―春夏のデリバリーが開始した当時の反応はどうだったんですか?

紺野:びっくりするほど早かったですね。新しいカバンが入荷すると、最初のシーズンは思ったほど結果が出ないっていうパターンが多いんですけど、サンプルが出来上がったときの、"絶対お客さまに喜んでいただける"っていう手応え通りのリアクションでした。

―エディターなど、ファッション関係の人でもこのトートを愛用されている方をよく見ますが、支持された決め手はどこにあると思いますか?

紺野:実際店頭で販売するスタッフが、このバッグに惚れて愛用してくれていたことが一番ですね。スタッフのブログで「俺のグリップス」というタイトルで魅力を紹介していたり(笑)。売る側の人間がプロダクトの良さを分かっていたからこそ実売につながったんだと思います。買い付けから、販売を介してお客さまの手元に届くまでの過程が、僕らの理想とするカタチでしたね。

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―ファストファッションのカウンターとして、モノ至上主義というメンズの原点に戻りつつありますが、〈グリップス〉の全アイテムに共通して、クオリティがすごい高いのにコストパフォーマンスも非常に高いですよね。

朝原:店に良い商品があっても誰かに買ってもらわないと、誰かが使ってくれないと意味がないっていう気持ちがありますね。モノ作りの妥協点は下げたくないので、そこはいつも消費者目線で考えるようにしています。次のシーズン、またその次のシーズンも〈グリップス〉のバッグが欲しいと思っていただきたいし、思われるバッグでありたい。安くしよう安くしようという気はないですが、価格の部分も大事な要素のひとつですね。

―今年の5月にこの原宿の路面店ができて、ストリートシーンの声が直に届くと思うんですが。

朝原:全国からエンドユーザーの方々が集まってきてくれて、ファンの人が僕らにどういったカバンを期待していて、どんなカバンに惹かれるのかが分かるという部分は面白いですね。ファッションのど真ん中に拠点を持って、メディアの皆様が取り上げてくれたり、セレクトショップの方々や、名だたるブランドさんが「一緒にモノを作りましょう」って言ってくれたりすることを考えると、認知度が上がってきてるのかなっていう実感はありますね。

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―今季秋冬、エディフィスでは別注ではなく〈グリップス〉のオリジナルトートをバイイングされていますよね。

紺野:そうですね。今シーズンのエディフィスは、引き続きマッキントッシュの別注品や、ハリスツイードのアウターなど、キーワードのひとつとして"ブリティッシュトラッド"を掲げているんですが、そのテーマの中に今季の〈グリップス〉のアイテムが違和感なくハマったので、生地違いをオーダーする必要性はなかったですね。あと、エディフィスのいち部分として提案した方が、〈グリップス〉の世界観を真っ直ぐに伝えられると思ったので。

―このトートバッグの型にこだわった理由はなんでしょうか?

紺野:普遍的なアイテムって、もっと普遍的であってほしいと思ったからですね。それだけのポテンシャルがあると心底思いますし、これからも長く〈グリップス〉を提案して、これをトートバッグのニュースタンダードにしたいなと思っています。

―最後に、〈グリップス〉のブランドフィロソフィーとは?

朝原:TPOを選ばない、スタイルを制限しない、そういうモノ作りを徹底していきたいですね。女性がメンズライクなバッグを持ってもいいですし、男性がフェミニンな雰囲気の小物を使ってもいい。性別も関係なく、ブランド名にもあるように、グリップス=持ちたいものというアプローチを真摯にし続けたいですね。

次のページでは、朝原氏に定番から新作アイテムまで、その職人気質たっぷりなディテールを紹介していただきます。

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