The Direction of 3 SHOPS. 3人のバイヤーが語る 2011年秋冬と 来春夏。
2011.08.09

ファストファッションの隆盛や不況の波を受け、停滞するファッション界において、新しいムーブメントを起こそうと奮起し続ける3つのショップのバイヤーをクローズアップして、取材を敢行。彼らが世界を廻り、収穫してきた2011年秋冬のファッション。それぞれのショップが仕掛けていく試みなどについて、連載で紹介していきます。
Vol.1は、肩慣らし的なプレ号として、先日足を運んで見てきた2012年春夏について語ってもらいました。ちょっと先の話にはなりますが、かなり興味深いので、ぜひご一読を。
Photos_RINTARO
INDEX
1. 注目は、とにかく〈ウミット・ベナン〉!!
2. それぞれが気になったブランドは?
3. 環境においても、東京は先を行ってる??
―バイヤー鼎談と言うことで、2011年秋冬のお話を聞く前に、まずは先日開催された2012年春夏の話を少し伺いたいのですが。まずは、みなさんどちらへ足を運んだのですか?
中箸充男氏(以下敬称略):僕は、ピッティとミラノへ。
小木基史氏(以下敬称略):僕らは、イタリアから、パリ、ロンドンへ行って。トルコにも行ってきました。
小木氏やユナイテッドアローズのバイヤーたちが訪れた、トルコ・イスタンブールの景色。ビザンティン様式のトルコ・イスラム建築で建立されたモスクが、美しい景観を作ります。[撮影:小木氏]
関根陽介氏(以下敬称略):僕はミラノとパリです。
―ピッティへは行かずですか?
関根:ピッティは別のチームが。
―各所で感じたファッションの流れや、トレンドってありましたか?
小木:エスニックのトレンドが一番印象的でした。
関根:エスニックは感じましたね。それとニュアンスの部分で、「エレガンス」かつ「軽さ」っていうのもひとつのキーワードだと思います。フェミニンではなく、男らしさのある「軽さ」。
中箸:そうですね。
―記憶に残ったコレクションや展示会はありますか?
中箸:〈ウミット・ベナン〉ですね、間違いなく。キーワードが3つあって「リラックス」「コンフォート」「ファンクショナル(機能性)」、これを備えていたのが〈ウミット・ベナン〉でした。あと〈トラサルディ1911〉に就任した件も重なって。
3者が大絶賛した〈ウミット・ベナン〉。2012年春夏は、80年代のイタリアンファッションを牽引したニノ・チェルッティと彼の孫からインスピレーションを得たコレクションを展開。注目度はうなぎ登りです。
―バーニーズ ニューヨークは買い付けたのですか?
中箸:2012年春夏から展開します。ニューヨークのバーニーズでも注目していると言っていました。
小木:プレゼンテーションも面白かったですよね。ニノ・チェルッティと彼の孫にスポットを当てていて。
関根:ガーデン パーティ前の写真展も素晴らしくて。自分の家族だったり、故郷だったり、工場だったり、自分の洋服作りの過程すべてをリスペクトしていて。その写真を展示していたんですが、面白かったですね。
ガーデンパーティスタイルで発表したコレクションと同時開催された写真展。彼の親族や、彼の服の生産を請け負うファクトリーの職人などを写真に納めていました。[撮影:関根氏]
ビームス関根さんと、デザイナーウミットの記念ポートレイト。1980年生まれとは思えない貫禄と、抜群のファッション感覚は新しいムーブメントを巻き起こす予感がムンムンです。[撮影:関根氏]
小木:80年代、イタリアのファッションをニノ・チェルッティが牽引していたことをリスペクトしていて。そのリスペクト感も男っぽくてカッコイイですよね。僕らと世代が近いせいか、色々なカルチャーに興味を持っていて共感できます。実際にバイイングの場に同行して事務所にも行ったのですが、ウミットの友人が〈シュプリーム(Supreme)〉のキャップをかぶっていたり、〈ナイキ(NIKE)〉のスニーカーが置いてあったり。
UA小木さんが訪問したウミット・ベナンのアトリエ。コンセプチャルな作品に紛れて、80年代生まれらしいストリートミックスな感覚も。〈ナイキ〉のスニーカーを愛用しているようです。[撮影:小木氏]
―〈トラサルディ1911〉の方はいかがでした?
関根:とにかくすごい人でした。コレクションも随所にウミット・ベナンらしいクラシックエッセンスが効いていて良かったです。演出も凝っていましたね。
―なんだかショー直前に立ち見に変更になって、モデルがイカした車でやって来る演出でしたね。
中箸:最後はタクシーになっちゃっていましたが(笑)。
関根:ギリギリまで演出を悩んでいたみたいですよ。
2012年春夏からクリエイティブディレクターに就任した〈トラサルディ1911〉のコレクション。ショーの最後には、トラサルディ女史と抱き合い、蜜月関係を表現しました。