擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」をこよなく愛しながらも、自分のことが好きになれない27歳の由嘉里。同世代のオタク仲間たちが結婚や出産で次々と趣味の世界から離れていく現実を前に、仕事と趣味だけの生活に不安と焦りを感じた彼女は、婚活を開始する。しかし、参加した合コンで惨敗し、歌舞伎町の路上で酔いつぶれてしまう。そんな彼女を助けたのは、美しいキャバクラ嬢のライだった。ライとの出会いをきっかけに、愛されたいと願うホスト、毒舌な作家、街に寄り添うバーのマスターなど、さまざまなひとたちと知り合い、関わっていくことで、由嘉里はすこしずつ新たな世界を広げていく。
PROFILE
1997年、東京都生まれ。映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で第40回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞・新人俳優賞など多くの映画賞を受賞。その後、2023年公開の主演映画『市子』では第47回日本アカデミー賞優秀主演女優賞と第78回毎日映画コンクール〈俳優部門〉女優主演賞を受賞。主な出演作にNHK連続テレビ小説『おちょやん』(20-21)、テレビドラマ『アンメット
ある脳外科医の日記』(24)、映画『52ヘルツのクジラたち』(24)、『朽ちないサクラ』(24)、『片思い世界』(25)など。
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PROFILE
2006年、埼玉県生まれ。Mr.childrenやOfficial髭男dism、Vaundyなど多くのMVに出演。2023年にNETFLIX『舞妓さんちのまかないさん』でドラマデビューを果たし、同年に映画『ちひろさん』、『アイスクリームフィーバー』に出演。主な出演作にテレビドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』、映画『まだゆめをみていたい』(24)、『花まんま』(25)など。2026年には『終点のあの子』他、映画公開作品が控える。
Instagram:@kotona_minami
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掴みきれないからこそ演じられる。

― “生きること”をテーマにした作品と聞くとシリアスに捉えがちだと思いますが、今作は考えさせられる部分もありながら、力強くも優しく寄り添ってくれるような温かさを感じる作品でした。杉咲さんは松居監督とは『杉咲花の撮休』以来のご一緒ですが、今回は脚本にも関わられたそうですね。どういったコミュニケーションを取りながらご参加されましたか?
杉咲: 松居監督と、共同脚本の國吉(咲貴)さん、プロデューサーの深瀬(和美)さん、白石(裕菜)さんが映画という約2時間の尺にぎゅっと収めた素晴らしい脚本を用意してくださっていて、深く感動しました。そのうえで、原作に感動したひとりとしても、由嘉里が思っていることと、口に出すことの線引きをどこに置くかということについて、みなさんと意見交換を深めていきました。たとえば、由嘉里がライにいなくならないでほしいと感じた瞬間に、それをいつ、どこまで音にするのか。そういった細かいニュアンスやタイミングを探っていきました。

― 腐女子である由嘉里の推しへの熱量の演技は解像度が高く、単なるモノマネではないリスペクトが感じられました。参考にした人物や意識したことはありますか?
杉咲: 実際に腐女子の方にお話を聞かせていただいたり、スタッフの皆さんがリサーチした資料を共有してくださったりしました。BLを愛している由嘉里を大切にしながら、他者との間に引かれている境界線をどのように捉えていて、どんな死生観をもっているのか、そういった面にも慎重になりながら、彼女がどう生きているかを大事にしたいと思っていました。
― 南さんは、脚本を最初に読まれたときどう感じましたか?
南: 純粋に「この世界に入りたい」と思いました。キャバ嬢という肩書きのインパクトよりも、ライの発する言葉に共感できる部分があって。1人の人物として強く惹かれましたし、今まで読んだことのないストーリーだったので、映像化を想像しただけでワクワクしました。

― ライは希死念慮を抱えるキャラクターで、シリアスになると重くなりすぎる、逆に軽すぎるわけにもいかない。ライを演じる上で何か意識されてた部分はありますか?
南: 撮影に入る前にそのバランスをすごく考えていました。監督からは「オーディションで見せてくれたままで大丈夫」と言われましたが、経験がない分、悩みながら臨みました。でも最終的に身を任せるわけじゃないですけど、監督の言葉を信じて演じて良かったなと思っています。
― 南さんは松居組に初めて参加してみていかがでしたか?
(チラチラと横目で松居監督の顔色を伺いながら、ニヤニヤする2人)
南: ほんとこういう空気感の現場でした(笑)。
杉咲: そうだね。
南: のびのびとやらせていただいてありがたかったですし、「いまの良かったよ」とか、ストレートな言葉を投げかけてくれていたので、ホッとする場面も多かったですね。監督は少年のような、ちょっとオーバーなリアクションをすることが多くて、言葉で言われなくても「いい画が撮れたんだろうな」と伝わってくる感覚がありました。


― 今のラリーで現場の和気藹々としたムード感がひしひしと伝わってきました。役者さんには共感から広げていくタイプと、演じながら形が見えてくるタイプがいると思いますが、お二人は?
杉咲: 他者や社会と上手く折り合いがつかない部分を探していくと、役に近づきやすい気がしています。この作品のオファーをいただいたのが3年前だったのですが、その時期に由嘉里には何か他人事ではないような強いシンパシーを感じてました。その後自分の中でもさまざまな出会いや経験をさせてもらって、死生観などがすこし変わってきていたタイミングでもあったなか、由嘉里の境界線を飛び越えてでも相手に踏み込む、その強さに改めて圧倒されました。それが、良いとか悪いとかではなく、由嘉里のそういう部分は、やっぱりいまも嫌いになれないんですよね。
南: 正直に言うと、私はライが何を考えているのか、最後まで掴みきれませんでした。でも、がっしり掴めてしまったら逆に違うのかなとも思っていて。でも共感できる部分もあったので、そこを糸口にスッと役に近づけた感覚はありました。
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