
コントユニット「明日のアー」鼎談。 不気味の谷からおもしろの丘へ。
11月3日(金)〜5(日)で原宿・VACANTにて開催される、明日のアーの第三回本公演『日本の表面』w/左右。公演前に主宰の大北栄人、出演もするトリプルファイヤーvo.の吉田靖直、そして明日のアーのファンを公言するAR三兄弟長男の川田十夢が集まった。それぞれの活動で追い求めるユーモアと今回の公演の話を、食事を交えながら語る。
- Photo_Shintaro Nakamura
- Edit_Nonoka Sasaki
11月3日(金)〜5(日)で原宿・VACANTにて開催される、明日のアーの第三回本公演『日本の表面』w/左右。公演前に主宰の大北栄人、出演もするトリプルファイヤーvo.の吉田靖直、そして明日のアーのファンを公言するAR三兄弟長男の川田十夢が集まった。それぞれの活動で追い求めるユーモアと今回の公演の話を、食事を交えながら語る。
左から、吉田靖直(トリプルファイヤーvo.)、大北栄人(明日のアー)、川田十夢(AR三兄弟長男)
川田:台本の執筆は順調なんですか?
大北:順調なんですけど時間かかりますねえ。おもしろいことって時間かけないとほんとおもしろくならない……吉田くんは歌詞を書くとき、どうやってるの?
吉田:あー、ギリギリにならないとやらないんで、追い込まれて徹夜でバーッとやる感じですかね。
川田:アイデアをメモしないって言ってたもんね。
吉田:たまに書き溜めることもあるんですけど、うまく使えたことがないっていう。未だに作り方はわからないですね。
川田:何かさ、バンドって曲を作りためるとライブができるじゃない。コントはなんでそういうことしないんだろうね。
大北:あー、単純に発表の場がないだけかもしれないですね。音楽のイベントに呼んでもらえたら喜んでやるんですけど。
吉田:アーは「面白いことやるぞ」っていう感じでやってるんですか?
大北:「コント」ってうたってるし面白いことやりますよっていう感じでやってますね。芸人さん的な面白さとは違うなとは思ってるんですけど。
川田:吉田くんは曲書くときに、何ミリかは「ウケよう」と思ってやってるの?
吉田:結果的にそうなってるっていう感じですかね。歌詞を書くときに意味のない感じがいいなと思ってて、その道具としておもしろ要素を取り入れてる感じです。
大北:十夢さんも、笑いやユーモアを意識してふだんも制作してますか?
川田:(笑いやユーモアを)入れようと思ってやってますね。でも、作り込んだものを舞台上で披露するという見せ方はあまり気分が乗らなくて。基本的には仕組みを作って、それを見せるという前提でユーモアを発揮するイメージですかね。
大北:ライブで吉田くんたちの出番になったら、お客さんけっこう笑ってるよね。
吉田:いや、ワンマンだったらもう誰も笑ってないっす。
大北:ああ、聴き込みすぎた人たちは(笑)。
川田:トリプルファイヤーの客は特殊だよね。好きなんだろうに、本当に好きになったり、ノったりしたら負けだと思ってるんじゃないかな。ファンにも「吉田ぁ~」とか呼ばれてるし。尊敬されるヴォーカリストのあるべき姿じゃないでしょ(笑)。
吉田:でも、ヒロトとかも呼び捨てなんで。
川田:そっか、ブルーハーツ感覚だったんだ!
吉田:その感じとは、何となく違う感じもしますけど。後輩感覚で呼ばれてるのかもしれないです。
大北:ファンから後輩感覚! すごい。上に立つんじゃなくて下に降りるんだ(笑)。
川田:その吉田くんが出るんでしょ? 見ものだなぁ。
大北:吉田くんは家庭の事情で、練習の合流がめちゃめちゃ遅いんですよね。
吉田:実家の仕事を手伝うことになって。出るって言っただけで、まだ何もしてないっす。
大北:吉田くんは演技やったことあるの?
吉田:小学校のときにやったとか、そんくらいっすね。
川田:そもそも決まったことをやってくれるの?(笑)。
吉田:まぁ、そういうものだと思ってるんで。
川田:何で吉田くんに出てって言ったの?
大北:吉田くんとか「左右」の花池くんは佇まいが圧倒的に面白いんですよね(笑)。だから正直、演技とか全然できなくていい。
川田:左右の花池くんは役者としての出演だけじゃなくて、生演奏もやるんだ。年々豪華になっていくね。
大北:今年はもうそういうただおもしろい人いっぱい呼ぼうと思って。プープーテレビで一緒にレンチン動画をやっている古賀及子さんが出ますね。「高校のとき、演劇部だったから出してくれ」って本人からオファーがあって(笑)。あとはチラシをデザインしてくれているよシまるシんさんにも出てもらうことになりました。
川田:よシまるさんは何で出ることになったの?
大北:前にアフタートークで出てもらったときに出演者の中で「よシまるさんって変だね」って話があがって。何か変な人に出てもらうみたいな流れになっちゃってるんですけど(笑)。
吉田:明日のアーは、俳優さんが少ないですよね。
大北:宮部、八木、郷田の3人しかいないのでこの3人にフル稼働してもらおうと思ってます。
川田:あとさ、舞踏家のトチアキタイヨウさんも毎回異常な存在感だよね。ヌケの良い、溌溂とした淫靡さのある人というか。俺、トチアキさん好きだな。
大北:「山海塾」っていう世界的な舞踏団体で10年くらい踊っていた人なんですけど、喋ると普通の優しい人ですよ。
吉田:怒ったら怖そう……。
川田:(笑)。モデルの7Aさんも不思議な存在感ですよね。
大北:そうそう! 「いい意味で“よくわかってない感じ”がいい」って言われたり。本人すごく利発な人なんですけど、親戚の集まりにいる親戚の子どもみたいな「あっち行って遊んでなさい」感よく出てますね(笑)。
川田:わかるわかる。あと、アーは旗揚げのときから藤原くんとか土屋遊さんスミさんとか、有名なwebのライターさんもけっこう出ていたでしょ。記事の中で文体を持っていて、空気感のある人が役として舞台にあがっても、文体の空気を纏えるんだなっていう印象でしたね。
大北:土屋さんは「セリフがなかなか覚えられないから今回は出ない」って言ってたんだけど、そしたら宮部さんが「土屋さんのセリフをなくしてくれないか」って(笑)。
川田:そんな役あるんだ(笑)。
大北:舞台にいるんだけど何もしないっていうジョン・ケージ(※ピアノを弾かない『4分33秒』の人)的な役があるんじゃないかな(笑)。明日のアーは藤原くんとか土屋さんがいるのが特徴的で、藤原くんをはじめて見た演劇関係の人らは「稀に見る棒読み」って、びっくりしてましたね(笑)。
川田:初回の公演からすでに「ずっとやってました」みたいな顔してたよね。旗揚げ感がなかった(笑)。あれも“アーらしさ”の一部だよね。
川田:アーは数的には「劇団」と化してるよね。何て名乗っているんだっけ?
大北:「コントユニット」ですね。でも“何て名乗るのか問題”はずっとあって、劇団と名乗るほどの根性がないし、コントユニットと言うと、パッと思い浮かぶのは芸人さんですしねぇ。
吉田:コントと聞いてから見に行くと、明日のアーは今まで見てきたコントとは違うなっていうか、独特なものがあって……。
川田:吉田くん的には、見てきたものと違った感じがした?
吉田:ただ笑いをとることが目的じゃないというか。
川田:僕から見たら「東京のコント」っていう感じがするというか……何だろうね、お芝居寄りというか、それこそ笑わせるだけが目的じゃないよね。
大北:「コント」ってそもそもは「笑わせるための短い劇」という意味だと思うんですけど、今は芸人さん思い浮かべますよね。
川田:芸人さんってアスリート感覚だよね。大きい声を出して「記録」で結果が出るというか。たまに飛距離出てないけど面白いっていう人はいるけど、大北さんのやっていることとは、おもしろの出力の仕方とかボリュームとか色の濃さとかが違う気がする。
大北:落語見てて思ったんですけど、古典で単純なギャグなんですけど笑っちゃうんですよね。適切なタイミングで大きな声量や身体性をもってやられると、反射で笑ってしまうんですよね。
吉田:あー、笑っちゃうけど、すごく面白いと思っているかというと、そうでもない。
大北:わっはっはっ、おもしろくないな、っていう感じかな(笑)。あと、芸人さんのコントとの違いとしては自動ドアが開くときに「ウィーン」って自分で言うかどうか。「喫茶店でも入ろうかな、ウィーン」って笑いの最短距離を芸人さんはとる。けど実際にそんな人はいないですよね。
川田:それはやらない派?
大北:テアトロコントのトークでその話になったんですけど、やっぱやらないなって思って。何か失われるものありそうじゃないですか。
川田:失われるものは、観客の想像力ですよね。「この人たちの関係性は何だろう」という1つのチャンネルみたいなものを1回閉じちゃう。
大北:確かに、豊かさみたいなものは減るかも。気持ちとしてはリアルからは遠ざかりたいんだけど、自動ドアウィーンはしたくないっていうのがある。試行錯誤しつつ、ですね。
川田:大北さんはデイリーポータルZでも長年書いてきてるわけだけど、ライターのときとコントのときはギアを変えてるの?
大北:基本は同じですけど。明日のアーの方はとにかく全力で自分を笑わせにかかってる。「理論物理学」をやってるような感じで、純粋に面白いことをやってるのが明日のアーですね。
川田:今年は「昇悟と純子」の長編も上演していたけど、何か変化はあった?
大北:長いの書く場ができたのでアーは短くしようと。ドラマの重要な部分にアホなことを詰め込んでいったので、基本的なつくり方も変わらなかったし。
川田:お芝居のほうでは「これ、ずっと見ていたいなぁ」というコントの長尺を見れた気がして楽しかった。
大北:昇悟と純子もそうなんですけど、最近の傾向として生活の中で拾ってくるおもしろが多いんですよ。“あるある”といえばそうなんですけど顕著やなと。牛角の看板にある「炭火で焼き肉が食べたい」とか。
吉田:あの言葉に注目したことなかったですけどね(笑)。最初は何のこと言ってるのか、全然わからなかった。
大北:そっか(笑)。
川田:いや、でもねぇ、僕はあのコント(※他人の好きだという気持ちをコピーするコント)けっこうクリティカルだと思いますよ。テキスト情報って文字情報に付随するメタ情報があって、コピー&ペーストしたときに、そのメタ情報が付いてきちゃう感じがすごく面白いなって。複製するときに何かしらのメタ情報が入ってきちゃったり、入らなかったり、でもテキストとしては同じものだったり。
吉田:いや~、でもツッコミどころありすぎじゃないですか。「炭火で焼き肉が食べたい」って。あるあるの解釈がおかしい(笑)。
川田:吉田くん、明日のアーに出演するなら、「大北ペディア」の「あるある」ページを読んだほうがいいよ。絶対僕らの知ってる“あるある”と違うから。
大北:うーん、みんなのあるあるというより「これからのあるある」というか「未来のあるある」(笑)。
川田:あるあるカンブリア紀(笑)。
吉田:一度わかるとクセになるんすよね、中毒性がある。
大北:去年の「猫の未来予想図Ⅱ」って、未来のことをたくさん書こうとしていたんですよね。
川田:え、じゃあ今回は未来じゃないの?
大北:今回は今の話をやりたいんですよ。“あるある”が多いのは日本の一番上っ面の部分やなって思って「日本の表面」っていうタイトルにして。ただ、どうしても未来っぽい話も多くなるんですよね。新しいものが人間に馴染んでいないところにユーモアが介在するというか。
川田:わかるわかる。不気味の谷の逆には、何かあるんじゃないかと思ってて。
大北:不気味の谷の逆……おもしろの丘?(笑)。
川田:おもしろの丘はあると思う、ほんとにほんとに。
大北:あはははは(笑)。この丘を越えるとおもしろが終わるぞ…!! って?
川田:うん、谷と丘はセットだと思うよ。セットなんだけど、世の中はまだみんな知らない気がしますね。文字にしたとき笑っちゃうよね(笑)。
大北:お芝居でも不気味の谷っていうのは存在してて、ちょっとお芝居を始めていくと、どんどん変になるというのがある。宮部さんとか八木くんとかは完全に谷を抜けきった人なんですけど、ライターの土屋さんや藤原くんは3年目なので、ちょっとうまくなっているんですよ。だんだんと不気味の谷に(笑)。
川田:AIの話で言うと、僕が今担当しているラジオにAIアシスタントが入っているんですけど、すげぇやりづらくて、すげぇ気を遣ってるの。おもしろの丘がまだ見えていなくて、いら立ちの沼にいます(笑)。
大北:おもしろの丘にみんなでサンドイッチ持ってピクニックしに行きましょう(笑)
川田:改めて、今回のアーはどんな感じになりそう?
大北:吉田くんとか花池くんとか今まで会ったおもしろい人たちがたくさん出るのでブラックジャックの最終回みたいな感じ(笑)。たくさん出て短いのバーっとやって、今しか楽しめないような話をする。去年Facebookのスパムのコントやったんですけど、もうみんな忘れつつありますからね。最近あった話をわーって消費するお祭りをやって、そんでそれ毎年できたらいいですね。
川田:僕ね、大北さんがやってきたことは記事でも読んでたし、映像も見てたけど、一番コントがずしっと来たの。「あ、この人コントやるために生まれてきたんだ」と思ったよ。100mの記録出せる人は100mに出るべきだし、それが大北さんの場合はコントだったんだと思う。今年の「日本の表面」も楽しみにしてます。
明日のアーの第三回本公演『日本の表面』w/左右