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SILENT POETSを前に進めるブランド、POET MEETS DUBWISEのすべて。

SILENT POETSを前に進めるブランド、POET MEETS DUBWISEのすべて。

12年ぶりのオリジナルアルバム『dawn』のリリースを経て、フルバンド編成による初ライブの開催、その模様を収めた映画『SAVE THE DAY』の上映と、トピック尽くしのSILENT POETSこと下田法晴。音楽家であると同時にグラフィックデザイナーでもあり、〈ソフネット.(SOPHNET.)〉や〈F.C. レアル ブリストル (F.C. Real Bristol)〉などのロゴデザインやグラフィックデザインを手がけてきたことはご存知でしょうか。そんな音楽とデザインを生業とする下田による新たなプロジェクトが、SILENT POETSのオリジナルブランド〈POET MEETS DUBWISE〉です。なぜブランドを立ち上げたのか。その背景には、自身に訪れた変化が深く関わっていました。

  • Photo_Kengo Shimizu
  • Text_Shota Kato
  • Edit_Ryo Komuta
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ぼくがダブに出会った=POET MEETS DUBWISE

〈POET MEETS DUBWISE〉はSILENT POETSの再始動に合わせて始まったと思いますが、正確にはどの作品をリリースするタイミングでしたか?

下田『東京』の7インチ盤のリリースですね。JAZZY SPORTが7インチをディストリビューションしてくれるという流れがあって、Tシャツも作ってみないかと提案があって。レコードのリリースに合わせてTシャツをつくる、というプロモーション的なノリでデザインしました。それがありがたいことにすぐ売り切れになったんですね。12年ぶりのアルバムとフルバンドでの初ライブ、そのライブを記録した映画(『SILENT POETS SPECIAL DUB BAND LIVE SHOW the MOVIE』)をカタチにしていくなかで露出が増えてきて、本格的にブランドをやってみようかなという気持ちが湧いてきました。

〈POET MEETS DUBWISE〉というブランド名はSILENT POETSに関わる言葉で構成されていますが、どんな由来があるんでしょうか。

下田POETはぼく、DUBWISEは音楽の核であるダブ。SILENT POETSがスタートしたということを、ぼくがダブに出会ったというニュアンスをMEETSで表現しました。

タイポグラフィとして並べると、すごくかっこいい字面ですよね。

下田デザインの経験上、大体DUBって入れると微妙になりがちなんだけど(笑)、これはうまくいきましたね。MEETSはレゲエのダブアルバムで、ある曲をキング・タビーがダブしたということを表す時に、「King Tubby MEETS ◯◯」という使い方をするんです。実はこういうところでもダブを意識していて。

¥6,800+TAX

自分が着たい、友人にも着てほしい洋服。それが広がってくれたらいい。

初めは一型のTシャツだったプロダクトを、ブランドとして拡大していこうと思えたのは何が大きかったんですか?

下田単純に欲しいという人がいてくれて、売り切れになることがあったから。やっぱり求められるとつくりたいと思いますし。あとは、ぼくの友人たちにも着てほしいから、そのためにもつくりたいという理由もありました。それが広がってくれたらな、と。

プロダクトのバリエーションに潔さがありますよね。Tシャツ、ロングTシャツ、パーカーが中心ですし、カラバリも白・黒・グレーがメインというシンプルな構成で。

下田自分が着たいモノがいわゆるオーソドックスなものだから、あまり売り物ということは意識しなかったですね。

親交のある「リトルナップ コーヒースタンド(Little Nap COFFEE STAND)」とコラボレーションして、「COFFE MEETS DUBWISE」などのプロダクトも汎用的に展開しています。

下田ぼくの音楽はリトルナップ周りの人たちと接点ができたことで、フルバンド編成のライブに繋がっていたりするんですよね。いい仲間ができたというのは、〈POET MEETS DUBWISE〉のひとつの方向性でもあって。

1stコレクションは、SILENT POETSを連想させるわかりやすいグラフィックや言葉を引用していますよね。

下田最初ということで自分の音楽を聴いていた人がわかる、直接的に結びつくようなものを選んでいます。アルバムのジャケット写真を撮ってくれている内田将二くんの作品もわかりやすいものを使っていて。

各¥5,800+TAX

下田さんは過去には〈ソフネット.〉や〈F.C.レアル ブリストル〉などのロゴデザインを手がけていて、グラフィックデザイナーとしてブランドに関わってきましたが、ものづくりのルールとして掲げていることとは何ですか?

下田たしかにグラフィックデザイナーとして関わってきたけど、ぼくは基本的に洋服そのものをつくったことがないんです。なので〈POET MEETS DUBWISE〉は、ぼくが素材や形といったディテールを重視できないということで、既成のボディを使っています。自分に何ができるのかを考えたときに、気軽に袖を通せる普段着をつくりたかった。ブランドだからこうしなきゃいけないといったルールは一切関係ないと思っていて。

ディテールにこだわらない分、下田さんの真骨頂でもあるグラフィックデザインやタイポグラフィが際立っていると思うんです。シンプルなアイテムを土台としながら、デザインの余白を大切にしているというか。

下田そうですね。グラフィックデザイナーとしてのフォントの好みを、ストレートにアウトプットしているという感じです。ぼくがやっていることは非常にオーソドックスだし、ある意味誰でもできると思っていて。複雑なことは何もやっていないけど、逆にそれが難しいのかもしれない。ぼくとしては絶妙なところに着地させていても、ただ文字や写真を置いているだけだと思われるかもしれないけど(笑)。

自分の音楽やデザインをどうやって洋服に生かすのか。

〈POET MEETS DUBWISE〉はどのくらいのペースでプロダクトを発表したいと考えていますか?

下田ファッションブランドの春夏・秋冬という周期と、必ずしも同じでなくてもいいかなと。何かひとつのアイデアやコンセプトがあって、不定期にスモールコレクションを続けていけるというイメージです。バイヤーの方たちは困ってしまうかもしれないけど、唐突に発表していく形でもいいのかもしれない。ボディも古着を使ってもいいですし、そうやってリミックス、チューンナップという捉え方で発表するのも面白いですね。

音楽的・グラフィックデザイン的なアプローチが中心にある、と。

下田ぼくにはそこしかないから。本当に自由なスタンスでいいかなとも思っているので、それこそ何か違うことをやりたくなったらそれでもいい。違う流れになるのか、また戻るのか。それも含めていろいろとやってみたいですね。だからと言って、洋服のパターンを引き始めるということはない。そうではなくて、ぼくの音楽やデザインをどうやって洋服に生かすのか。昔やっていたデザインユニットのMINTOSではステンシルもやっていたので、そういったものも今後は出していきたいとは思っています。

SILENT POETSの映画『SAVE THE DAY』の上映イベントと連動したポップアップショップはとても効果的だと思いました。上映前にはDJイベントも開催して、そこで洋服が販売されているのは極めてカルチャー的だなと。

下田そうですね。これもありがたいことに、映画の上映とポップアップを全国で何箇所もやらせていただけて。

下田さん、映画をたくさん観ているんですよね。個人的にはInstagramで紹介している作品を追っています。

下田まだ観れていない作品もたくさんあるけど、年間100本は観ているんですよ。音楽よりも、むしろ映画から影響を受けていて。曲をつくるのも映画の影響が大きいんですよね。あの映画のあのシーンの音楽に影響を受けた、自分だったらあのシーンでこういう音楽をつくるのにな、とか。そう感じるほどに映画はなくてはならないものですね。

最近の印象深い作品を聞いてみたいです。

下田『タクシー・ドライバー』の脚本も手がけている巨匠、ポール・シュレイダー監督の『魂のゆくえ』かな。痛快なものや面白いものも好きだけど、重いけど少し希望がある作品が好きです。音楽家としても、人がそう感じるものをつくりたいと思っていて。

『SAVE THE DAY』は下田さんが普段観ている映画とは違いますが、希望を感じるドキュメンタリーだと思います。

下田トーンはどこかに感じてもらえるかもしれないです。フルバンド編成のライブも、映画の製作と上映も、ブランドの洋服づくりも、関わる人たち全員が一丸となってやっていることなんですよね。昔のぼくは自分が音楽をつくって、そのセンスが良ければあとは何も関係ないと思っていました。でもそうではなくて、最終的にはいろいろな人を介さなければ作品は届かない。今更ながら、すごく大事なことだと思っていて。

ぼくの音楽を信用してくれる人たちのためにも、自主制作でいいものをつくりたい。

下田さんもSILENT POETSも変わったからこそ、〈POET MEETS DUBWISE〉が始まったんだなと。下田さんが映画の舞台挨拶をするなんて想像できませんでした(笑)。

下田一番苦手なようなことですからね(苦笑)。ポップアップショップはぼくも参加できて、人に会えたりするのが今になってすごく大事だなと。昔は人と関わることをあまり好んでいなかったし、拒絶していたところがあったから。でも、歳をとって角が取れてきたのか、人と関わりを持ちたくなったというか。そういう自分が今までやってこなかったこと、苦手としていることをあえてやっているところはありますね。

キャップ ¥5,000+TAX、ニットキャップ ¥4,500+TAX、タンブラー ¥2,500+TAX、ポーチ ¥3,000+TAX

出会いの意味で「MEETS」がハマりますね。

下田そうなんですよね。やっぱり SILENT POETSの世界観が変わってきたんだと思います。昔は、自分がつくった音楽を勝手に聴け、という生意気なスタンスだったのに、やっとコミュニケーションが大事だということに気づけた。映画を観に来てくれたお客さんに会って話を聞いたりすると、その人たちの熱量がすごくて。

フィードバックという意味では、洋服の売上が音楽制作に還元されていくという循環もすごく大きいですよね。

下田シンプルに削ぎ落として、SILENT POETS関連のグラフィックを洋服に載せることは間違っていなかったんだなと。着てくれる人に自分がやっていることがダイレクトに伝われば、自分自身には感想や利益として返ってくる。こうやって露出が増えると音楽に到達する接点が増えますし、そこもすごく大きいです。

やっぱり下田さんの核は音楽なんですね。

下田それは間違いなく。ぼくの音楽を信用してくれる人たちが、この〈POET MEETS DUBWISE〉の着火点になってくれているので、その人たちを絶対に裏切りたくない。だからこそ、すべてを自主制作でやりきりたいという思いがあります。いい音楽をつくっている人がやっているブランド、という具合に、両方がいい関係になってくれたらと。

ちなみに、SILENT POETSの次の作品はいつリリースしたいと考えていますか?

下田来年の前半にはアルバムを出したいなと考えていて。曲はつくり始めているので、年内につくり終えたいですね。アルバムのタイトルや曲名を洋服にも落とし込めるという意味でも、面白いアプローチができると思うので。

楽しみにしています。今回のインタビューはSILENT POETSのリスナーを中心に、きっといい意味でギャップのあるものになるでしょうね。

下田自分を表に出すことをしたくなかったのに、50代にもなって寂しくなったんですかね(苦笑)。それでもSILENT POETSを前進させるために、長く継続できるプロジェクトにしていきたいです。

POET MEETS DUBWISE

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