やっぱり、どこかスリルを求めているというのは否定できない。
キャンプサイトの設営が終わると、早速コースへと行く準備を整えます。今回はキャンプ場の近くにある「フォレストバイク」という人口のトレイルコースで走ります。
「普段は自然のトレイルや、こういうコースへ訪れることもあります。オフロードを自転車で走るのってすごく楽しいんですよ。舗装路もスムーズで気持ちいんですけど、土や木や石によってできた地面の凹凸を走っていると、地球の鼓動みたいなものを感じることができるんです」
山の森林の中を蛇行して下るようにつくられたコースは、北澤さんが言っていたように木の根や石の凹凸、急カーブなどがあって、そこを自転車で疾走するイメージが全然湧きません。そんなコースであってもフル回転でペダルを漕ぎ、力強くハンドルを握りながらマウンテンバイクを操る北澤さん。ダイナミックという言葉がピタリとはまる走行は、間近で見ると迫力満点であることは言うまでもありません。
「やっぱり、どこかスリルを求めているというのは否定できないですね(笑)。とはいえ、これまでの経験やスキルの範囲内で自分をきちんとコントロールして無理しないようには意識しています。それでも怪我はつきものではありますが、やっぱり乗っていると楽しいんです」
こうしたコースは全国に点在するようですが、まだまだ多くないのが実情。“マウンテンバイク”という言葉は聞き慣れたものですが、シーンとして考えると、まだ発展の途中にあると北澤さんは話します。
「こうしたコースはマウンテンバイクで走るためにつくられているので問題ないのですが、山の中にある自然のトレイルを走る際はもっとセンシティブです。というのも、その道は登山客やハイカーたちも通ります。そうしたアクティビティはポピュラーですし文化として成熟しているのに対して、マウンテンバイクはまだまだマイナー。だから、彼らや山の所有者からすると危険に思えてしまったり、まだ受け入れられていない側面もあります」
そうした問題を北澤さんは真摯に受け止め、今後マウンテンバイクも自然のトレイルを走りやすくなるように自身の足を動かしながら、問題解決に向けて活動をおこなっているそうです。
「山で登山者やハイカーたちに会ったら自転車を降りて好意的に挨拶したり、そういうのは徹底していますね。仲間たちもそれをしているので、いまのバイカーは礼儀正しいですよ。あとはいま、埼玉県の飯能で里山保全の活動をしていて、ハイキング道の清掃や、道が雨で削れないように水切りを作ったり、子どもたちを対象にマウンテンバイク教室を開催したりなど、大人も子供も一緒になってもっとマウンテンバイクが身近になるように活動しています。すこしでもマウンテンバイクが社会に受け入れられるように活動を続けています」