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KREVAのファッションと音楽の現在地。
Pump Day feat. KREVA.

KREVAのファッションと音楽の現在地。

来たる5月15日(土)、〈リーボック(Reebok)〉が「インスタポンプフューリー(以下、ポンプフューリー)」の1stカラー・通称“シトロン”を日本限定で復刻します。これは2020年に制定した「ポンプデー」の試みによるもの。それに際して、〈リーボック〉は「ポンプフューリー」の愛用者として知られるKREVAさんをゲストに招いたムービーを公開。今回はそれに便乗して、「ポンプフューリー」はもちろん、ファッションから音楽まで、KREVAさんのいまを伺ってきました。

  • Photo_Yuki Aizawa
  • Styling_Daisuke Fujimoto(tas)
  • Hair & Make-up_Ai Yuki
  • Text_Ryo Tajima(DMRT)
  • Edit_Shuhei Wakiyama

自分のことを好きでいてくれるひとに届くものを。

ー 同様に、コロナ禍を受けてアーティストもこれまで通りの活動ができなくなっている現状があると思います。いまはどのような活動をされている状況ですか?

自分のライブという意味では、もう1年半くらいやれていないので、必然的に制作に注力している状態ですね。そこに関してはネガティブに考えていないです。というのも、これまでの音楽シーンを振り返ると、ライブを中心に考えて、そこに焦点を当てて、モノをつくっていく。そんなサイクルになっていたんだけど、いまはじっくり制作に向き合えているんです。そういう意味でいい時間になっていると自分的には捉えています。

ー コロナ禍以前の音楽シーンはフェス文化を中心に回っている側面もありましたね。

ですね。リリースだけじゃなくて曲調も何万人もの相手をワッと沸かせるようなものを出したいだとか。ここ最近はその傾向が強すぎたのか、EDMがいきすぎて、そこからのより戻しなのかわからないけど、全体的にローファイな音楽になっているように感じます。

ヒップホップのビートもそうで、汚す感じというんですかね。カセットテープの音をエミュレーションしたり、サチュレーションしたりとか。全体的にそんな風潮があるので、気がつくと自分がつくっている音楽も勢いを重視するよりも、内省的な方向に向かっている気がします。

ー 時代背景も踏まえて、自分自身と向き合うという意味ですか?

自分に向き合うと同時に、周囲の状況を見極めるというか。例えば、何か災害に際して曲をつくるときは、オレたちがみんなを元気づけようって気持ちで制作できたけど、これだけ世の中の全員が困っているなんてことは経験したことがないですからね。誰にどの「頑張れ」を届ければいいのかっていうのは、すごく考えるところです。

だったら、自分が苦しいってことを歌えばいいのかなって気もするけど、この状況でそんな音楽が聴きたいかな? とも思うし。そこのバランスは難しいですね。先々、似たような事態が起きるのかはわからないですし、起こらないでほしいですけど、自分としてはいまを記録として残しておきたい気持ちはあるので。何とか頑張ってつくっています。

ー 確かに、こういう時代だと明確なメッセージを決めづらいというか。

なにか言っても、1週間後には変わることもあるし。そんな中で普遍的なメッセージはなかなか出せないです。そうなると自分と向き合うんですけど、それだけだとただつらい。「早く外に行きてぇ」だとか、そんな風になってしまうので。

ー そんな状況下が続いて、制作自体が辛いということはないですか?

それはないですね。音をつくることに関しては、あらゆることの中で1番くらいに好きだから、一生やってられると思うんです。普通にしてても。

ー では、いまのKREVAさんが、制作に対するインプットをどのようなところで得ているんですか?

こういう状況だからか、ネット上でビートをつくっているところを見せているひとがすごく多いんですよね。プロアマ問わず、国籍も関係なく。それを見ているのが本当に面白いです。オレが空間を広く表現するために使っていたエフェクトを、ただの色付けにぽーんと使っていたりとか。

そんな風に自分が思ってもみなかったような使い方をしているひとがいっぱいいて、つくり方も本当にひとそれぞれ。YouTubeやTwitchでチェックできるんですけど、いままで見られなかった部分がいくらでも見られるから本当に刺激になりますね。

ー KREVAさんが無名のビートメイカーの動画を見てインスピレーションを得ているというのが意外です。

ファッションもそうだと思うんですけど、街で見かけたひとがインスピレーションになることって多いと思うんですよね。歩いている姿を見て、「あの丈感、いいな」って思ったりするし。それと同じことなんですが、ビートメイクに関してはいままで現場でしか知れなかった部分なんですよ。それができるのが嬉しいんです。自分もYouTubeでビートメイクしたのを見せたりしましたが、もっと見せてもいいなって思っています。

ー いまはネットが街中になっているのかもしれないですね。歌詞に関してはどうでしょう? 何を着想源にされていますか?

これまではあんまり本を読まない生活をしてきたんですけど、最近は読むようにしています。ライフハックもの、もちろん小説やエッセイも。面白いと思ったものは全部ですね。韻が踏みたくなるワードを探している感覚もあるので、気になる文字とかがあれば雑誌でも何でもジャンル関係なく読んでいます。もちろん内容が面白いから読み進めた本もあるんですけどね。

ー その中で印象に残っている本といえば?

インスタにもあげたんですけど、夏目漱石の『こころ』ですね。聞いたことはあるけど、読んだことないなって、たまたま読んで。こう言うのもなんですけど、マジで文章うまいなってクラっちゃって(笑)。これまで夏目漱石のことをそういう捉え方で見ていなかったんですけど、「ああ、だからお札になったのか、このひと。文章がうまくてお札になるってすげぇな」って(笑)。いま読んでもすごいと思ったし、1番面白かった本です。

ー では、最後に。この時代にあってKREVAさんはどんなメッセージを発信していきたいと思いますか?

例えば、フェスに出て、何万人かの目に触れることで新しいファンを増やすってことをずっと続けてきた気がするんです。けど、いまは本当に自分のことを好きでいてくれるひとに対して、力になる音楽やメッセージを届けることができたらいいなって気持ちがあります。そこからまた、少しずつ世の中に向けて発信していければいいと思います。まずはオレのことを求めてくれるひとに、それ以上のものを返したいですね。

ー 実際にライブでファンと会えないからこそですね。

でも、いまは遠くにいても、手を伸ばしてくれれば届く時代なので。オレの音楽を聴きたいと思ってくれるひと、わざわざウェブの検索窓に「K・R・E・V・A」って打ってくれるような、そんなひと達にしっかり届くものをまずはつくりたいですね。

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