STORY

”ナニ”から 12 年―― この街には、”ナニ”で被災した人々が身を寄せる仮設住宅があった。今もまだ、18 世帯ものワケあり住人が暮らしていたが、月収 12 万超えると「即立退き」とあって、皆ギリギリの生活を送っていた。主人公の田中新助こと半助は、街で見たもの、聞いた話を報告するだけで「最大一万円!」もらえると軽い気持ちで、この街に潜入する。だが、半助こそ ”ナニ”によって何もかも失い、ただ生きているだけの男だった。しかし、ギリギリの生活の中で、逞しく生きるワケあり住人らを観察するうち半助は次第に、この街の住人たちを好きになっていく。そんな中、仮設住宅が取り壊されるという噂が街に流れはじめるのだが……。
PROFILE
1990年7月9日生まれ、福岡県出身。2003年「ラストサムライ」で映画デビュー。以降、映画を中心に活躍。2019年に主演を務めた「宮本から君へ」では第93回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞などを受賞した。近年の主な映画出演作は「アジアの天使」(21)、「ちょっと思い出しただけ」(22)、「シン・仮面ライダー」(23)など。待機作として、映画「白鍵と黒鍵の間に」(10月6日)、映画「愛にイナズマ」(10月27日)が公開を控えている。
PROFILE
1993年、東京都出身。2006年に俳優としてデビュー。2021年に映画『すばらしき世界』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞などを受賞。2022年はドラマ『捨われた男』、『初恋の悪魔』、『ジャパニーズスタイル』で主演を務め、エランドール賞、橋田賞などを受賞するなどし、映画、テレビドラマ、舞合などで活躍中。待機作に映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」(10月13日)、「愛にイナズマ」(10月27日)、「笑いのカイブツ」(24年1月5日)、「熱のあとに」(24年2月)の公開が控えている。
PROFILE
1990年8月8日、兵庫県出身。バンド「黒猫チェルシー」(現在は活動休止中)のボーカルとして 2010年にデビュー。2009年にみうらじゅん原作小説を映画化した「色即ぜねれいしょん」で主演デビュー、第33回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、「勝手にふるえてろ」(17)やドラマ「べしゃり暮らし」(19)、主演を務めた「イタイケに恋して」(21)などに出演。近年の主な出演作は「泳げ!ニシキゴイ」(22)、映画「ノイズ」(22)、「それってパクリじゃないですか?」(23)など。2024年度NHK大河ドラマ「光る君へ」に藤原行成役で出演。映画「正欲」(11月10日)、「市子」(12月8日)の公開が控えている。
3人から見た、宮藤官九郎のすごさ。

ー今作は、宮藤さんが企画・脚本・監督を務めています。太賀さんは、宮藤さん脚本の作品にも最近出演されていましたね。宮藤さんの演出はいかがでしたか?
仲野:宮藤さんが書かれたものに携わらせてもらったことはこれまでに何度かあるんですけど、今回初めて宮藤さんが監督として演出をする宮藤組に参加できたのはすごくうれしかったです。実際、演出力も凄まじく的確で、なおかつ、速くて機転が利いていて、とにかくびっくりしました。
ー的確というのは、具体的にはどんな具合なんでしょうか?
仲野:例えば、自分がこういうことをやってみたいとアイデアを持っていく場合、それがありか・なしかをすごくはっきり言ってくれるし、ここまではいいけど、ここから先はなくそうとか、細かな調整もしてくれる。あとは役の心情について相談しても、すごく明確に答えてくださいます。
キャラクターや物語を進めていくようなシーンの演出はもちろんですが、それ以外の画面の端っこに写っているような役にも、この人がこういう動きをしたら面白いよねとか、端々への細かな演出もユーモアがあって実際にひとつひとつが面白い。しかも宮藤さん自ら演じて見せてくれるんですが、それがいちばん面白くて、これはかなわないなと。

ーなるほど。池松さんは宮藤監督の現場は…
池松:初です。これまで脚本作品の出演も共演作もなく、本当に初めまして、でした。今回の現場は本当に面白かったです。これまで宮藤さんの脚本や監督作品、俳優として出演されている作品をいくつも観てきましたけど、どれをとっても超一流ですし、現場をとても楽しみにしていましたが、さっき太賀が言っていたように、あまりにも速い。しかも、そのひとつひとつの選択がとても的確で、全くブレずに最後まで真っ直ぐ真ん中に立っていてくれました。もの凄くタフでスマートで、親切な人でした。
キャラクターそれぞれの心情の寄り添い方や、物語の転がし方、情緒の捉え方、どれをとっても素晴らしいものでした。無数に出てくるアイデアと経験値からくるのかその選択の素早さとユニークさスペシャルなものでした。まるで魔法のようにシーンやその場の人物、カメラ後ろのスタッフ、物語が笑い、乗っていきました。演じ手としてはどこにでも飛べる感じがしました。今回は宮藤さんのそういうエネルギーに乗せてもらったなと思います。

ー渡辺さんはどうでしたか?
渡辺:ミュージシャンとして、これまでに宮藤さんとは一緒にライブなどをしてきました。これまでは爆発している演者としての宮藤さんを見ることが多かったんですが、今回はスマートかつ思索的に物事を進められる宮藤さんにお会いしました。遠目で見ていても、頭の中がモーターみたいにずっと回転していてその音が聞こえてきそうなくらい、色々なことに考えを巡らせていらっしゃるなと。
演出力はもちろん素晴らしいんですけど、バランサーとしても絶妙だなと感じました。例えば、キツいシーンを撮る時に、観ていてただ辛いだけだと観客も苦しいだけになってしまうようなところを、絶妙なユーモアでくるんだり。
登場する人が増えれば、その分バランスを取るのが難しくなるはずですが…、なんて言うのか、たくさんのシーソーが交差しているようなところで、絶妙にバランスを取って釣り合わせてるような。だから見ていて話しかけづらいくらい、集中力がえぐいなと思いました。
ー個人的に監督の演出か役者のアドリブなのか、気になっているところがありまして……、第7話で太賀さん演じるタツヤがとても悲しい目にあったときに、自分の部屋の中で座らずに立って飲むシーンがありますよね。これはなかなか思いつかないな、すごいなって。あれはアドリブですか?
仲野:アドリブですね…ってことにしてもらっていいですか(笑)。ちょっと定かではないんですが、確か横浜監督(編集部註:1、2、4、5、10話を宮藤が担当、3、7、8話を横浜聡子が、6、9話を渡辺直樹がそれぞれ担当した)のアイデアだったような気がします。