HOUYHNHNM

FEATURE|The Man Who is Working At The Place.

あの街のこのひと。

- JOURNAL STANDARD SAPPORO -

Photo_Kazuhiko Tawara
Edit_Yuichiro Tsuji

02接客に情熱を燃やす
札幌店のスニーカーマニア。

全国津々浦々、各地に名産、名所、名物があるように、
〈ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)〉のお店にも
“名物スタッフ”と呼ばれるひとがいる。
ファッションに対して熱い情熱を燃やし、誰にも負けない趣味を持っていて、
自身が働く街に対して深い愛情を抱いている。
そんな彼らに、ファッションのこと、自分自身のこと、
そして街のことを語ってもらおう。きっと、おもしろい話が聞けるにちがいない。

あたり前のことだけをやっていたらダメ。
大事なのはプラスアルファの価値。

ルックスはちょっとコワモテだけど、性格は優しくて面白い。「JOURNAL STANDARD 札幌店」に所属する福嶋兼太さんのことを簡単に表現すると、そんな感じになる。一見すると近よりがたいんだけど、見た目と中身のギャップがあるから、こちらもスッと心を開いてしまう。ショップのなかでも頼れるアニキ的なキャラクターで他スタッフからの信頼を集める彼。ショップがオープンしたときから働いているから、勤続年数はお店のなかでもダントツでトップ。だからジャーナルスタンダードの歴史も知っているし、業務に関することも分からないことがない。

「ジャーナルスタンダードに勤めてもう13年くらいになりますね。数年前に姉妹店である『JOURNAL STANDARD relume 札幌店』ができて一度そちらへ異動したんですけど、またこっちのお店に戻ってきました。ここ数年、札幌にも続々とセレクトショップがオープンしていて、競合店が増えてきたんです。だからその分お客さまのファッション感度もあがっていますし、自分たちも気合いを入れないと認めてもらえない。毎日気を抜けないですね」

たくさんのショップがひしめく群雄割拠の札幌。そんななか、他ショップとの差別化を図るため、「JOURNAL STANDARD 札幌店」が力を入れているのが接客なんだとか。

「いまはオンラインで買い物をすることが当たり前の時代。だからこそ、わざわざショップまで足を運んでくれたお客さまを大切にしたいんですよ。他のショップと比べてもうちのお店は顧客さまが多いですし、接客力ならどこにも負けない自信がある。販売スタッフとしてお客さまに買い物を楽しんでもらうのは当たり前で、プラスアルファの価値をどれだけ高められるかが大事だと思うんです」

自信に満ちた表情でそう語る福嶋さん。商品の魅力を高めることも大事だけど、それ以外の部分でもお客さまに感動を与えることが大切だと説く。そんな彼に接客の心得を聞いてみた。

「『サイズをおだしします』とか、『試着してみてください』とか、そういったお声がけをお客さまは求めてないんですよ。お客さまが求めていらっしゃるのは、もっと身近な会話だと思うんです。例えば、わざわざお店に来店される理由から尋ねてみると、目的のあるお客さまは『こういうアイテムを探している』って答えてくれますから。そこからお客さまに買い物を楽しんでもらうのが、ぼくたちの役割。いまはブランドやアイテムの詳細だってネットで調べればすぐに出てきますから。ファッションのプロとして、調べても簡単にでてこない情報を会話のなかでお伝えする。これも大事なことなんです」

販売員の仕事は売ることではなく、
買い物を楽しんでもらうこと。

もちろん、お客さまに感動を与えるには洋服の話だけをしていればいいわけじゃない。接客中の一つひとつの所作や、あるときは自分の趣味やパーソナルな部分を見せることもお客さまからの信頼を得るための大切な要素となるのである。

「妻とよくこのお店に来ていて、そのときに福嶋さんに接客してもらったんですけど、『なんか声がいいよね』って妻と話していて(笑)。お客と店員という距離を保ちながら、そのなかでフレンドリーに接客をしてくれたのが印象的でしたね。あと全然がっついてこないんですよ、福嶋さんって。洋服の魅力についてたくさん語ってくれるんですけど、『サイズ出します』とかそういうアプローチがなくて、気持ちよく買い物ができましたね」

そんな福嶋さんの接客エピソードを語ってくれたのは、彼の顧客さまである多田雄実さんだ。身長が高くおっとりとした性格の多田さんとは、知り合ってから5年近く経過しているんだとか。多田さんも、2週間に一回は来店されるほど福嶋さんを慕っている。「買い物をしなくても、近くまで来たから、ただ会話をしに行くときもあるんです(笑)」とは多田さんの言葉。

「ぼくも福嶋さんもキャンプが好きなんですよ。だから共通の趣味のことで会話に花が咲くこともあって。お店で取り扱っていないのに、おすすめのキャンプギアとかを紹介してくれるのがぼくは嬉しいんです」

その言葉を受けて、福嶋さんも口を開く。

「売るんじゃなくて、楽しんでもらう。この意識が大事かなと。その延長線上で洋服を購入していただくことがリピートにも繋がるし、結果的にみんなが幸せになるのかなってぼくは思うんです」

自分たちの利益に繋がらないことも、情報としてお客さまに提供する。もしかしたらそれは、ひとつのお店に所属する販売員としてあるまじき行為なのかもしれない。でも、その姿勢がお客さまの心を掴んでいるのも確かな事実。長年販売員としてのキャリアを積んできた福嶋さんが導きだしたひとつのスタイルでもある。

「あと、福嶋さんってファッションのプロとして、しっかりとしたアドバイスをしてくれるんです。例えば、ぼくが『この服いいなぁ』と思って試着するじゃないですか、でもそれが似合ってない場合はハッキリと『ノー』って言ってくれる。あと、ぼくのワードローブに合わせた洋服の提案をしてくれるので、買って失敗したということがないんですよね。ちゃんと自分のことを見てくれている感じがして、信頼できるし居心地がいい。他のお店にはこういうスタッフさんがいないから、どうしても『JOURNAL STANDARD 札幌店』へ来てしまうんです」

お互い知り合って長いから、福嶋さんの頭のなかには多田さんの購入履歴がバッチリ入っているそうだ。

「目先の利益ばかりを考えてもしょうがないですから。お客さまの満足を得るためには、こちらもしっかりと本音で話さないと。多田さまは30代半ばでぼくと年齢が近いんです。時計もいいもの持っていらっしゃるし、デザイン性が高い服をおすすめするよりも、シンプルだけど上質なものを着たほうが似合う。そうしてお客さまの細かな背景もしっかり読み取りながら接客することを常に心掛けてますね」

お客さまと真摯に向き合い、商品の価値以上のなにかを提供する。言葉で説明すると簡単だけど、そこにはたくさんの努力や情熱が隠されているのだ。福嶋さんの接客の哲学について、もっと語りたいことがたくさんあるけど、今回はここまでにしておこう。その先の真髄を知りたければ是非札幌店へ足を運んでみて欲しい。そこに行けば“真のサービス”を受けることができるから。

JOURNAL STANDARD 札幌店
北海道札幌市中央区一条西3丁目 札幌 パルコ B1・1F
電話:011-214-2048(メンズ)
10:00〜20:00(土曜日のみ 〜20:30)不定休
※営業時間はシーズンにより異なります。詳しくは札幌パルコのHPをご覧ください。