HOUYHNHNM

FEATURE|The Man Who is Working At The Place.

あの街のこのひと。

- JOURNAL STANDARD IKEBUKURO -

Photo_Yousuke Morimoto
Edit_Yuichiro Tsuji

03池袋から全国スタッフを見守る
洋服のセラピスト。

全国津々浦々、各地に名産、名所、名物があるように、
〈ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)〉のお店にも
“名物スタッフ”と呼ばれるひとがいる。
ファッションに対して熱い情熱を燃やし、誰にも負けない趣味を持っていて、
自身が働く街に対して深い愛情を抱いている。
そんな彼らに、ファッションのこと、自分自身のこと、
そして街のことを語ってもらおう。きっと、おもしろい話が聞けるにちがいない。

販売員ではなく、セラピストという意識で店頭に立つ。

関東にあるジャーナルスタンダードのお店のあいだで“ヴァーグさん”という相性で親しまれるスタッフが「JOURNAL STANDARD 池袋店」にいる。その“ヴァーグさん”こと荒金洋平さんは、関東の店舗に在籍しているスタッフから支持を得る人物なのだ。

「むかし先輩につけられたんですよ、“ヴァーグさん”って。ハンバーグっぽいとか、ぼくがブーツブランドの〈ヴィヴァーグ〉が好きだからとか、由来には諸説があるんですけど、その先輩はもう退職してしまって真実は謎に包まれたままで…(笑)。でも感謝してますね、その先輩には。こうしてみんなに親しまれる愛称をつくってくれたので」

先輩も後輩もみんなこぞって彼のことを“ヴァーグさん”と呼ぶという。縦の繋がりはもちろんあるけれど、荒金さんはそれを感じさせないほど親しみやすいキャラクターなのだ。それはなぜか? 彼のキャラクターがそうさせているのはもちろんだけど、理由はそれだけじゃない。「JOURNAL STANDARD」を運営するベイクルーズ グループには業界ナンバーワンのおもてなしを目指す「BAY☆FA(ベイスターエフエー)」という名の人事制度があり、荒金さんはその取り組みによっておもてなしのプロの称号を得た数少ないスタッフなのだ。彼の接客に向き合う姿が、他スタッフはもちろん、お客さまの信頼をも引き寄せているのである。

「ある一定の基準を満たしたファッションアドバイザー(スタッフ)のみが受けられるテストがあるんです。筆記試験、実技試験、役員面談という3つのテストを受けて、そのすべてに合格した人のみに『BAY☆FA』という称号が与えられるんです。会社全体で接客サービスの質の向上を目指して、新人研修を執り行ったり、入社歴が長いスタッフに向けても接客スキルアップ講座などを『BAY☆FA』のメンバーが中心になって開催しています」

ベイクルーズ・グループが運営するショップに所属する全国のスタッフのなかでも、わずか17人しかその称号を得ている人物はいないという。

「販売だけではなく、接客を通してどれだけお客さまに喜んでいただくかが大事なことなんです。販売スタッフというよりも、ぼくはセラピストという意識を持って店頭に立っています。洋服を通してお客さまの欲求を満たしたり、抱えている不満を解消したいんです」

海外のお客さまに言われた
「日本のことがますます好きになった」という言葉。

温厚で柔和、そして何事でも受け入れるかのように寛大な心をもつ荒金さんは、いかなるときでも落ち着いていて、頼りがいのある存在だ。

「ぼくは九州出身で自然に囲まれた環境で育ったんです。遊びと言えば山へ行って友達と野生の動物を追いかけたりとか、そういうことばっかりをしてきて(笑)。だから、決して頭のいい人間ではないし、自分より優れている人はたくさんいると思うんです。じゃあなにが自分にできるのかといえば、困った人を助けるとか人のことを笑顔にすることくらいしかないんですよ(笑)。単純に人の役に立つのがうれしいんです」

そんな謙虚な姿勢で店頭に立つ荒金さん。「だから、接客が楽しくてしょうがないですね」と満面の笑みで話す。「つい先日、海外からこられたお客さまのご案内をさせていただいたときのことです」という前置きを添えて、とある接客エピソードを話してくれた。

「2人組のお客さまで、おひとりが日本語を話せて、もうひとりのお客さまがお買い物をされたい様子でした。どうやら靴を探されていたようだったんですが、残念ながら自店にはご希望のサイズがなかったんです。なので、お取り寄せであったり他のアイテムのご提案を行なったところ、どうやらぼくのことを気に入ってくれたようで。はじめお声がけしたときは異国の店ということもあって緊張されていたんですが、その糸がほぐれたようなんです。結局そのアイテムはお取り寄せでご案内させていただくことになって、お客さまが退店される際に『あなたに接客されて、日本のことがますます好きになりました』と仰ってくれて。そのときは本当に心の底からうれしかったですね」

“おもてなしの心”にプラスして販売員に必要な要素。

どんなお客さまでも、来店されたら洋服以外の何かを持ち帰ってもらう。それが荒金さんが大切にしている接客のモットーだ。

「せっかくお店にご来店いただいているので、その時間をより豊かで楽しいものにしたいんです。たとえお客さまにお買い物する気持ちがなかったとしても、なにかしらプラスのエネルギーを持って帰って欲しい。例えばご覧になっていた洋服の情報であったりとか、洋服のことじゃなくてもスタッフと話したことで気分が上がったとか。ぼくらの職業は夢を与えるのが仕事ですから、ただ案内する、ただ売る、というだけではダメなんです」

荒金さん曰く接客の根底にはマインドが必要だと説く。それがすなわち、“おもてなしの心”なのだ。

「接客中のひとつひとつの所作や、お客さまに伝える言葉のなかにハートがあるかどうかが大事なんです。笑顔も声のトーンも、気持ちがこもっていないとお客さまの心に響きませんから。動作からにじみ出る『お客さまを喜ばせたい』という気持ち。ショップスタッフとして、最低限持ち合わせていなければならないマインドですね」

このマインドに加えて、もうひとつ大切なことがあるという。

「いくらマインドが育ったとしても、それをお客さまに伝える術がないといけない。そのためには接客の技術を向上させる必要があると思うんです。接客スキルというのはつまり“表現力”のこと。言葉遣いはもちろん、所作や観察力などを磨いて、居心地のいい空間をつくることも大切ですよね。マインドと表現力。この2つを兼ね備えることが、一流スタッフの条件だとぼくは思います」

「BAY☆FA」として、他スタッフの内側にあるマインドをゆっくりと温めながら育てて、なおかつ接客技術の向上を目指す。そして、お客さまにいままで以上の喜びを与える。これが荒金さんの目標だ。

「いまは池袋店のスタッフと一緒に接客のことを考えながら日々店頭に立っています。みんなでお客さまを喜ばせようと必至になってるんですよ。ここに来るとなんだか楽しい、ここに来れば安心して買い物ができる、お客さまにそう思ってもらえるお店に成長させたいですね。そして「BAY☆FA」として、他のメンバーと一丸となってもっともっと全国のスタッフの魅力を深めていきたいと思っています」

JOURNAL STANDARD 池袋店
東京都豊島区南池袋1-28-2 池袋パルコ本館 3F
電話:03-5391-8635
10:00~21:00 / 不定休
※営業時間はシーズンにより異なります。詳しくは池袋パルコのHPをご覧ください。