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『JAPANESE MAKERS 日本の「新」ものづくり列伝』 発刊記念インタビュー! 草彅洋平が見る、ものづくりの未来とは?
2013.03.26
-それにしても、今すでに30人弱を取材しているわけで、まだまだ面白い人はいそうですか?
草彅: いや、まだ全然いますよ。もう4年くらいやってますけど、1年にだいたい8~10人くらいのペースで取材してますしね。
-高校生からご年配の方まで、本当に色々な方を取材してますよね。
草彅: そうですね。これは中にも書いたんですけど、今の高校生ってすごく面白いですよ。
-というと?
草彅: 例えば昔だったら、クラスの中で目立つためにバンドやったり色々がんばったりしてたと思うんですが、今の子たちは、ネットで目立ちたいっていうのがまずあるんですよね。ネットにアップすれば、世界が見てくれるっていう考え方。だから、彼らはクラスとかどうでもいいんですよね。
-確かにそうなるのも自然な気がしますね。
草彅: 今回取材した、消しゴムでフィギュアを作ってるツリロン君とかは、2chで実況しながら作ってたりするんですよ。制作自体は中学生の頃からやってたらしいですしね。で、実況しながら自分で煽るんですよ。「ここまでできたぜー」みたいな。そのリアクションを見て、自分のテンションとかモチベーションをコントロールして。だから、見られるっていうことにすごく自覚的なんですよね。
-なるほど。では、高校生以外の人たちはどうでしたか?
草彅: まずご年配の方はやっぱり子供のときから、おもちゃとか何もなかったっていう世代なんですよね。だから、全部自分で作るんです。ティッシュで昆虫作ってる人(駒宮洋氏)もそうですけど、子供心に戻るっていうか、童心に返る的なものづくりをしているような気がするんですよね。
-確かに、ミニチュアの姫路城を作ったりする(井村裕保氏)のもまさにそんな感じですね。
草彅: そう。だから、ものづくりの理由もみんなそれぞれ違うんですよね。若い子はビジネス的な部分を求めないし、プロダクトを保存しておくっていう概念もない。ツリロン君とかはまさにそうですよね。
-消しゴムは長持ちしないですもんね。冷蔵庫でも最大4ヶ月、紫外線に当たったら1週間しか持たないって、かなり刹那的です。
草彅: でも、さすがに大人になると、ものづくりに少しはビジネス的なことを考え始めると思うんですよね。そうなると、壊れにくいものとか、ネットで展開しやすいものっていう考えになっていきますよね。より高度になっていくというか。それはそれで面白いですよ。
-どちらかというと文系寄りである草彅さんが、主に理系のひとたちに興味を持つっていうのは、まず憧れみたいなものがあるんでしょうか?
草彅: やっぱり自分じゃ作れないですから、そういうところはあるかもしれないです。でも、文系からしたら、理系は理系でちょっともったいなっていう部分もあるんですよ。例えば、もっとデザイン的な考え方でアウトプットしたらいいのになとか、うまくビジネス的に展開できるのになとか。偏ってるんですよね、ある種。
-確かにそうですね。
草彅: そういう意味でゴミ箱ロボットを作った、倉田(稔)君なんかはすごくバランスがいいですよね。
-彼の動画は見ていてすごく面白かったです。
草彅: ですよね。こういう動画を集めたサイトを作ろうかなーって思ってます。
-昔の「ハンズ大賞」の受賞作品の動画が残ってないって、本書に書いてましたね。
草彅: そうなんですよ。「ハンズ大賞」はすごく面白いですよ。みんな絶対好きだし。ていうか、嫌いな人があんまりいないジャンルなんじゃないかと思うんですよ。
-特に子供のころは、みんな好きですよね。
草彅: そう。ニコニコ動画で、掲載点数は少ないのに再生回数が多い「少数精鋭」って呼ばれてるカテゴリーは「ニコニコ技術部」なんです。倉田くんのゴミ箱動画なんて、再生回数300万回以上ですよ! 世界中の人みんなが、新しく生まれるプロダクトに対して興味がある。だから今、メイカーブームってすごく盛り上がってるんだと思うんですよね。
-なるほど。
草彅: 僕みたいに、作れないからこそ面白いなと思う文系側の人間もいるし、理系の人からしたら、デザイン的に落とし込めない部分があるから、面白がれるっていう。だから、こういった動画を見てる人って、意外とそんなに偏ってないと思うんですよね。でも、ものづくりをするたちがすごいのは、色んな動画とかを見て「すごいなー」で終わらずに、自分でも作れる技術があるっていう。Dr.Guero(山口雅彦氏)さんとかはまさにそうですよね。
-自転車の?
草彅: そう。「村田製作所」の作ったものを見て、自分で作るっていう。僕は「村田製作所」よりも全然レベル高いと思うんですよね。ちゃんと自転車こぐし。かたや、巨大な資本のもとにCMを流して必死にPRしてものづくりしてるのに、それを個人で超えてしまうのって何なんだろうって。そこが今面白いところだと思うんですよね。時代が変わりつつあるというか。
-ドラマ性がありますね。
草彅: そうなんですよ。