先日開催された〈ダイワ ピア39(DAIWA PIER39)〉の2025 FWのプレスプレビュー。この秋冬は、どんなアイテムが登場するのか、ひと足先にチェックしてきました。ともに訪れたのは、釣りをはじめアウトドアを趣味に持つ、モデルのShogoさん。個性的なケータリングも用意されていて来場者を楽しませてくれましたが、そこには〈ダイワ ピア39〉を展開する〈ダイワ(DAIWA)〉らしいメッセージが。本当にかっこいいブランドって、こういうことなんだなとしみじみ思った次第です。
Photo_Shoya Kitano
Text_Shogo Komatsu
Edit_Seiya Kato
PROFILE
モデルエージェンシー「VELBED.」の代表を務める。山梨県・道志村に構えた畑で有機農業に勤しみ、その体験を反映させたアパレルブランド〈カイメン(KEIMEN)〉を2021年に立ち上げる。釣りなどのアウトドアを好み、今夏は息子と2人で九州へ釣り旅に行く予定。
Instagram:@shogo_velbed
VELBED. オフィシャルサイト
ブランドの背景を大切にするモノづくり。
まだ6月なのに、まるで真夏のような猛暑日が続いていますが、ファッションシーンでは秋冬の準備が整ったようです。Shogoさんは釣りをするし、ファッションも大好きだから、この〈ダイワ ピア39〉(以下、〈ピア〉)のプレスプレビューを楽しみにしていたみたい。
Shogo:〈ピア〉のアイテムって、デザインが都会的で機能性も高くて、とにかく着やすいですよね。フィッシングブランドである〈ダイワ〉が蓄積してきたノウハウも落とし込まれているのがよく分かる。アメカジとかの要素もデザインに取り入れているから、新作のラインナップを見るのが楽しみです。
会場をぐるりと周りながら、フリースだったりシャツだったり、気になるアイテムを手に取り試着してみるShogoさん。そのなかでも特に目を惹いたのは、GORE-TEX®️を採用したアウターです。それは、すべてホワイトで統一した、25 FWのニューカラーなんだとか。
Shogo:陶器みたいな、優しいトーンのホワイトですね。ホワイトのダウンってコーディネートしにくいイメージがあったけど、この色合いなら着こなせると思います。
このホワイトは、“Undyed”という素材によるカラーリング。生地そのものに染料を使用しないことで、環境負荷を低減させているんです。しかも、PFAS(有機フッ素化合物)フリーのGORE-TEX ePEメンブレンを採用。PFASは人体や環境への悪影響が懸念されているため、PFASフリーはひとにも自然にも優しいってこと。
ご存じのとおり、〈ピア〉は〈ダイワ〉が手がけるアパレルコレクション。母体である企業「グローブライド(GLOBERIDE)」は、海洋保全などの環境保全活動に関心を寄せているんです。だから、ウェアなどの素材でも環境に配慮した素材を使用するのは、当然のこと。バックグラウンドを大切にしないブランドなんてないわけで、〈ダイワ〉にとってそれは、釣りであり大自然。ブランドの原点を守ろうとする姿勢が、プロダクトから伝わってきます。
こちらのダウンジャケットも環境に配慮されています。生地は、廃棄される漁網をリサイクルしたPERTEX® NetPlus®。海洋プラスチック汚染の一因とされる漁網を原料に、10デニールの超極細糸で高密度に織り上げ、軽量性・耐久性・撥水性のある生地に仕上げているんです。
Shogo:デザインがかっこよくて高機能。それでもって、環境に配慮した素材を使っているというのは、〈ダイワ〉が手がけているからこそ受け入れやすいと思います。押し付けがましくない、かっこよさがありますよね。
会場の一角には、これまで「グローブライド」社が取り組んできた環境保全に関連した活動を紹介するパネルを掲示。QRコードを読み込むと「グローブライド」社のホームページに掲載されるコンテンツにアクセスできるようになっていました。気候変動や生物多様性の損失など、いま直面している環境問題を紹介していましたが、Shogoさんも農作業で実感しているそうです。
Shogo:1年を通じて暖かい期間が長くなり、畑の虫が増えているんです。栽培の時期をずらしたり、防虫ネットを張ったり、有機栽培をしているから農薬に頼らず対策していますが、すごく大変で。あと、ここ数年すごく暑くて、ジャガイモが土のなかで腐っちゃうこともありました。酷暑のあまり、畑を辞めちゃう高齢者も多いんです。耕作放棄地や遊休農地が増えると、鹿や猪の行動範囲が広がってしまう問題もある。森の景色が変わりつつあるように感じています。
夏はゲリラ豪雨が増え、昨年の冬は記録的な大雪に見舞われた。海では海水温が上昇し、魚の生息域が変化した。気象や環境がこうも変わってしまうと、自然のなかで遊びにくくなるし、おいしい自然の恵みも減ってしまう。豊かな生活は、整った自然環境があってこそ成り立つんですね。
自然からの恩恵を再確認するアプローチ。
会場には食欲をそそる香りが漂っていました。来場者へのおもてなしとしてケータリングの軽食が用意されていて、その主役は未利用魚。それはサイズが小さかったり、下処理に手間がかかるため敬遠されたりする、スーパーなどには流通しにくい、行き場を失ったような魚たちのこと。しかし、おいしくないわけじゃない。貴重な海洋資源を活用しようという〈ダイワ〉からの提案です。
料理を手がけたのは、下北沢の隣駅、池ノ上にあるイタリアン「PEPE ROSSO」。スタッフ自らが釣って手に入れた魚も食材に使いながら、イタリアの郷土料理をフルコースで提供しているお店です。
今回用意されていたのは、コムツ、イラ、シイラ、アカエイ、ムギイカ、トビウオ、ホシザメの7種類で作る7品の料理。
漁で獲れたものの一般的にはなかなか流通しないような魚の行方は、Shogoさんも気になっていたそう。その実態は、漁師の食卓に並んだり、レストランのまかないとして販売されたりしているとのこと。一般消費者には出回りづらい自然の恵みがあるのは、農家も同じです。野菜の場合、どんな食品ロスの対策をしているのか、Shogoさんが教えてくれました。
Shogo:形が悪すぎたり、小さすぎたりしたら、ぼくの畑では全部土に還しているんです。野菜が土から栄養分を吸収して育ったぶん、土の栄養分が不足してしまう。だから、少しでも野菜を土に還せば、土壌の栄養分が回復するという考えです。あと、横浜の廃棄物処理場が、スーパーとかで出る野菜くずを使った堆肥を作っていて、うちの畑でも使っています。
コムツはクロムツに、ムギイカはスルメイカに。成長すればなじみのある魚種も、小さいまま魚網にかかってしまうと、市場価値が低くなってしまう。トビウオやアカエイは調理が大変ですが、旨味がとても高い。ハワイでは“マヒマヒ”と呼ばれるシイラは新鮮なうちに下処理すれば、おいしくいただける魚。アンモニア臭という先入観があるホシザメですが、じつはそうではない。イラなんて、おいしいのに奇抜な見た目で避けられることも多いんだとか。と、「PEPE ROSSO」の今井和正さんが丁寧に解説してくれました。イタリア各地の伝統料理や家庭料理で仕上げた未利用魚は、すべて絶品!
Shogo:食材となった魚の背景や調理方法を説明してもらいながら食べると、ストーリーを感じます。そして、すごくおいしい。初めて食べたアカエイはこんなにおいしいなんて知らなかったし、麦の収穫期に揚がるムギイカは煮込んでもすごく柔らかい。シイラを塩漬けにする調理方法を教えてもらったから、自分でもやってみたいです。
新作を見て、絶品料理をいただいて、満足感に浸りまくったプレスプレビュー。単にかっこいい、おいしいと感じるだけじゃなく、現状を知り、未来を考え直すいい機会となりました。そして、帰り際にノベルティとして〈ピア〉のロゴを印字した〈コジオル(koziol)〉のカップを配布。100%リサイクル可能なバイオサーキュラー素材を使用しているため、日常的に環境問題を身近に感じられそうです。
Shogo:〈ピア〉の今年の秋冬は、相変わらずシルエットやスペックで時代をとらえている印象で、欲しいアイテムが多かった。未利用魚を使った本格的なケータリングは斬新で、海洋変化と魚との実情を理解している〈ダイワ〉だからこその説得力を感じました。「グローブライド」社の活動の背景があるから、〈ピア〉のアイテムは信頼できますよね。それを知れば、着る服に思い入れが増すと思う。最近、考え方に共感できる友人の服ばかり買っているんですけど、それと同じ感覚だと思います。