確かな腕で馬具職人としての評価を着々高めていった創業者、ティエリ・エルメス。1867年のパリ万博で銀賞をとってその名声は決定的なものとなった。
21世紀の〈エルメス(HERMÈS)〉を知る読者にすれば金賞ではなかったことに物足りなさを感じるかも知れないけれど、それは地元フランスでなく、イギリスの革を使ったためだったといわれている。ティエリがイギリスのそれを採用したのは、単純にものとしてすぐれていたからである。
〈エルメス〉にはこの職人気質ともうひとつ、先見の明があっていまがある。この方面で八面六臂の活躍をしたのが三代目、エミール・エルメス。最たるものがモータリゼーションの到来を予感して切った大胆な舵だろう。鞄を皮切りにいち早く、しかしじっくりとファッションへそのフィールドを広げていき、今日の土台を整えた。そんな〈エルメス〉のコレクションで、ぜひ手に取ってもらいたいのが帽子だ。
昨シーズンに続いて登場したキャップ「ネバダ」はウール素材のダブルフェイスで、バイカラーと後ろのメタルパーツ、鞍の鋲の意となるクルー・ド・セルがアクセントになっている。ラビットのカットフェルト素材を使ったハット「ピート」は広めのブリムにストライプのグログランが完璧な調和をみせる。
その佇まいはエレガントの一言。うっとりさせる匂いのもとは、とびきりの素材と、円熟の職人仕事だ。
ピート 各¥72,000+TAX
ネバダ 各¥55,000+TAX
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa
Edit_Ryo Muramatsu
エルメスジャポン
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