王道ブランドの定番品はやっぱりいい。定番と言われるだけあって歴史があるし、信頼できるスペックもあって、何歳になっても飽きない。でもこれはちょっと天邪鬼なひとに向けた連載企画。あのブランドの、実は知られていない、けどグッとくるものを紹介します。第9回目は〈アニエスベー〉のマイナーグッド。
Photo_Arata Suzuki
Styling_So Matsukawa
Text&Edit_Yuri Sudo
モードが嫌いと言ったのは、〈アニエスベー〉創業者のアニエス・トゥルブレ。流行り廃りのあるものではなく、長く着られるもの、そして自らが納得できるものを追い求め、ブランド設立の1975年から今まで全て自分の手でデザインを手掛けています。
そんな背景を知っていたなら、彼女が “ワークウェア” に魅せられるのにも納得するはずです。
コンビネゾン
¥69,300(10月上旬発売)
50年ものあいだに生まれた名作は数知れず、なかでもカーディガンプレッションやボーダーアイテムは印象深く、最近ではロゴTシャツやレザー小物も定番になりつつあります。その一方で、ブランド当初からワークウェアへの敬愛が感じられるデザインが多いのをご存知でしょうか。
たとえばこのオーバーオール。職業服を参考に素材を選定し、ブランドの新たな解釈を持って表現しています。ユーロヴィンテージのつなぎであれば、通常フロントは比翼仕立てやジップアップであることが多いですが、スナップボタンのあしらいに。パッチポケットもフロントに4つオン。なによりワインレッドのカラーリングがブランドの品の良さを感じさせます。
コレクションを飾るエレガントなアイテムに紛れて、こんなタフなものもあったんです。
トートバッグ
¥22,000(8月上旬発売)
ここぞという日のバッグは〈アニエスベー〉がいい。そしてカジュアルな日のバッグも〈アニエスベー〉で見つかります。
このトートバッグは、キャンバス生地をバイオウォッシュ加工して、ヴィンテージさながらに仕上げた逸品。柔らかくて使いやすく、プリントも使い込んだような味わいがあります。筆記体ではないブランドロゴも新鮮です。
プリントには「La jeune fille qui regarde la mer(海を見ている少女)」というタイトルのドローイングが採用されていて、これはブランドがアメリカ1号店をオープンした際にタグとして使っていたのだそう。現在でも一部の商品に使われています。
海やピクニックのようなレジャーにもいいし、近場の買い物にも向く。使えば使うほどに良さが増していくバッグです。
目まぐるしいスピードで流行が現れては消えていくパリ。そんな環境に身を置いていたアニエスだからこそ、変わらぬ魅力を持つワークウェアに惹かれたのでしょう。温故知新を重んじた服づくりをする〈アニエスベー〉にこれからもご注目を。
ロケ地メモ:代官山の本屋で働いている書店員の自宅。水道管修理のマグネットはメルカリでまとめて買った。