NEWS

連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.119 “なんだか見たことある変なシャツ”。そうです、私がチコズデザインです。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

この連載も15シーズン目に突入! 第119回目は、三軒茶屋にある「アツラエ ヴィンテージ(atsurae vintage)」の川崎達也さんの2巡目です。さて、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


川崎達也 / atsurae vintage オーナー
Vol.119_チコズデザインのチャイナジャケット&パッチワークシャツ&ノーカラージャケット

ーさて、2巡目の今回はどんなニュー・ヴィンテージを紹介いただけるのでしょうか?

前回、ウチ(「アツラエ ヴィンテージ」)では“エスニック”、“トラッド”、“オーセンティック”、“モード”という4つのテーマで買い付けをしているとお話ししました。今回はその中でも“エスニック”なアイテムとして、〈チコズデザイン(CHICO’S DESIGN)〉のシャツを取り挙げたいと思います。

ーあ〜、このタグには何となく見覚えがある気がします。

アメリカのブランドで創業は1983年。創業者はご夫婦で90年代の第一次ヴィンテージブーム時にはドレギュラーだったので、まさにこの企画にピッタリなんじゃないかなと。元々、民芸品的なメキシカン雑貨を扱っていた小さなお店だったのが、のちにウィメンズを主力とした服をデザイン&制作販売するようになったらしいです。ネットで調べたところによると(笑)。

ーへぇ。ブランドとしていまも現存しているんですか?

いまもありますが、当時モノと近年モノではタグの雰囲気が全然違っていて、“CHICO’S”の後に“DESIGN”と記されているのが当時モノです。公式サイトで最近のラインアップをチェックすると、派手な柄モノもありますが全体的にはもう少し落ち着いていて、ヤングミセス向けという印象を受けます。

ーたしかに公式サイトを見る限り〈ザラ(ZARA)〉っぽさもあるというか。古着で見つかるのが個性的な色・柄というイメージもあって、なんとなく意外です。

90年代前半くらいまでのモノは、そのルーツもあってかオリエンタルでエスニックでフォークロアなノリが顕著なんですけどね。実際、派手色や何コレ?って柄のテキスタイル、凝った異素材使いや切り替えなどを多用したモデルが多く見つかりますし。今回はその中から、いまあるオススメをいくつかお見せしましょう。まずはチャイナジャケットから。

チコズデザインのリネンチャイナジャケット ¥19,800(アツラエ ヴィンテージ)

ーしかも竹林柄とは、なんともオリエンタル。

表情豊かなリネン生地に、チャイナトグルと水墨画調の竹、さらに漢字と思われる文字がアクセント。ウィメンズとはいえ、サイズが大きめなので男女ともに着用可能。こういった感じの趣きのテキスタイルが多いのも、〈チコズデザイン〉ならではの特徴といえます。

ー続くこちらは、また切り替えがエグいですね。

チコズデザインのパッチワークシャツ ¥14,300(アツラエ ヴィンテージ)

それでいて素材はシルクですからね。洗濯が大変そうというか、クリーニング店にも面倒臭いという理由で断られそうな1着。まぁ、それだけ凝った作りをしているとも言えます。

ー3着目はまたちょっと毛色が異なります。

チコズデザインのリネンジャケット ¥18,700(アツラエ ヴィンテージ)

ノーカラーのシャツジャケットですね、絣(カスリ)っぽい模様の刺繍が入ったリネン素材で、“和”の雰囲気もあります。色合い的にもこの中では1番デイリーユースしやすいかと。といっても、ウチでも反応してくれるのは、普通の勤め人というかはクリエイターっぽい方々が多いように感じますし、これはこれで通好み。

ーアメカジなどの文脈とは異なり、無名のブランドであってもデザイン性に価値を見出す、いわゆる“デザイン古着”というジャンルもあります。これもそこにカテゴライズされるんでしょうか?

“デザイン性に価値を見出す”という視点では、そうなると思います。また〈チコズデザイン〉の場合、同じデザインとの遭遇率が低いとはいえブランド全体で見るとまだまだ掘れるので、意外とコレクターも多いみたいですね。ウチのお客さんでも入荷をチェックされている方々がいたりしますし、一部の層にはすごく刺さっているという印象はあります(笑)。

ー今回はどれも羽織のトップスですが、それ以外のジャンルのアイテムもあるんですか?

ボトムスもありますよ。90年代後半〜00年代に、それこそいまの若い世代が好きそうな、Y2Kっぽい“ラッパーが履いていたようなジーンズ”を作っていたりとか。その一方でチノパンツやトラウザーズのようなクラシックなパンツは出てきません。そこはウィメンズのブランドだからでしょうね。

ーこの連載でご登場いただく皆さんに“ニュー・ヴィンテージとなるアイテムの条件”を聞いていますが、そこでブランド自体のネームバリューと生産数、からの再現性のお話もチョイチョイ出てきます。

〈チコズデザイン〉の場合は、それらを補ってなお余りある服としてのクオリティの高さが魅力だと思っています。なのにマーケットプライスもお手頃なので手が出しやすく、かつ自分だけの1着を掘る楽しみがある。ウィメンズなので、まだ男性で注目している人も少なく、被る心配もないというのもポイントです。ハイブランドの間でも“エスニック”テイストに注目が集まっていますし、タイミング的にも良いのではないでしょうか。

ースタイリングに取り入れる際のヒントをお願いします。

基本的には相反するテイストとのミックスです。オーセンティックなカーゴパンツに合わせてもイイですし、モードなライン入りのパンツとかでも格好いいし、意外とどんなテイストにスタイリングに対しても、絶妙な違和感を生み出すスパイス。ハマると次々と欲しくなっちゃう。そんなアイテムだと思うんですよね。昔から本物のファッション好きはウィメンズのアイテムにハマると言いますし、ぜひ挑戦してみてください。

川崎達也 / atsurae vintage オーナー
「ユナイテッド アローズ(UNITED ARROWS)」で約14年間キャリアを重ね、2021年10月8日に自身がオーナーを務める「アツラエ ヴィンテージ(atsurae vintage)」を、古着屋がひしめく三軒茶屋・茶沢通り沿いのビル2Fにオープン。メンズ・ウィメンズともに、ヴィンテージからグッドレギュラーまで、独自の審美眼で選び抜かれた個性豊かなアイテムが並ぶ。
インスタグラム:@atsurae_vintage

TOP > NEWS

関連記事#NEW VINTAGE

もっと見る