タレントとして多方面で活躍する一方、J-WAVEのラジオパーソナリティを務め、フルマラソンでサブスリー(3時間以内)を達成するほどのガチなランナーとしての顔も持つハリー杉山さん。日々ストイックにトレーニングを重ねながら、自ら率いるランニングコミュニティ「TEAM NASTY」で走る楽しさを仲間と共有しています。そんな彼にとって、ムーブメントを超えてカルチャーとして醸成しようとしている近年のランニングシーンはどのように映っているのでしょうか。国際色豊かなハリー杉山さんだからこそ語れる、カルチャーとしてのランニングとは。
Photo_Satoru Tada
Edit_Amame Yasuda
PROFILE
イギリス人の父と日本人の母のもと1985年に東京で生まれ、イギリスで育つ。日本語、英語、中国語、フランス語の4か国語を操る卓越した語学力を持ち、司会、リポーター、モデル、俳優などマルチに活躍。主な出演番組は、J-WAVE『POP OF THE WORLD』、J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』、CX『ノンストップ!』、テレビ東京『東京GOOD! TREASURE MAP』、NHK BS『ランスマ倶楽部』、BS11『Weeklyワールドサッカー Supported by U-NEXT』など。
Instagram:@harrysugiyama
仲間が目標を達成する瞬間が、なによりも好き。
ーランニングの原体験はいつですか?
ハリー:5歳の頃、父の職場について行くことがあって、家から歩いて向かっていました。父は予定より15分前に到着するのをモットーにしていたんですけど、間に合わないときはジョグをしていて。それに追いつくために走りはじめたのが最初のランニングです。
ーその当時、ランニングが楽しいと思った瞬間は?
ハリー:ないですよ(笑)。サッカー部に所属していた学生の頃も、走ることは楽しくなかったし、走りたいとも思っていませんでした。そのときは全寮制で、なにかやらかしたら隣の山まで走らされていたから、楽しいっていうより恐怖の対象。
ーそれじゃあ、どんなきっかけでランニングを楽しめるようになったんですか?
ハリー:きっかけは『オールスター感謝祭』の赤坂ミニマラソン。サッカーをやっていたから走れると思っていたけど森脇健二さんに一切歯が立たなくて、そこから6〜7年くらい経っても全然勝てないのが悔しかった。でも、『オールスター感謝祭』でかんばって走っている印象を持ってもらえるようになり、ランニングのお仕事が増えていったんですよ。
ーそのなかで走ることが楽しくなっていったと。
ハリー:そうですね。『ランスマ倶楽部』で共演しているプロのランニングコーチの金哲彦さんと出会って、走ることは人生にさまざまな恵みを与えてくれるし、シンプルに楽しいと思うようになりました。コロナ禍で仲間とともに走ることが唯一の心の栄養になっていて。
ー心の栄養ですか。ほかに、走るようになってよかったことはありますか?
ハリー:自分のネットワークがどんどん広がりました。「TEAM NASTY」のメンバーは年齢も職業もみんなバラバラ。ぼくのプライベートの延長線として活動しているので、会員とかじゃなくて、金銭のやりとりは一切ない友達。メンバーが友達を呼んで、交友関係が広がっているのがうれしいです。
ープライベートな付き合いが「TEAM NASTY」に発展した形なんですね。
ハリー:暇だったら来てねってくらいの感覚です。意識が変わらないようにチームでお仕事を受けていませんし。根本にあるのは、ランニングを楽しむこと。すると、それぞれ自分の目標ができて、そのゴールを目指すために、こういう練習をしてみたいって思うようになるんです。10月26日(日)にみんなで「水戸黄門漫遊マラソン」に参加するんですけど、ゴールテープを切った瞬間の幸福感だったり、ある意味の優越感だったり、それを見届けるのがぼくは大好きだから楽しみです。
ーひとががんばっている姿を見るのも好きなんですね。
ハリー:むしろ、それが好き。ぼくが18歳の頃、一緒にサッカーをやっていた友達が家庭を持って子育てをしていたら、気づけば体重が100kgを超えていたんですよ。健康のため走るようになって、フルマラソンに挑戦すると宣言したら、周りは無理だって言っていました。でも、4ヶ月で25kgくらい痩せて、「湘南国際マラソン」を4時間切るタイムで完走したんですよ。その目標達成までのプロセスを見ているのが、楽しくて仕方なかった。
ー「TEAM NASTY」では、友達のそういった姿を一緒に喜んでいるということですか。
ハリー:人生をより豊かに過ごすために、みんなで走っています。失恋したり、仕事がうまくいかなかったり、誰しもが人生でいろんなことに向き合っているじゃないですか。さまざまな葛藤をランで乗り越える姿を見守るのが、やりがいであって、生きがいになっています。
ランニングと音楽の関係性。
ー「TEAM NASTY」のようなコミュニティは多種多様に増えてきて、レースやイベントもたくさん開催されています。このようなムーブメントがカルチャーとして醸成していることをどう感じていますか?
ハリー:うれしくて、うれしくてたまらないですね。走ることがしんどいっていう認識が変わってきたと思います。ぼくは明治公園でよく走るんですけど、最近は学生とか新社会人くらいの年代が走っている姿を以前より見かけるようになって。それがスポーツブランド主催のイベントだったら分かるんですけど、仲間たちで自発的に集まっているんですよ。しかも、楽しそうに話しながら、速いペースで走っている。なんだか、言い方はあれですけど、めちゃくちゃ健康的な飲み会みたいですよね(笑)。血の巡りをよくする、アルコールなしの超絶健康的な飲み会。
ー確かに(笑)。友達と遊ぶ選択肢にランニングが入ってきているんですね。
ハリー:ぼくが20代の頃なんて、しんどいことがあったら飲みにいってからボウリングで発散させていたけど、いまでは心をリフレッシュしてデトックスしたいから走りに行かない? って誘いがありますもん。その影響で食事や腸内環境のリテラシーも上がっているから、健康寿命と幸福寿命を延ばせると思っています。社会にいい流れが訪れていますよね。
ー2023年には「ロンドンマラソン」に出場しましたね。海外と日本の違いは感じましたか?
ハリー:「ロンドンマラソン」はお祭でした。人生の祭典というのが1番ふさわしい表現かも。1kmごとに流れる音楽が変わるんですよ。ブラジル人がロードサイドで歌って踊っていたり、サングラスをかけたおばあちゃんがテクノを流していたり。どしゃ降りだったけど、42.195kmっていう冒険のようなレースを楽しめました。
ロンドンマラソンを走るハリー杉山さん。
ーそんなに賑やかなんですね! 音楽にも精通するハリーさんは、走るときにどんな曲を聴いているんですか?
ハリー:重要なのはBPM。自分の走るピッチに曲の速さを合わせると、そのスピードで走れるんです。Spotifyに「Run‘N’Bass」っていうドラムンベースのプレイリストがあるんですけど、ペースランでおすすめです。
ー走る速さによって聴く音楽も変わるんですね。ジョグの場合は?
ハリー:Two Door Cinema Clubっていうイギリスのバンドが好きです。BPMは速めで、洒落た浮遊感がある。浮遊感だったらUnderworldとかThe Chemical Brothersもいいし、攻めるならThe Prodigy。The Strokesもおすすめしたいですね。疾走感があってベースが踊るような曲、大好物です。
ーやっぱり音楽があると、いつものランニングがひと味変わりますか?
ハリー:音楽とともに歩んできた人生だから、いろんな思い出が蘇るんですよ。例えばThe Prodigyを聴くと、学生の頃サッカーの試合で勝ったあとに聴いていたし、ボーカルのキースが生きていた頃に観た、雨が降る「SUMMER SONIC」でのライブを思い出す。音楽があると、もっと楽しく走れます。
ただならぬウェアとシューズへのこだわり。
ーほかの要素と合わせて楽しめるのも、ランニングがカルチャーとして育っている理由かもしれませんね。ランニングウェアも、それに含まれると思うんですけど、ハリーさんはどんなウェアを愛用しているんですか?
ハリー:今年の夏は、〈ツータイムズユー(2XU)〉と〈ディストリクトビジョン(District Vision)〉がコラボレーションしたタンクトップを着ていました。砂漠のような過酷な環境でも着られるように設計されていて、めちゃくちゃ生地が薄いんです。もはや着心地は裸(笑)。「オールスター感謝祭」でも着用していて、数々の思い出があります。シーズンによって勝負服が変わるんですけど、結局このタンクトップに戻るんですよね。これに〈ツータイムズユー〉のコンプレッションタイツを組み合わせて、夏の暑さを乗り切りました。
ーウエアを選ぶ際に重視するポイントは?
ハリー:1番の理想って、着替えずにそのまま走れるおしゃれな服なんですよ。それに最適なのが、友達が立ち上げた〈アンドモス(&MOSS)〉っていうブランド。シティウェアだけど、肌触りがよくてランニングにも使えます。友達が作っているブランドとか関係なく、ただただファンでして。ブランディングはハイエンドで、ビジュアルもモードっぽくつくっているけど、実際着てみてもめちゃくちゃおしゃれなランニングウェアだと分かります。会食とかパーティにも着ていっちゃうくらいです。
ー普段着とランニングウェアがシームレスになっているんですね。
ハリー:走っていると、そうなっちゃいますよ。
ーJ-WAVE『POP OF THE WORLD』のなかで放送されているコーナー『New Balance RUN TO THE WORLD』のポッドキャスト版で、芸人のワタリ119さんと着用するウェアのこだわりをお話しされていましたね。
ハリー:擦れが気になるとか、かなりマニアックな話をしちゃいましたね(笑)。肌触りとか通気性はもちろんのことですが、そのウエアで自分らしくいられることも大事だと思います。だから、〈ツータイムズユー〉とか〈アンドモス〉だけじゃなくて、〈ニューバランス(New Balance)〉も〈エルドレッソ(ELDORESO)〉も、全部大好きですよ。
ー決まったブランドだけで固めてはいないと。
ハリー:全身ひとつのブランドで固めるコーディネートにも信念を感じますが、いろんなブランドを組み合わせるのもいいと思うんです。ただ、ひとつひとつのプロダクトに対する愛着や繋がりが必要。時計とか指輪のファッションや、自転車とかクルマの乗り物と同じだと思うんです。ウェアもシューズも相棒だと思っています。
〈ニューバランス〉の「FuelCell Rebel v5」
ーシューズは〈ニューバランス〉の「FuelCell Rebel v5」を愛用しているんですね。
ハリー:シューズを語りはじめたら長くなっちゃいますよ(笑)。弾むような反発力、足のさばきやすさ、足が前に出る感覚。シリーズ前作よりも格段に好みの履き心地でした。優しいジョグからペースランに使っています。なかなか見かけない、このカラーリングも気に入っています。
生涯、走り続けるために。
ーほかにもランニングの必需品をお持ちいただいたようで。
ハリー:もう1着のタンクトップは「TEAM NASTY」のもの。メンバー以外、誰とも被ることはありません。デザインしてくれたのは、昔レギュラー番組で共演していた、モデルでありアーティストのアダムス亜里咲ちゃん。NASTYは気持ち悪いって意味があれば、かっこいいって意味もあるんです。日本語で言ったらヤバい、みたいな感じ。だから、ちょっとグロテスクでかっこいいデザインに仕上げてもらいました。
右から「アミノバイタル®︎ プロ」「アミノバイタル®︎ パーフェクトエネルギー®︎」「アミノバイタル®︎ ゴールド」「リポ・カプセル ビタミン C+D」
ー〈アミノバイタル®︎〉はランニングの前後に飲んでいるんですか?
ハリー:そうですね。自分の体に合っていて、ぼくのランの支えになっています。ジョグだろうとポイント練習だろうと、30分前に必ず「アミノバイタル®︎ プロ」と「アミノバイタル®︎ パーフェクトエネルギー®︎」を飲んで、走り終わったら「アミノバイタル®︎ ゴールド」を飲む。
ーもう1種類は?
ハリー:ヘビーなレースのあとに飲んでいる、「リポ・カプセル ビタミン C+D」。消費されやすく吸収されにくいビタミンCとビタミンDを効率よく摂取できます。田中みな実ちゃんにおすすめされただけあって美容にもいいし、ランニングで疲れた体にもいいんです。
ーその黄色いのはなんですか?
ハリー:仙骨枕です。これは人生変わりましたよ。使えばびっくりすると思う。喉を使う仕事をしているので、ボイストレーニングに通っているんですけど、そこの先生に教えてもらいました。これひとつで体をケアしていて。寝転んだ状態で尾てい骨の上の仙骨に当てて、自重を使って体を動かすと、姿勢がよくなるんですよ。背骨に当てて、肩甲骨のあいだの筋膜をリリースする使い方も。ストレートネック対策や眼精疲労の解消にも使っています。
ーウェアやシューズのギア以外に、体のケアも大事にしているんですね。
ハリー:そうですね。いまやランニングは、食事と睡眠と同じく生活の一部にあるものなんです。
ーランナーとして、今後の目標はありますか?
ハリー:フルマラソンでサブエガ(2時間50分を切る)に近づき、自己ベストを更新するのが大きな目標です。あと、金 哲彦さん以外に尊敬しているランナーが弓削田眞理子さん。彼女は高校の先生なんですけど、60歳以上の女子マラソンで世界記録を保持されていて、66歳の現在もサブ3を目指しているんです。ランニングにかける情熱がすごく高くて、一度の人生を楽しもうとする姿勢がすごくかっこいい。生涯、走り続けるんだろうなと思わせてくれるんです。ぼくも歳をとっていくと筋力が落ちて、腱も弱くなっていくはず。でも、生きている以上は、ランを心の栄養としてずっと続けて、走ることで人生を豊かにしたいと思っています。
ー最後に、10月1日からJ-WAVEで新番組『MIDDAY LOUNGE』がはじまりましたが、個人的な思い入れも強いそうですね。
ハリー:曜日によってナビゲーターが違って、ぼくは月曜を担当します。そして、ずっと憧れていたジョン・カビラさんが木曜のナビゲーターで、同じ番組をやらせていただけるなんて夢みたいです。15年前、はじめてJ-WAVEでレギュラー番組をやらせてもらったのも平日のお昼だったので、その時間帯に戻ってこられたのはぼくにとって大きな意味があるんです。
ーそれはよかったですね! どんな番組にしていきたいですか?
ハリー:ラジオは、ほかのメディアにはない温もりがあって、リスナーとナビゲーターの距離が絶妙に近いんですよね。この番組はその距離感を大事にしていきたいです。知的好奇心をくすぐるような情報や音楽が溢れる、大人から子どもに響く時間、ランと同じように心を豊かにする時間を届けたいです。ぜひ、聴いてみてくださいね。
『MIDDAY LOUNGE』J-WAVE 81.3 FM
月曜から木曜の13:30〜16:30に放送中
(月:ハリー杉山、火:市川紗椰、水:クリス・ペプラー、木:ジョン・カビラ)

