米軍の戦闘服は1950年代の半ば、ヘリンボーンツイルからコットンサテンにアップデートされた。その服の名は「OG-107」。米軍のカラーコード、オリーブグリーン107に由来する。基本スペックはボタン留めの前立てと、胸にあしらった2つのフラップパッチポケット。
〈メゾン マルジェラ(Maison Margiela)〉がモチーフにしたのが、その69年に製造されたモデルだ。
JACKET ¥380,600
手作業によるサンディングとウォッシュ加工を経たそのコットンサテンは、パティナ、すなわちエイジングを重ねたような褪せた色合いをまとっている。半世紀前の掘り出し物だよといわれれば、なるほどそうかも知れないと思わされる風格がある。「着尽くすほどに愛された衣服」という今シーズンのテーマを見事に体現している。
反モードを掲げ、ポペリズム(貧困者風)と謳われた〈メゾン マルジェラ〉がデザインソースとして大切に付き合ってきたのが軍服の世界だ。さすが堂に入った佇まいである。
前身頃に付くフラップを上げると現れるのが、口を裂いたようなポケット。
Photo_Kazuma Yamano
Text_Kei Takegawa