1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
本連載15シーズン目も今回がラスト! トリを飾る第120回目は、シーズン9以来、本連載3度目の登場となる「ダンジル(danjil)」のコージさんです。さて、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
コージ / danjil 店長
Vol.120_ポーター「タンカー」のウエストバッグ&ポーチ
ー2巡目となる今回、どんなニュー・ヴィンテージをご用意いただいたのでしょうか?
前回が90年代のストリートを通ってきた世代には懐かしの〈ジャップ工房(JAP工房)〉のリングを紹介したので、今回も同じノリでチョイスしてみました。あの頃、バッグといえば…ということで誰しもが一度は通っているアレ。そう、オールド〈ポーター(PORTER)〉です!
ーいいですね。吉田カバンの〈ポーター〉といえば、90年代のストリートでは定番中の定番。最近また若い世代の間で注目が集まっているとの話も聞きます。
今回はその中でも、象徴的なシリーズである「タンカー」で色はブラックに焦点を当てたいと思います。ということで、定番のウエストバッグを中心にポーチ類も用意しました。
ー「タンカー」は〈ポーター〉の中核を担うシリーズということで、当時から継続展開されているモデルも多いと思います。現行品とオールドでは分かりやすく違いがあったりするんでしょうか?
そうですね。そもそもモデル自体が廃番になってしまっているケースはありますが、継続モデルに関しては、内側のタグが現行モデルの方がやや立派という位で、大きくディテールが変更された点はなさそう。もちろんここ数年でボディのナイロン素材が100%植物由来に変わったという点を除いて。ではありますけどね。というワケで、早速アイテムをご覧いただきます。まずはポーチから。
ポーターのポーチ ¥10,780(ダンジル)
ポーターのポーチ ¥10,780(ダンジル)
ポーターのポーチ ¥10,780(ダンジル)
ーこれらのポーチはどういった用途なんでしょうか?
アイテム的には“マルチポーチ”的なジャンルになると思うのですが、サイズ的にメッセンジャーが使うようなトランシーバーだとちょっと小さいですし、携帯電話やタバコ&ライターなんかの収まりが良さそうですよね。
ポーターのポーチ ¥10,780(ダンジル)
ウチでは〈バッグジャック(BagJack)〉も扱っているので、バッグやポーチなんかには少々ウルサイんですが、この「タンカー」シリーズのポーチはどれも使いやすくてスゴイっスよ。そもそも「タンカー」を集め始めるキッカケが、こういったポーチからでしたし。で、単体でボトムスのベルトループやバッグに装着するのも良いのですが、オススメは同シリーズのウエストバッグとのコンビネーション。
ポーターのウエストバッグ ¥21,780(ダンジル)
ーデイリーユース視点での使い勝手を考えても、まさに最適解ですね。
世代的には“〈ポーター〉のウエストバッグ=肩掛け”が頭と身体に染み込んでしまっていますが、
個人的には普通にフロントで巻くのがオススメ。これくらいのサイズのウエストバッグにポーチを沢山装着し、パンクスたちのバンダリア(弾帯)と同じノリでフロントに巻くっていう。このフル武装しているゾ! ってのも新鮮でイイんですよね。
ー男ゴコロをくすぐるってヤツですね、なるほど。
あと、オールド「タンカー」のMA-1生地ってすごくイイ雰囲気なんです。当時に比べるといまはMA-1生地も手に入りやすくなっていますが、最近のものは手触りがサラサラしているというか妙に高級感があって、コレジャナイ感があると言いますか…。
その点「タンカー」は、〈アルファインダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)〉の MA-1の質感に似ていて、無骨な軍モノっぽい雰囲気もある。ステッチワークもさすがは日本製というべきクオリティの高さで、細部まで手を抜いていません!
ー「タンカー」の中では、これ以外にどういったモデルも人気なのでしょうか?
大きなサイズのヘルメットバッグはユーズド市場では高騰していて、なかなか見つからなくなっています。ボディ素材の変更など資材高騰と工賃の値上がりなども相まって現行モデルはかなり定価も上がっていますが、それに比べたらまだ手頃なプライスで手に入る。そういった点も魅力的。
ーユーズドならではのポイントですね。
また、当時のブームをリアルタイムで経験していない若い世代でいえば、〈グッドイナフ(GOODENOUGH)〉など当時の裏原宿カルチャーが好きで、そこから興味を持って“あえてこの年代を使いたい”っていう子も増えているように感じます。
ー〈バックジャック〉の話も出ましたが、〈ポーター〉が海外のバッグブランドから、どう見られているのかは気になります。
結構、影響を受けているブランドは多そうです。特に他のバッグに装着できて拡張性に優れたマルチポーチなんかは、ミリタリー要素をファッション文脈でバッグに落とし込むという点で先駆者だったのではないかなと思いますし。
とはいえ流行りすぎていたこともあって、正直、ぼく自身も〈ポーター〉を使うのが、ちょっと恥ずかしい時期がありました。しかしそれも約20年経ったいま、改めて「アリだな!」と。これからの季節に活躍するシェルアウターとも相性が良いし、存在感はあるけれど主張はそこまで強くない。そのバランス感が、すごくジャパンブランドならではの魅力だなって。
ーしかも、世の中に出回っている絶対数自体は多いので、エンカウント率も低くない。
ですね。ただしユーズドで「タンカー」を探す場合、使い込まれてボロボロになっているケースが大多数で、状態の良い個体を探すのが難しくなってはいます。それでも加水分解などによる劣化もないですし、特別なメンテナンスを必要としないので、手に入れてから長く楽しめる。やっぱイイスね、〈ポーター〉の「タンカー」は。
コージ / danjil 店長
2003年、東京・西南エリアにおける古着のメッカとして知られていた町田に、1980年代〜2000年代のアメリカンカルチャーにまつわるアイテムをラインアップする古着屋「danjil」をオープン。22周年目を迎えた同店では、ストリートカルチャーやアメリカンスポーツにまつわるアイテムがところ狭しと並び、訪れる“好き者”たちを悶絶させる。また、ブランド〈コットンパン(COTTON PAN)〉のディレクターでもある。
インスタグラム:@danjil2