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札幌パルコ50周年を記念した、五十嵐威暢の回顧展をレポート。「PARCO ART & CULTURE DAYS」でパルコの歩みとカルチャーに浸る。[VOL.2 札幌編]

ファッションとカルチャーの “発信地” として発信をつづけるパルコを舞台に行われた「PARCO ART & CULTURE DAYS」。アート、ファッション、音楽、マーケットなどさまざまなカルチャーをテーマに、全国15店舗で各店独自のイベントが開催されました。VOL.1の東京編につづいて、VOL.2は札幌編の模様をお届け。札幌パルコオープン50周年を記念して、同時期に開催された五十嵐威暢(たけのぶ)さんの展覧会の模様をレポートします。

Photo_Yuco Nakamura
Edit & Text_Akiko Maeda


DATE:11.5.Wed @PARCO SAPPORO

“五十嵐ロゴ” に彩られた
札幌パルコ館内での回顧展。

全国のパルコで大好評を博した「PARCO ART & CULTURE DAYS」。今回は札幌出張編! 札幌パルコ50周年を記念して行われた五十嵐威暢さんの展示の様子をお届けします。

五十嵐威暢さんは北海道滝川市出身の世界的に名を轟かすデザイナー・彫刻家。主な作品にニューヨーク近代美術館のカレンダーやカルピス、明治乳業やサミットの企業ロゴ、多摩美術大学のロゴなどがあり、1994年からは本拠地をロサンゼルスへ移し彫刻家としても数多くの作品を残しました。

札幌駅にあるJRタワーのロゴや駅のシンボルである星の大時計を手掛けたことでも有名です。そしてパルコとの関わりは1981年にオープンした渋谷パルコ PART3プロジェクトからスタート。入口看板や屋上ネオンサイン、ショッピングバッグなど数々のデザインを手掛け、パルコの歴史を語る上で欠かすことができない、“あの” パルコロゴの制作者です。

館内7階の「SPACE7」で行われた展覧会「A-Z Homage to Takenobu Igarashi」で見ることができた、渋谷パルコ PART3オープン時に五十嵐さんがデザインした通称 “五十嵐ロゴ”。写真は、2025年2月まで松本パルコで使用されていた木製のドアノブサインです。“五十嵐ロゴ” は現在でも渋谷パルコや心斎橋パルコにネオンサインが常設されているほか、吉祥寺パルコと名古屋パルコの外壁サインとして目にすることができます。

ABS樹脂で製作されたアルファベット。作品とあわせて展示された図面からは五十嵐さんのデザイナーとしての手つきを感じることができる。

実は五十嵐さんとパルコの繋がりは渋谷パルコ PART3オープンの少し前、アルファベット彫刻を発表した展覧会を起点としています。渋谷パルコ PART3プロジェクトに協力していたインテリアデザイナーの倉俣史朗さんから声が掛かり、ロゴをデザイン。店舗外のストリートギャラリーと称したショーウインドウを舞台にアルファベット彫刻シリーズの新作展も開催しました。

そこで発表されたのは2種類のABS樹脂、コンクリート、鏡、木、クロムメッキといった6種類のシリーズや仕上げでつくられた計30点。週ごとに異なるシリーズが展示され、道行くひとたちが足を止め見入っている姿が当時の資料に描かれています。

五十嵐さんは建築やインテリアデザインの図面の描き方のひとつだった「アクソノメトリック図法」と呼ばれる手法をグラフィックデザインに応用し、立体的な文字表現を行っていました。今回の展示を開催するにあたって、五十嵐さんの想いを受け継いだデザイナーたちがオリジナルの「P」「A」「R」「C」「O」「T」「3」から独自の規則性を見つけ再解釈し、残りのアルファベットと数字を新たに描き起こしたことも注目すべきトピックでしょう。

その他、五十嵐さんが多摩美術大学の学長就任当時にTwitter(現:X)上で発信した2000以上のことばをまとめた書籍『はじまりの風 五十嵐威暢のことばのいぶき』にまつわる貴重な資料が展示され、五十嵐氏の思想を垣間見ることができました。

併設のギャラリーショップでは “五十嵐ロゴ” を用いたグッズの数々が展示・販売された。

階段ギャラリー「STEPS 207」を舞台に
五十嵐さんの作品が集結!

もうひとつの展示会場となったのは、階段の段数にちなんで「STEPS 207」と名付けられた札幌パルコの階段ギャラリー。「STEPS 207」の展示作品は、「B」の彫刻以外、五十嵐さんのオリジナル作品を元に今回の展覧会のために新規制作されたオマージュ作品です。地下鉄出口直結の第二のメインエントランスのあるB2階からスタートし、7階にかけての計9フロアの階段を利用し、AからZのアルファベットを題材にした彫刻やグラフィックデザインのポスターや写真など、約50点の作品を展示。先に紹介した書籍『はじまりの風 五十嵐威暢のことばのいぶき』から厳選したことばとともに楽しむことができる贅沢な内容でした。

もともと階段の踊り場には五十嵐さんの手掛けたフロアサインがあり、それも相まって印象的な展示スペースに。また、床に引かれた赤と緑のラインを辿っていくと、各展示会場に誘われる仕掛けはパルコらしい独創的なアイデアが感じられました。

2-3階のスペースで「非日常もいいけれど、日常をなんとかしないとね。」のメッセージとともに展示されたのは、「アルミニウムのアルファベット E」。複雑な形を持つアルファベット彫刻が地面に落とす平面的な影を捉えた和田惠さんによる写真作品です。

つづいて3-4階のスペースには、お馴染みの「PARCO ロゴ R」(左)と「シルクスクリーンアルファベット Q」(中央)、「折りアルファベット N」(右:オリジナルをもとに新規制作)を展示。壁面には「N」のさまざまな折り方を平面図で示したグラフィックも掲示されていました。

オリジナルをもとに新たに制作した「鏡のアルファベット W」は、「V」を鏡に映して覗き込むことで「W」が完成するユニークな作品。もともと踊り場の壁に描かれていたストライプ柄のパターンとも不思議とマッチしています。

無印良品 刺繍工房との連動で
“五十嵐ロゴ”のレア刺繍を体験。

目玉イベントはこれ以外にも。無印良品の刺繍工房と連動し、お好みの布製品に五十嵐ロゴを刺繍できるサービスを実施。今回新たに誕生したA-Zまでの26文字を、赤青緑のカラーバージョンまたは単色10色、大中小の3サイズから選択できます。本イベントは来年2月末まで開催予定なので、今回の展覧会を見逃してしまった方も札幌パルコ 5-6階の無印良品に足を運んでみては。

札幌パルコは、50周年に際して新しい出発点に立ち、今後も北の大地のカルチャー発信地として常に新たな時代を描き挑みつづけます。

INFORMATION

札幌パルコ

住所:札幌市中央区南1条西3-3
時間:10:00〜20:00
公式HP
公式Instagram

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