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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.122 “令和の世に花開くエレガンス”。男たちよ、いまこそフリルシャツ。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

この連載も16シーズン目に突入! 新たにショップが全て入れ替わり2番手の第122回目は、祐天寺の人気店「アンサムチル(anthem chill)」。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


稲田悠人 / anthem chill ショップマネージャー
Vol.122_フリルシャツ

―本連載は“トゥルー・ヴィンテージのように記録や記憶に残っていくようなグッドレギュラーをいまの内に探す”のがテーマです。では、「アンサムチル(anthem chill)」または稲田さんにとっての、ニュー・ヴィンテージの定義とは?

あくまで私見ですが、いまおっしゃっていたようにトゥルー・ヴィンテージではない古着の中でも“純粋に面白いと感覚に訴えかけてくるようなアイテム”ですかね。当店で扱うのも、年代や希少性といった価値基準とは異なる視点で選ばれたグッドレギュラー的なアイテムが多いですし、ぼく自身もそこに惚れて通っていたので、ある意味では“アンサムチルで扱うアイテム=ニュー・ヴィンテージ”とも言い換えられるかもしれないと思いました。

ー買い付けはオーナーが担当されているそうですが、どういった部分に「アンサムチル」らしさがあるのでしょうか?

これも私見ですが、当時の空気感やカルチャーの色が付いたアイテムが多いようには感じます。オーナーは古着だけでなく、デザイナーズブランドのインポーターとしても長年のキャリアがあるので、そこで培われた知識から「いま存在しているブランドでは、コストや生産背景など様々な要因からコレを作るのは難しいだろう」と判断してピックされたアイテムもすごくウチらしいと思います。オーナーも「これまで擦られているようなアイテムには一切興味がない」と常に言っていますし、「値段が高いわけではないけれど、見つけづらく誰かと被ることもない」という古着ならではの良さが楽しめるアイテムをピックしています。

ーなるほど。いわゆるアメカジ古着を扱う古着屋とはまた違ったセレクトなのは、そういう理由なんですね。では、そんな「アンサムチル」が今回紹介してくれるのは?

男性は見かけてもなかなか手に取らないアイテムかもしれませんが、だからこそ狙い目の”フリルシャツ”です。基本的に70’sが多いので、ニュー・ヴィンテージの前提条件からはハズれるかもしれませんが、そこはご愛嬌(笑)。そもそもパーティーやドレスの枠組みの中で着用していたアイテムで、カジュアルなシャツと同じようなモノとして扱われるのもちょっと違うんじゃないかってことで、ずっと提案し続けており、“正しく価値が評価されていない”という意味ではニュー・ヴィンテージに該当するのかなと。

アフターシックスのフリルシャツ ¥16,000(アンサムチル)

ー今年44歳の筆者もそうですが、これまで「フリルシャツは難しそう」とスルーしてきた人も多いと思います。

たしかに上手に着こなせている=ファッション上級者とは言えるかもしれません。そそもそも構造的に工数が多く、カテゴリー的には日用品ではなく贅沢品に分類されるため頻繁に出てくるようなアイテムではないというのも、あまり古着業界でメンズに浸透してこなかった理由にあるかと思います。実際、レアだとか煽るつもりはありませんが、「いまだと買い付けの際にスリフトを10軒回って1着あるかないか」とオーナーが話していました。

パームビーチのフリルシャツ ¥16,000(アンサムチル)

ーあとは、どう取り入れるのが正解かが分からないという声も。

それが意外に、オックスフォードシャツなんかのノリで気軽に取り入れやすかったりもします。何より生地感が良いんですよね。薄手でやや透け感や光沢感があったりして色気もあるし。以前はそれが理由で避けられていたそうですが、いまは着方次第かなって。男性がフェミニンな要素を、女性がマスキュリンな要素をスタイリングに落とし込むのがオシャレという空気感は確実にあるし、ぼく自身もそういったファッションが好きです。総じて、いまの時代だから提案できるアイテムだと言えるのではないでしょうか。

フレデリックス オブ ハリウッドのフリルシャツ ¥12,000(アンサムチル)

ーなるほど。“時代と共に変わる価値基準と空気感にマッチするアイテム”という視点で語るならば、まさにニュー・ヴィンテージ。アイテム的に注目すべきポイントがあれば教えてください。

基本的なスタイルはどれもそんなに変わりません。違いとしては襟の形状&サイズ、あとはフリルのヒダの多さや範囲ぐらい。先ほど工数の話もしましたが、最大の特徴であるフリルがフンワリ細かく丁寧に縫製されていたり、パイピングの色を変えたりしているモノは意匠性が高く、エレガントな雰囲気も際立つので人気です。色としては白ももちろんありますが、パステル系が優勢。せっかく選ぶなら色鮮やかな色モノもオススメです。

pepのフリルシャツ ¥16,000(アンサムチル)

ー着方としては?

定番ではありますが、逆のテイストをぶつけてみる。レザーやミリタリーものなど男臭いアイテムと合わせることでコントラストを生み出すとか。それでいえばトラックスーツやモトクロスパンツといったスポーティーなボトムスだったり、フリルシャツ同士を重ねる〈ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉のルックのようなアプローチも面白いと思います。〈ラルフ ローレン〉でもウィメンズではたまにフリルシャツを出していて、年代によってシャンブレー素材だったり、エレガントかつセクシーなモノがあったりも。その辺のルックを参考してみても良いと思います。

ーあまり馴染みがなくなったいまだからこそ、ルールに縛られず自由に楽しめると。

ですね。「普通のシャツでは物足りない。もっと自分なりのファッションを楽しみたい」。そんな方々に、ぜひ挑戦してもらいたいアイテムです。

稲田悠人 / anthem chill ショップマネージャー
祐天寺駅から徒歩5分ほどの「もつ焼きばん」の2階にある隠れ家的ショップ「アンサムチル(anthem chill)」。“ココならでは”の個性際立つセレクトを武器に、デザイナーやスタイリスト、美容師といった業界人からアーティスト、芸能人まで感度の高い人々から支持を集める同店でショップマネージャーを務める傍ら、モデルとしても活動中。
インスタグラム:@anthem_chill

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