連載【アフロジャパニーズブルース。〜奇才デザイナーの世界物見遊山〜】Vol.11 アフリカいちの物価高!? 交差する文化と多様性の国、ガボン。

ブラックカルチャーに魅了され、その情熱を〈ラムロフ（Lamrof）〉というブランド、そしてアフリカンジュエリーレーベル「AFLOGICAL JEWELRYS」へ惜しみなく注ぎ込むファッションデザイナー・シャーリーこと坂本大輔氏。

さらに近年では、以前より運営していたアメリカのミッドセンチュリー期のアイテムを中心にした雑貨レーベル「Aflogical Antiques」もアフリカ雑貨をメインに方向転換させるなど、さまざまな角度から自身が愛するブラックカルチャーを表現しています。

“アフロ〇〇”とは、アフリカ由来の、という言葉。そういう意味では坂本氏は、日本人でありながらアフリカにルーツを持つ“アフロジャパニーズ”というわけです。

この連載では、坂本氏が実際にアフリカを中心とする世界各国を放浪するなかで見てきたヒト・モノ・コトを彼のフィルターを通してご紹介。彼の目に映るブラックカルチャーとは、そしてそれをどのようにプロダクトに落とし込んでいるのか、ありのままの坂本氏と彼が魅了されたブラックカルチャーのリアルを、実際の写真と坂本氏の生の声でお届けします。

Photo_Sha-Le（Daisuke Sakamoto）
Edit_Naoya Tsuneshige

やっかいな検問所とイミグレ。

カメルーンでの充実した買い付けを終え、とくに休息することもなく坂本氏が次に向かったのは、中央アフリカの大西洋沿岸にある国・ガボン。カメルーンの首都・ヤウンデからは乗合タクシーで移動。アンバムという街を経由しつつ、カメルーン・ギニア・ガボンという3つの国の国境が交差するエリア、キヨシへ5時間かけて到着したようです。

「陸路での国境越えということでなんとなく想定はしていたんですが、案の定、キヨシに着くまでの間に多くの検問所があって、パスポート確認のために少なくとも5回はバスを降ろされました。で、その都度取られる手数料チップという名の賄賂。もちろん面倒だし嫌なんですけど、まあ日本円で300円〜1,200円くらいなので、ゴネて変に時間を取られるくらいならサクッと払っちゃいます。これもアフリカあるあるですね」

「そんなアフリカあるあるで言うと、数年前に訪れたセネガルとガンビアの国境でもこんなひどいことがありました。悪徳警官による軟禁です（笑）。本当にめちゃくちゃな言い掛かりで詰め寄られ、その時間なんと8時間。その間ずっと金を出せと言ってくるんです。セネガルの日本大使館に助けを求めたんですけど、回答は『賄賂を渡して解放してもらってください』でした」

セネガルとガンビアの国境を船で超える際のワンシーン。

「そのときは最終的に日本円で20,000円を払って解決。理不尽だと思うし理解もできないけど、この旅を、この仕事を選んだからには避けて通れないし、慣れるしかない。怒ったりテンパったりすると余計悪い方向へ向かってしまうので、冷静に笑顔で、警察の懐に上手に入る事が何よりのコツだったりしますね」

とはいえ事件に発展するケースもありそうなので、みなさんがアフリカにいく際はくれぐれもお気をつけて。そんなこんなでキヨシから国境を越えた先のガボンの街・ビタムを目指した坂本氏。選んだ移動手段は個人タクシーだったようです。

「イミグレ（入国審査）でのネゴシエーションとかを全部やってくれるとか言うもんだから、そのおっちゃんの言葉を信じて個人タクシーに乗車することにしました」

「キヨシからビタムまでの間、降車させられることおよそ10回。その都度、手数料チップを払いながら進んでいきました。果たして本当に必要なお金だったのか…（笑）。そしていよいよ国境に。2カ国のイミグレが国境のバーを挟んで50m程の距離に位置していて、まずはカメルーンのイミグレ。ここでは警察がぼくの腕のタトゥーを見て『Oh!!! ヤ◯ザ〜♪』なんて茶化してくれたお陰で、終始穏やかなムードで終えることができました」

国境付近にいたエムバペ似のガボン人。

「問題はその次でした。ガボン側では『なんで日本人がこんな所にきたんだ。フランス語は話せないのか。ここはガボンだぞ！』という感じでずっと高圧的な態度で詰められました。ようやく個タクのおっちゃんの出番。かなり頑張って間を取り持ってくれて、どうにか無事に入国することができました」

この日は国境で想像以上に時間がかかってしまったため、早めの就寝にしたという坂本氏。監獄のようだったと語るホテルでまったり（？）休み、翌朝6時発のバスで首都・リーブルビルに向かうことにしたようです。

ガボンは都会的!?

ようやくこの日からガボンを散策…、と思いきや、まだまだ大移動が待っていたようです。

「あまり眠れず、朝5時半にはバス乗り場へ。するとそこにはすでに大人数が待機していました。なんだか悪い予感がしたのですが、まさに的中」

「超パンパンの状態でバスは出発し、ぼくは屈強なおじさんに挟まれる形で補助席に着席。そして道がやばい。全く整備されていない山道…しかもそれを15時間。修行のような時間でした」

途中で事故にも遭遇。

結局、首都・リーブルビルに到着したころには22時を回っていたようで、この日も移動だけで終わってしまった坂本氏。翌日に期待です。

「バスで押し潰されそうになりながらも、隣のおじさんにしっかりとリーブルビルのことを聞いておいたおかげで、この日行くべき場所は明確でした。まずはアンティークマスク、そしてジュエリーのディーラーが集まるとされるエリアへ」

「ガボンにあるアンティークマスクは、基本的にガボン独自のものでした。詳しく話を聞いてみると、エリアによってガボン国内でも数種類の部族がいて、それぞれの部族でスタイルが異なるらしい。それがマスクにも表れていておもしろかったですね」

ガボンはアフリカのなかでも最も物価が高いと言われています。石油、マンガン、鉄等の鉱物資源及び良質の森林資源に恵まれ、2010年においてはGDPの46.4％を石油産業が占め、アフリカ諸国中、最も所得水準の高い国のひとつに。そんなガボンの街並みについて坂本氏はこのように話してくれました。

「物価が高いということは、国として安定している証拠でもあります。それがやはり街並みにも表れていました。公共の交通機関など、凄く整備されていて、信号機に関しては日本でも見た事ないような秒数が表示される誰もが見やすい大きなハイテクな電飾パネルが採用されていたり、街灯も至る所にあって夜でも明るかったです。つい先日までカメルーンの貧困問題を直近に見ていたので、なおさら整っている街並みに驚きました」

「ちなみにガボンの美術館はこんな感じ」

つい先日までいたカメルーンと比較して、もうひとつ異なる点があると語る坂本氏。それは暮らしている人種についてでした。

「ガボンには多種多様な人種のひとが暮らしていました。カメルーンでは一切いなかった光景だし、アフリカ全土を通してみてもかなり珍しいレベルです。その点も含めて、ガボンの文化の独自の発展と治安の良さを痛感した3日感でした。こういうアフリカ内での国の違いを肌で感じ、知ることが本当におもしろい。色々な国を旅する醍醐味です」

「イスタンブールとパリを経由して、次の移動の拠点となるロンドンへ。航空会社のトラブルで、急遽フライト時間が深夜に変更になってしまいましたが、まあこんなのも慣れっこです」

「ガボンは陸路での入国ということもあって思ったよりも時間が取られ、予定より滞在が短くなってしまったのが残念でしたが、それでも密度の高い時間を過ごせたのかなと思っています。発展していながらも独自の伝統的な文化が残る、過ごしやすさアフリカトップクラスのとても素晴らしい国でした。次は飛行機で来たいです（笑）」