デイヴィッド・マン演じるデニス・ウィーバーがタンクローリーのドライバーに執拗に追われる『激突!』(1971年公開)はスティーヴン・スピルバーグ監督の名を世界に知らしめた映画だ。
ドライバーは最初から最後までその姿を現さない――画面に映し出されたのは、追い越しを誘う二の腕やカウボーイブーツばかりだ。そんな演出もあって、タンクローリーがまるでひとつの生き物のように思えてきて、いま観ても背筋に冷たいものが走る。
追っ手から逃れようとアクセルを踏むデイヴィッドが履いていた靴がゴアチャッカブーツだった。当時はイタリアのタニノ・クリスティもつくっていたそうで、アメリカに限らずポピュラーなデザインだったようだ。
ゴアチャッカブーツは甲部の裏にゴムを当てたブーティで、またの名をアンクルペコスという。いわれてみればなるほど、アッパー・パターンはペコスブーツのそれだ。
いまとなっては実際のところは藪の中だが、〈オールデン(ALDEN)〉でも古くからラインナップしてきた、知る人ぞ知る名作である。
N5706
¥177,100
新作はこれをオーセンティックを地で行くバリーラストに乗せ、レギュラーウェルト&シングルオイルドレザーソールで仕上げた。アッパーは〈オールデン〉のアイコンともいうべき、スナッフカラーで染めたスエード。
これぞアメリカントラッドな面構えであり、ぼくらがワードローブに加えてしかるべき一足である。
その靴はローファー代わりに履けて、足元に新鮮な印象をもたらす。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa

