1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
新たにショップがすべて入れ替わり、迎えた16シーズン目! 1巡目のラストを飾る第124回目は、高円寺の人気店「ヒムセルフ(HIMSELF)」のYUKIさんが、3度目の登場! 今回は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
YUKI / HIMSELF ディレクター
Vol.124_ポロ ラルフ ローレンのドリズラージャケット
ー「ヒムセルフ(HIMSELF)」としてはシーズン8以来ですが、シーズン15で姉妹店「クリップ(KLIPP)」としてご登場いただきました。こと“ニュー・ヴィンテージ”という視点において、お客さんが求めているモノに変化ってあったりしますか?
その時々で流行りのブランドやアイテムの推移はありますが、大きな変化はないように感じます。ただ全体的に“オーセンティックなアイテムに改めて注目している”若い世代は増えているかもしれません。
ーオーセンティックなアイテムですか。たとえばどんなモノが?
ブランドで挙げるならば〈パタゴニア(patagonia)〉なんかそうですよね。古着の世界ではド定番ですが、お店ごとにピックするアイテムが全然違ったりしますし、選択肢が豊富にあって各々のショップの色が出せるようなブランドはおもしろいと思います。あとはこれも王道中の王道ですが、〈ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉。その中でもドリズラージャケットがズバ抜けてウチでは人気です。
ー現行でもリリースされていますし、定番アイテムの筆頭株ですよね。
どこの古着屋でも1着は置いていますよね。ウチにも東京以外の遠方からこれを狙って来店されるお客さんがいらっしゃいます。ウチでは2ヶ月に1度ルックの制作をしていますが、そこでもずっと使い続けてきているので、“格好いいスタイルを作れるアイテム”としてようやく浸透してきたのかなって。
ー今回、何着かご用意いただきました。パッと見はカラーリング以外どれも同じに見えます。
ちょっとした部分なんですが、裏地が付いていたり、背面にアクションプリーツが施されていたり、脇下にベンチレーションを備えていたりとディテールに違いがあったりします。しかも“年代ごとの変化”ではなく同年代でもバリエーションが見つかるのが、〈ポロ ラルフ ローレン〉のおもしろい所。
ーいちばんベーシックな形はコレですか?
はい。裾と袖口にゴムの絞りが入っていて、フィット調整のアジャスター、脇下のベンチレーションも無いシンプルなデザイン。シルエットは身幅があって短丈。アームホールも太いので着用してフロントジップを閉じると、丸っこくなって可愛いんです。
ポロ ラルフ ローレンのドリズラージャケット ¥27,500円(ヒムセルフ)
ー昨今アメトラ復権の空気感もあるし、良い雰囲気ですよね。カラバリに関してはどんな感じでしょうか?
定番はカーキやベージュ系、ブラック、ネイビー。それに加え、シーズンカラーも展開されるので、探してみると、なかなかに奥が深い。だって、ブルーやイエローでもちょっとしたトーン違いだったりで何種類も存在しているんですよ。生産国もアメリカからユーロ、さらに香港、中国などのアジア生産に移行し、最近は韓国企画モノがよく見つかります。
ー生産国によって違いってあるんですか?
デザイン自体は大きく変わりませんが、サイズ表記やちょっとしたディテールの違いはありますね。あと80’sの古いモデルでは、同じコットンでも生地の風合いが結構違います。90’s途中まではカサッとした軽いタッチでしたが、以降はちょっとフワモチッとしたタッチに。着込んでパッカリングやフェードなどを楽しみたい方には前者が人気です。他にもピーチスキンっぽい生地やポリ混のツルッとした生地、レザーもあったりします。これらはキレイめに着こなしたい方々の需要があります。
ー裏地付きは、特にアメトラ感があって良いですね。
チェック柄裏地が付くモデルは、袖口がカフスになっていたり、ジップの引き手がレザーだったりと基本的にワンランク上の仕様。すべからく可愛くてメッチャ人気です。同じように人気なのがコーディロイ生地を採用したユーロ企画モノ。こちらも入荷したらすぐに旅立っていきます。
ポロ ラルフ ローレンのドリズラージャケット ¥27,500円(ヒムセルフ)
ーこういった裏地がチェック柄のドリズラージャケットって、90’sのストリートでは東海岸系B-BOYに人気でしたよね、みんなオーバーサイズのドリズラージャケットにニット、ボトムスはバギーデニムで、さらにハンチングを合わせたりしていました。いまだと「ヒムセルフ」的にはどんな着こなしを提案していますか?
懐かしいですね。ウチだとボトムスの基本はスラックス。足元はローファーかスニーカーで、トップスはシャツ×ニットのレイヤードかクルーネックのスウェット。ストリートの匂いはうっすら残しつつ、キレイめのスタイリングが良いんじゃないでしょうか。最近までドリズラージャケット自体、着ている若い世代が少なかったので新鮮に映っているのかなと。
ー金額的にも手が出しやすいし、定番だと思っていたので意外に感じます。
定番であることは間違いないのですが、同じく定番の〈カーハート(Carhartt)〉なんかと同じように「みんな持っているし」という、なんとなくのイメージ的な理由から敬遠する方がいるのは事実です。しかしながら、現在のファッションシーンの流れにも合致していますし、作りやシルエットなどモノ自体が秀逸。昨今のトレンド潮流となっているアメリカントラッドを、「ヒムセルフ」流に表現するのにも欠かせない存在といえます。
ー特にオススメなのはどの辺ですか?
カラーリングでいえば、ベージュ系は最近のトレンドではないので一旦お休み(笑)。逆に人気なのが同じく定番のネイビー、さらにオリーブやボルドー。あとはしっかり着込まれてフェードしたイエローやピンクなどの色モノも速攻で売れてしまいます。
ポロ ラルフ ローレンのドリズラージャケット ¥27,500円(ヒムセルフ)
ポロ ラルフ ローレンのドリズラージャケット ¥27,500円(ヒムセルフ)
ここにラルフのキャップ(フロントにアイコンがワンポイント刺繍されたアレ)を合わせたり、ちょっとしたブローチやバッジを付けたりしてカスタムするのも楽しいですよ。
「定番だから周囲と被っちゃいそう」なんて思っている方は、ぜひ一度お試しください。ドリズラーもキャップもともに定番だからこそ、モノが主張しすぎることなく着こなしに馴染みますし、こういった自分だけのカスタムで“その人らしさ”を演出することできるので、ファッションの楽しみもより広がりますよ。
YUKI/ HIMSELF ディレクター
“お客自身(=HIMSELF)が店を介して「古着の行方をどう担うのか」楽しんでもらうとともに、店自体(=HIMSELF)も構築されていく楽しさを味わう”というコンセプトを掲げる「ヒムセルフ(HIMSELF)」のディレクター。姉妹店である三軒茶屋「クリップ(KLIPP)」、下北沢「ベイブ ストア(BABE Store)」も手掛ける。
インスタグラム:@himself__koenji
公式HP

