連載【アフロジャパニーズブルース。〜奇才デザイナーの世界物見遊山〜】番外編 知られざるアフリカの現地飯と、色彩豊かなサッカーユニフォーム。

ブラックカルチャーに魅了され、その情熱を〈ラムロフ（Lamrof）〉というブランド、そしてアフリカンジュエリーレーベル「AFLOGICAL JEWELRYS」へ惜しみなく注ぎ込むファッションデザイナー・シャーリーこと坂本大輔氏。

さらに近年では、以前より運営していたアメリカのミッドセンチュリー期のアイテムを中心にした雑貨レーベル「Aflogical Antiques」もアフリカ雑貨をメインに方向転換させるなど、さまざまな角度から自身が愛するブラックカルチャーを表現しています。

“アフロ〇〇”とは、アフリカ由来の、という言葉。そういう意味では坂本氏は、日本人でありながらアフリカにルーツを持つ“アフロジャパニーズ”というわけです。

この連載では、坂本氏が実際にアフリカを中心とする世界各国を放浪するなかで見てきたヒト・モノ・コトを彼のフィルターを通してご紹介。彼の目に映るブラックカルチャーとは、そしてそれをどのようにプロダクトに落とし込んでいるのか、ありのままの坂本氏と彼が魅了されたブラックカルチャーのリアルを、実際の写真と坂本氏の生の声でお届けします。

Photo_Sha-Le（Daisuke Sakamoto）
Edit_Naoya Tsuneshige

現地のひとと囲む飯。

1年間を通してお送りしてきた“アフロジャパニーズブルース”。今月は番外編として、坂本氏自身も周囲からよく聞かれるというアフリカでの食生活のことと、訪れた国で欠かさず購入しているという、フットボールのナショナルチームのユニフォームをご紹介。

アフリカの食事というと、どういうものを想像しますか？ 豆やトウモロコシなどの穀物？ タロイモにキャッサバ？ はたまたカエルやトカゲ…？

宗教やその国々の文化によっても異なりますが、基本的には日本と同じく主菜は肉か魚、そこに野菜がついてくるというバランスなのだそう。さまざまなものを食べた感想としては「おいしいものはおいしいし、まずいものはまずい、そして基本辛い」と坂本氏。ちなみに食べ方は、素手（右手）で食べるというのが現地の宗教的なルールです。

とはいえなかなか想像はしにくいところ…。

ここからは実際に彼が食べた料理の写真を、本人の感想込みでお届けします。

セネガル / チェブジェン
★★★★☆
セネガルの伝統的な料理。長時間煮込んだ野菜と魚（もしくは肉）と、釜で炊いた米をつかったチャーハン的なもの。そこに香辛料を混ぜて食べる。長時間煮込んでいるため、すべての食材に味がしっかりと染み込んでいて、とにかく濃いが食べやすくおいしい。日本人にも刺さる味。ちなみに、これが坂本氏にとってのNo.1アフリカローカルフードなのだとか。

セネガル / ブレドゥ
★★★☆☆
日本でいうところのシチュー。羊肉とジャガイモ、そこに大量の香辛料を使ってつくられている。これをフランスパン（アフリカでは主食のひとつとしてよく食べられている）につけて食べるのだが、とにかく辛いそう。現地で栽培されている「LIVE PEPPER PLANTS」がふんだんに使われていて、辛いもの好きも悶絶する辛さ。

コートジボワール / ポークグリティ
★★★★★
露店飯。炭火で焼かれたスパイシーな味付けの豚肉をその場で骨からカット、手売りしてもらう。オイルに浸かったトマトとオニオンがつき、香辛料は別皿で渡される。それをアチャケ（コートジボワールの国民食で、キャッサバをすり潰し、発酵させて粒状にしたもの）と合わせて食べるのが通常の食べ方。タコス的な見え方だが、白米と豚肉を食べている感覚に近いという。坂本氏の好物のひとつ。

コートジボワール / プレブラジー
★★★☆☆
およそ1時間かけて、鶏肉一羽を炭火焼き。そこにカレー粉などのスパイスで味付けをした露店飯。これにもオイル漬けのオニオンやトマト、きゅうりなどが付く。ジャマイカのジャークチキンに似ているそうで、変な癖のない、食欲をそそる料理。

ギニア / リグラ
★★★★☆
鶏肉（もしくは魚）といっしょに根菜を長時間煮込み、セネガルのチェブジェンよりスパイシーさが薄まった、マイルドな口当たりのチャーハン的なもの。これは日本人全員が好きだといっても過言ではないと坂本氏は語る。とにかくおいしく、ライムで味変がおすすめとのこと。

ギニア / パタタリフ
★★★☆☆
ギニアの家庭料理。米の上に謎の野菜をペースト状にしたものが乗っている。スパイシーさは無いが、塩味が強く米が進む味。見た目から味が想像できないし、食べても何か分からなかった料理なのだそう。だけどおいしい。

ベナン / ドギ
★☆☆☆☆
羊のさまざまな臓器を酸味のあるスープで煮込んだスープ。それを西アフリカの主食・フフ（キャッサバやヤムイモ、トウモロコシなどのイモ類や穀物を潰して練り上げた、お餅のような食感の伝統的な主食）といっしょに食べる。これがとにかく不味かったそう。スープもフフも嫌な酸味で、まったく口にあわなかったらしい。臓器も雑にカットされているため、見た目的にも抵抗が強いひとは多いかも。

トーゴ / アディメディシ＆アコメ
★★★★☆
トーゴの伝統的な料理。オクラと魚の白身を香辛料とともに煮込んだものと、羊肉を酸味のあるスープで煮込んだものを、米（もしくはフフ）と絡めて食べるカレー的なもの。程よい塩味で辛すぎず、コクがあって食べやすい味。

アフリカでは大皿で、そして家族全員で囲んで食べるのが基本的なスタイル。ここでは雇われている警備員や家政婦も必ず同席し、全員が揃うまで食事を始めないというのが現地のルール。

レストランでひとりで食事をしていると、「なんであいつはひとりなんだ」という目で見られたそう。それくらい、だれかと食卓を囲むということが当たり前の文化として根付いているのです。

さらに、主食も副菜も、すべての料理に長い時間をかけてつくっているのが印象的だったそう。そして家庭料理もレストランも、料理をするのはほぼ100%が女性。そこに対してだれも疑問を感じていなく、そこに対する違和感を強く感じたみたいです。

これはアフリカは男性優位の社会というのがまだあり、アフリカのジェンダー問題が色濃く現れていたと坂本氏は話してくれました。

ここではアフリカのローカルフードのみを紹介しましたが、各国にはチャイニーズレストランや、ファストフード店も存在しているらしいので、上で紹介した食べ物が口に合わなさそうというひとも、安心してアフリカに足を運んでみてください。

ただ坂本氏曰く「結局日本食が世界でいちばん美味い！」ということでした（笑）。

アフリカのユニフォームは特にカラフル。

そもそも坂本氏がブラックカルチャーに興味を持ったきっかけは、2002年に開催された日韓ワールドカップ。10歳の頃に見たアフリカ各国代表のユニフォームの色鮮やかさや個性的なヘアスタイル、身体能力の高さに魅了されたことが、いまの活動にも繋がっていると話してくれました。

いまでも毎週末にはプレミアリーグを欠かさず観戦し、ファッション業界の仲間を集めてフットサルを主宰し定期的に大会に参加するなど、フットボールは彼を形成するアイデンティティのひとつ。

このアフリカ旅のなかで彼がアフリカ各国のユニフォームをコレクションすることは、必然と言えるかもしれません。そんな日本では出回らない、現地でしか買えないコレクションの一部を紹介してもらいました。

ガーナ代表
3rdユニフォーム

ガーナ代表
ウォームアップ用ユニフォーム

エジプト代表
1stユニフォーム

トーゴ代表
1stユニフォーム

セネガル代表
1stユニフォーム

セネガル代表
3rdユニフォーム

ガンビア代表
1stユニフォーム

カメルーン代表
2ndユニフォーム

ギニア代表
1stユニフォーム

ガボン代表
2ndユニフォーム

コートジボワール代表
1stユニフォーム

コートジボワール代表
3rdユニフォーム

チュニジア代表
2ndユニフォーム

ベナン代表
1stユニフォーム

ご覧の通り、アフリカ各国の代表ユニフォームは色鮮やかで個性的。現地のサッカー熱もとにかく高く、そこから得るインスピレーションも多いのだそう。

彼の〈ラムロフ〉でのデザイナーとしての一面、そして「AFLOGICAL JEWELRYS / ANTIQUES」でのバイヤーとしての一面、それらの活動の源になっているのはブラックカルチャーであり、幼い頃に魅了されたフットボールの世界。

この異常なまでにニッチなユニフォームのコレクションにも、それは現れていると言えるでしょう。

坂本氏が実際に現地で観戦した、セネガル VS モーリタニアの国際試合。

次回の“アフロジャパニーズブルース”はモロッコ編。2026年は北中米ワールドカップも開催されます。日本はもちろんですが、これを機にアフリカ勢の活躍に注目してみるのもおもしろいかもしれません。