深いネイビーのプルオーバーシャツは左胸のあたりに古きよき工芸品を思わせる刺繍が施されていた。
身体を包み込むようなシルエット、あるいは身体の境界線を曖昧にするオーガンザのトップス。〈ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)〉らしさにあふれた25SSコレクションのなかでもひときわ輝いて見えたのが刺繍という技法だった。
大胆だけれど、繊細――カラー、パターン、テクスチャーでメンズウェアを更新し続けてきたドリス・ヴァン・ノッテンの本領発揮とでもいうべきあしらいである。
25SSはたデザイナー本人が手がけるラストコレクションとなる。フィナーレを飾るのにまたとない一着といえるだろう。
ちなみに前立ては背面の方についている。後ろ前というわけではない。このデザインワークもまた、ドリス・ヴァン・ノッテンらしい。
「ドリス ヴァン ノッテン 青山店」が今年4月、リニューアルオープンを果たした。青山に足を運ぶ機会があれば、なにはなくともこのシャツをチェックしてほしい。
Pullover Shirt ¥203,500
Photo_Kazuma Yamano
Text_Kei Takegawa