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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.112 “匿名性=自由に楽しめる” パタゴニアのマイナーボトムス。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

14シーズン目も今回がラスト! 最後を飾る第112回目は「テンポ(tempo)」のブンヤさん! どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


ブンヤ / tempo オーナー
Vol.112_パタゴニアのナイロンパンツ&カーゴパンツ

ー前回はブンヤさんの好きなブランドである〈パタゴニア(Patagonia)〉のマイナーアウターに焦点を当てて紹介していただきました。さて、今回は?

今回もブランドは〈パタゴニア〉ですが、前回がトップスだったのでボトムスで行きたいと思います。よく知られているところでは「スタンドアップ ショーツ」や「バギーズ ショーツ」「リバー ショーツ」といった人気モデルもありますが、そういった一部のモデル以外はそこまで高くなっていないので、ニュー・ヴィンテージとして取り挙げるにはちょうどイイかなと。

ーいま、挙げていただいたのはどれもショーツですが、フルレングスで定番人気というと、どんなモデルがあるんでしょうか?

例えば…「ストレート フィット ジーンズ」や「ボンバチャ」、「バギーズ パンツ」に「ベンガ ロック ニッカーズ」、それにGi Pnatsと書いて「ギ パンツ」がファンも多いモデルと言えます。ボンバチャ以外は定番のロングセラーモデルとして、いまも作り続けられています。

ーなるほど。となると…この黄色いパンツもそういった定番人気モデルというワケですね。

パタゴニアのナイロンパンツ ¥17,600(テンポ)

蛍光イエローの絶妙な色味とタグもちゃんと付いていたので、面白いかなってピックしたコチラは、時期的には80年代頃。同じボタンを使用したトップスが存在しているのですが、そちらが「バギーズプルオーバー」というモデルに酷似していることから考えて、先述の「バギーズ パンツ」の近縁モデルなのではないかなと。素材は…タグに書かれていて…え〜と…文字が消えかけていて読めませんが(汗)、質感からして多分ナイロンと何かの混紡だと思われます。

ー作りは非常に簡素です。

ウエストはゴム。ヒモを結んでフィット調整をするタイプで、背面右側にあしらわれたフラップ付きバックポケット以外は至ってシンプル。ただフロント左ポケットの中に、なぜかネームタグが。なので一見すると、どこのブランドのモノかも分からないくらい。

ーこのタグって元からですか?

他の場所から移植したわけではありませんが、ステッチの色も違うし、以前のオーナーがカスタムした可能性もゼロではありません。そこを差し引いても、古臭さを感じさせずファッションとして履けそうなルックスだと思いません? ちょっとバギーズやスタンドアップの雰囲気もありますが、それらのアーカイブモデルともまた違っていて、その“何者でもない感じ”が面白いなって。

ー2本目はカーゴパンツ。こちらも負けず劣らずスタンダードなデザインです。

パタゴニアのカーゴパンツ ¥13,200(テンポ)

もう「いたって普通」としか言いようがないですよね(笑)。こちらは2003〜2004年頃のアイテムです。素材は100%ナイロンでトリム部分のみポリアミド。シャリっとした質感も好みですが、ポケットがリベットではなく丸型のカンヌキ留めという点もすごく洒落ています。サイドのカーゴパケットはジップ仕様で、やや傾斜角をつけることで手も入れやすく、中身にアプローチしやすくなっています。

ーカーゴパンツはミリタリーとワークに大別できますが、それでいえばコチラは?

タクティカルパンツのような雰囲気も見られますが、特定のミリタリーパンツのサンプリングではなさそう。何となくアウトドアの文脈なのかなと思っています。意外とこの手のカーゴパンツって微妙に細部を変えつつ出続けているんですよ。今回は単純に、“ナイロン素材でカーゴ=使いやすくて調子良さそう”ということでチョイスしました。

ーまた色合いも絶妙で。この色って何になるんでしょうね。

〈パタゴニア〉の場合、年代によってカラーネームがタグに入っていたりしますが…え〜と…書いてなかったです(笑)。グレーみのあるオリーブカーキというか、セージグリーンというか、そんなニュアンスでしょうか。今回紹介したモデルは、どちらもネームタグが控えめに配置されていて、デザインも色も匿名性と汎用性が高いというのがポイントです。

ー汎用性という意味では、ブランド同士の食い合わせもあるかと思います。〈パタゴニア〉の場合はどこと合わせるのがブンヤさん的にはオススメですか?

どうですかね。お客さんの中には「アウトドアブランドを1つ着ていたら、他のアウトドアブランドのアイテムは入れない」って人も結構いますが…ぼく個人の意見としては、クライミングという同じ背景を持つ〈グラミチ〉や〈ブラックダイヤモンド〉なんかは違和感なく馴染むんじゃないかと。そういう意味でも、パッと見でどこのブランドのものなのか分からない匿名性のあるマイナーボトムスは、〈パタゴニア〉をファッションとして自由に楽しむのにも打ってつけだと思います。

ブンヤ / tempo オーナー
「原宿シカゴ(HARAJUKU CHICAGO)」下北沢店から古着屋としてのキャリアをスタート。その後、旅に出たり他の古着屋で働いたりと紆余曲折を経て2016年、明大前に自身の古着屋「テンポ(tempo)」をオープンし、2022年に下高井戸に移転。90年代〜2000年代のグッドレギュラーを、ちょうどよいプライスで手に入れたければココに行くべし。
インスタグラム:@tempo.2016

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