ファンタジーの対義語って、何だろう？ - 青雲、それは君が見た光。（川田十夢）

ファンタジー（英: fantasy）とは、魔法やその他の超自然的・幻想的・空想的な事物をプロット・主題・設定などの主要な要素とした作品が属するジャンルである。 wikipedia より

冒頭に触れたファンタジー営業部という作品は、前田建設というガチな建設会社（いわゆるゼネコン）が、物語に存在する大規模な建造物の見積書をガチで作るという、専門用語とユーモアに溢れた新しいタイプの物語である。前田建設は実際に実在するし、大規模な公共事業をたくさん手掛けているし、ダムから商業施設まで幅広い実績がある。だから、マジンガーZの地下格納庫を設計しても、銀河鉄道999の高架橋工事を手掛けても、機動戦士ガンダムの巨大基地を作っても、おかしくない。見積項目ひとつ出すにしても、専門家による技術の解説と論拠があるから、合計金額にも現実味がある。ファンタジー営業部といいながら、全然ファンタジーではない。地に足着いている。いやー、おもしろい。でも、わからなくなった。ファンタジーって何だろう。

わからなくなるということは、方向を見失うということ。北がどっちかわからなくても、南がどっちだかわかれば、方角から答えを逆算することができる。ファンタジーの対義語って、何だろう。サイエンスだろうか。サイエンスの中にだって、ファンタジーは存在するのではないか。反対語・対照語辞典を開いた。ファンタジーの対義語は存在しなかった。そういえば、かのSF作家。アーサー・C・クラークは、「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」と書いた。わからない。もはや、北も南どころか、右も左もわからない。どこにも答えは書いていないし、方向を示してくれない。

確かなことがひとつだけある。時代の皮膚感覚によって、ファンタジーの定義は移ろいやすいということだ。全くの絵空事を描いたとことで、人はそこに感情移入ができない。そこにどこか、現実と相通ずる快楽や痛みが伴わなければならない。あ、いま書いてるうちに、仮説が浮かんだ。ファンタジーの対義語は、グロテスクではないか。内側にあるものを剥き出しにすることがグロテスクだと、僕はいつだか定義した。その対義語がファンタジーだとしたら、外側にあるものを内側に箱詰めすることがファンタジーだ。内側のルールや常識は、毎日毎秒単位で更新されている。グロテスクの定義も、常にわかりやすい形で更新され続けている。これをひとつの基準値として、ファンタジーを捉え直し続けるのは、虚と実をつなぐ装置を発明する僕からすると、とても重要なことだ。

4月4日（木）に発売される週刊モーニングで、AR三兄弟の新作が大々的に発表される。これは、僕にとっての最先端のファンタジーであるし、グロテスクであるし、それらをすべて反映させた拡張現実である。今日は、嘘ばかり取沙汰される。一人くらい、本当のことを口走らないと、バランスが悪い。資本主義的な意味で。