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Extreme対談 vol. 2 フランク・リーダー×リュウ・イタダニ(後編)

2012.03.09

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「ここはもう何がしたいか分かっている人のための街だ」って言われた。

―フランクさんはもう10年以上ベルリンに住んでいる訳ですが、来たばかりの当時と比較して、どんな変化がありますか?

フランク:ここ数年で、世界中から人を引き寄せる街になったということでしょうか。僕が来たばかりの頃は、そこまで注目を集めていませんでした。自分自身について言えば、よりプロフェッショナルになったと思いますが、それはベルリンにいたからという訳ではありません。どこにいたとしても同じだと思いますが、やはり駆け出しの頃は生産者や工場の人たちも僕が何者で何をしようとしているのか分かりませんでしたし、実際ミスをしたこともありますが、2~3シーズン一緒にやると、理解してくれるようになります。僕が何を求めているのか分かってくれて、出来上がるものの質も向上してきます。ですから、同じ品質を維持しながら、もっと多くの服を作ることが出来る。双方にとって学習期間だったということですね。僕の顧客は要求が高いですが、それが僕にとっての原動力になります。

―では、以前よりもより満足の得られる仕事ができている、ハッピーだと感じられますか?

フランク:うーん、それはどうでしょう。幸せですけどね、でもベルリンはあまりハッピーになりすぎてはいけない街だとも思います。仕事に関しても同じです。あまり満足してはいけません。常に不満な部分がないと、それ以上自分を前にプッシュすることができません。

―リュウさんはまだ住み始めて1年半なのでそれほど大きな変化はないかと思いますが、住んでみてから街の印象が変わったりしましたか?

リュウ:僕が引っ越して来たばかりのときに、友達にこう言われたんです。「ベルリンはニューヨークやロンドンのように、自分のやりたいことを探しに来る街ではない、ここはもう何がしたいか分かっている人のための街だ」と。確かにスペースがあって時間もありますから、本当にやりたいことに集中できるところだと思います。僕はそれを実感していますね。僕は自分が何をやりたいか、何が出来るか分かっているので。そういう意味でとてもいい街だと思います。もちろん、人によって受け止め方は様々ですけどね。自分探しをしに来る人もいると思いますし。

僕が東京を離れた理由のひとつは、東京でリラックスしすぎていたから。
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―それには同意できる気がします。何を探しているのかも分からないような人には、落とし穴がいっぱいある(笑)。本当に自分を見失いかねない街でもあると思います。

フランク:でも人間って、誰でも一生自分を捜し続けているものではないですか?

―そういう側面もありますが、少なくともお二人は自分のやりたいことが明確にあって、それを実行に移していますよね?

フランク:そうですかね? 僕はそこまで確信を持っていないですよ。

リュウ:今のところは、じゃない?

フランク:これを一生続けていくと腹を括っているわけではないですからね。でも、基本的な路線は定まっているかもしれません。

リュウ:僕が東京を離れた理由のひとつというのが、東京でリラックスしすぎていたからなんです。自分の気に入ったアトリエもあって、ギャラリーもあって、住み慣れた近所があって、お気に入りのレストランがあっていい友達がいて...と、あまりにその環境の居心地が良くなってしまって、逆に危機感を覚えたんです。変化が必要だと感じた。

フランク:ハングリーではなくなってしまうということじゃないの?

リュウ:うーん、ハングリーというのともちょっと違うな。もうハングリーにはなりたくないです(笑)。

フランク:ホント!? 僕はいつでもハングリーでいたいけどな(笑)。

リュウ:僕らなんかは中流階級で育ってきて、本当にお腹を空かせてその日の夕食の心配をしたことがない世代ですから。本当の意味でハングリーになれるとは思えないなあ。

フランク:でも、世界はいつどうなるか分からないからね、今後そういうことになる可能性はいくらでもあると思うな。僕の父なんかは、戦後直後にあまりにお腹が空いて畑のイモを盗んでいたらしいから。全て破壊されてしまって、全てゼロからやり直さなければならなかった。それがたったの一世代前なんだから。

リュウ:確かにそうかもしれないね...。

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