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ティム・バーバー"僕は僕にしかできないことをやっている" 聞き手:菅付雅信

2012.12.13

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「ユニークなことをやっているという自負が、自分にはある」。

-少し難しい質問かもしれませんが、もしあなたがそのどちらかの役割を優先する場合、それはどちらになりますか?

ティム: フォトグラファーとしての活動と答えるかもしれないけど、そこに優先順位を持つ必要なんてないんだ。両方すればいいんだけ。

-とはいえ、あなたは「Tinyvices」にかなりの時間を割いている。それは自分自身にミッションを課しているように想像してしまうのですが、「Tinyvices」とはあなたにとって一体何でしょうか?

ティム: サイトを運営し続けるというのは、僕にとって個人的で、どこか自己満足的な部分さえあると思ってる。自分を満たしてくれるし、想像力をかき立ててもくれる。写真やアートを絶えず観察しているようなものだよ。以前は写真やアートに関する情報を、他のソースから手に入れることができなかった。おそらく、少し風変わりなものやアンダーグラウンドなもの、人目にあまりつかないものは、本や雑誌、美術館に行って見つかるものじゃないからね。それがこのサイトを作った動機のひとつでもあるんだ。僕がこのサイトを始めてから、世の中は少し変わったと思ってる。今では機能的なサイトになったし、アクセスだってすごく増えた。僕はメインストリームに興味はなくて、自分自身で見定めたものだけを欲しているんだ。世にある本や雑誌の情報だけじゃ満足できない。僕自身が情報や、新しいアーティストを見つけていきたい。「Tinyvices」は興味や発見を与えてくれるものなんだよ。

-あなたのような活動を続けているフォトグラファーは稀ですよね。誰かお手本にしている人がいるのでしょうか?

ティム: そんなのはいないよ。なぜなら、僕は僕にしかできないことをやっているわけだから。どんなアートフォトグラファーでもコマーシャルの仕事はやっているけど、「Tinyvices」や編集、展覧会のキュレーションとか、そういうユニークなことをやっているという自負が、自分にはあるから。

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-アートフォトとコマーシャルフォトについて話が出たので聞きたいのですが、例えば『ヴォーグ』など、特に大手のファッション誌には若く有望なフォトグラファーを起用せず、大御所フォトグラファーを選ぶ傾向が強くありますよね。最近ではこの傾向がより顕著になっているようにも思えます。

ティム: ある意味では理にかなっていると思うよ。ファッション広告は大きなお金が絡んでくるからね。クリエイティブ・エージェンシーや広告会社は、結局はクライアントが満足いくような、安全なところに落ち着くんだ。それはすごく退屈なことだと思うけど。

-つまらないゲームになってきてますよね。

ティム: ただひとつ言いたいのは、コミッションワークと、パーソナルな作品の撮影はまったく別物であるということ。コマーシャルな仕事はあまりオープンな表現で作れないことは少し残念だけど、それはフォトグラファーにとってはある意味で好機とも言えるんだ。僕自身がコマーシャルな仕事をこなすと同時に、若手のフォトグラファーがそのような仕事を得る機会が持てるようサポートもしている。「Tinyvices」とは、まさにそういった側面も持っているんだ。若い才能を発掘し、メインストリームにプロモーションしていくっていう側面を。

-なるほど、よく理解できます。あなたの写真には被写体と非常に近い、親密なセンスがありますが、そういった感覚はどこから湧いてくるのでしょう。

ティム: そうだね。自分でもよく分からないけど、すべては自然に表現されるものだと思う。もし君がフォトグラファーになろうと考えて写真を撮り始めたら、目の前にあることをただひたすら写していくだけなんだよ。君は、君の行いから学んでいくんだ。そしてそれがまた、純粋な領域に戻る。それがまさに僕自身がやろうとしていること。そしてそれは同時に、すごく難しいことでもある。自分を無理強いせず、その瞬間を生きて、時には一息入れる。成功しているフォトグラファーは、みんな彼ら自身の人生を歩んでるよね。日常の経験や感情、すべてを作品に活かしてる。だから難しいことだけど、そのことを忘れないように言い聞かせながらやってるよ。あとは、今回のような時間を掛けたプロジェクトというのは、僕にとってはやりやすいんだ。やることがたくさんあるのに変わりないけど、奇妙なプレッシャーを感じることなく、一日の終わりを気にすることもない。偽りじゃなく、実際の出来事を受け止めながら生きるんだ。

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