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ティム・バーバー"僕は僕にしかできないことをやっている" 聞き手:菅付雅信

2012.12.13

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「写真を撮っている時間が、偽物じゃなく本物だということ」。

-例えば、あなたの作品「Aurel and Donald」(編集部注:アーティストのオーラル・シュミットとザ・ヴァージンズのボーカル、ドナルド・カミングのカップルを撮影したシリーズ)を見た時、僕は素晴らしいと思ったんです。とてもリアリティがあって、ロマンティックでインティメイトだから。あなたが撮影を計画する時、どのようにアイディアを練っていくのかが気になります。頭の中で、フィクションのストーリーを作るのですか?

ティム: んー、そうだね、(ストーリーを作ることが)あるとも言えるし、ないとも言える。「Aurel and Donald」の場合は、ある雑誌のポートレイトを撮影する企画でお願いされたものだった。でもこの10年間で、自分自身ではやったことがないよ。(「Aurel and Donald」について)モデルとなった彼らとの付き合いは長くて、彼らのなれそめはずっと見てきた。結婚して、結婚式を挙げてって。僕は、フォトグラファーの力量っていうのは、どうやって物事と繋がっていくかってことだと思うんだ。そこで、僕は彼らと繋がった。あの親密な関係と、ユニークな繋がり方をしたんだ。だから、あのストーリーは、シンプルなスタンダードのポートレイトで見せたくて。彼女と彼女の夫は、居心地の良い雰囲気の中で、家の中で過ごしたり、愛を交わしたり、コーヒーを淹れたり。ごく普通の日常を送っている。だからあの企画に関して言えば、かなり特定的なアイディアを持っていたと言える。また一方で、まったく何も考えを持たないまま作業を進めることで、方向性を見つけていくっていう場合もあるよ。それは状況による。被写体が裸でいて、彼らの生活の一場面を撮影するっていうのは、普通とは違うアプローチ、シチュエーションだからね。

-先ほども言ったように、その「Aurel and Donald」に限らず、あなたの写真には被写体との近しい関係を感じます。その辺りについては、自分自身では具体的にどう捉えていますか?

ティム: 僕もそう思うよ。写真を撮っている時間が、偽物じゃなく本物だということ。その瞬間と一緒に生きる、と言えばいいのかな。人って、写真を撮る時にポーズをとったり、顔を装うだろ? 硬い表情を崩して、そこを超えた表情を見つけるんだ。その表情が出てきた時、被写体との距離は近くなる。それはまったくの他人であっても同じ。そこに行き着けばポイントを掴める。

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-近年は、ファッションにお金を掛けない、新しい世代の台頭が著しいと思います。特にこの世代は、ラグジュアリーファッションにほとんど興味がない。この状況に対して、フォトグラファーとして何か思うことはありますか?

ティム: そうかもね。でもどうだろう、君の言っていることは、トレンドがラグジュアリーから遠ざかっているということだよね? 僕がニューヨークに住んでいて感じるのは...それぞれの人が、それぞれ違うってことかな。僕はその点で君に賛同できるか分からない。個人的にはラグジュアリーファッションになんて興味を持ったことがないからさ。あとは単にお金の問題なんじゃないかな。お金を持っている人は、相変わらず高いファッションを買い続けているだろうし。そういう人が少なくなっただけじゃない?

-では、ファッションフォトグラファーとして、ラグジュアリーブランドに対する興味はないということでしょうか?

ティム: 個人的にはない。ブランドと関係することはないし、ファンシーなボトムスを持っているわけでもない。そんなの全然興味ない。でも、プロのコマーシャルフォトグラファーとして、ある程度のレベル、つまりそういった物事自体に興味は持っているつもりだよ。それは僕の仕事の一環だから。だって、スタイルが確立されていれば、ブランドやレーベルができることなんて何もないだろ。ライフスタイルや個性が先行して、その人自身のスタイルを作る。そこにはレーベルがある必要性はないんだから。

-今後は、よりアートな作品を撮るのか、それともコマーシャルとパーソナルワークのバランスを取りながら活動するのか、どういう方向を考えてますか?

ティム: 僕はバランスを取りながらやってきたいと思ってる。もしアーティストとしての活動だけでやっていけるなら、そりゃそうしたいけど、それだけで食べていくのはやはり難しい。でも、こうして活動を続けられていること自体、幸せなことだと思うね。

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