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PUNKROCK BELIEVERS 緊急掲載!パンクロックに魅せられた男達

2014.06.02

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国内の人気バンド計19組が出演。しかも、主催は日本を代表するインディー音楽レーベル『PIZZA OF DEATH』だ。6月7日(土)、幕張メッセにて開催される大型パンク&ラウドフェス『SATANIC CARNIVAL'14』の開催を目前に控え、『PIZZA OF DEATH』の社長でありミュージシャンとしても活躍する横山健のインタビューを緊急掲載する。同時に、同フェス出演人気メンバー〝同期〟3名による音楽人生対談も開催。音楽業界の不況が叫ばれる今、進行形のパンクシーンはこのフェスで新たな転換期を迎えるのか。

Photo_Kengo Shimizu[stuh]
Interview&Text_Daishi Ato
Text_Ryosuke Arakane(PAGE4〜5)
Composition_Daichi Sasa
Cooperation_Samurai magazine

振り返ってみれば、ミュージシャン横山健はつねに日本のパンクシーンのど真ん中に立っていた。言わずとしれたパンクバンド「Hi-STANDARD」や本人が「息抜きの場」と数々のインタビューでも語る「BBQ CHICKENS」のギタリストとして、また、ソロバンド名義「Ken Band」のフロントマンとして。そして、インディーズパンクレーベル『PIZZA OF DEATH RECORDS』の社長として、ときには大きな賞賛を受け、ときには罵倒され傷つきながらも、彼はずっと立っていた。今回、大型パンク&ラウドフェス『SATANIC CARNIVAL'14』でトリを務める日本のパンクヒーローに45歳の今、一体何を考えながら音楽や自分自身と対峙しているのか聞いてみた。

「Hi-STANDARD」の3人が、14年ぶりに受けたインタビューはこちら。今一度、今回の記事を読む前に読み返したい。

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「パンクって言われてかっこいいじゃん。俺なんかメロコアだからね(笑)」

-横山さんは「Hi-STANDARD」として活動を開始('91年)してから25年近くもの間、常に日本のパンクシーンの中心にいながら、その栄枯盛衰を見てきたと思いますが、自分の周りのバンドの動きは気にしてましたか?

横山健(以下、横山):気にしてないよ。目には入ってくるけど、周りがこうしたから俺はこうしようとかそういう思考は全然ないね。自分がやりたいことをやるだけよ。

-たとえば、「あいつらがそれをやるなら俺はやらない」など思ったことは?

横山: あんまりない。「Hi-STANDARD」の最初の頃('90年代)は、英語で歌うってことに関してはそういった気持ちはあったかもしれない。少なくとも、全曲英語で歌う、今で言うメロディックパンクのスタイルは俺らの周りにはいなかったからさ。「メロディのあるバンドはもう通用しない」って言われていた時代だからね。みんなラップみたいになっちゃってさ。「Red Hot Chili Peppers」のスタイルがもてはやされた時代だったから。そこに対するカウンターの意識はあったけれども、それ以降は実はそんなにないんだな。どうしても人がやってないことをやりたいっていう気持ちはもしかしたら自分の性根として持ってるかもしれないけども、あんまりそれを第一に考えたことはない。

-'90年代~'00年代初頭にメロディックパンクも大流行して、一時期グッと下火になりましたけど、また最近盛り上がってきていますよね。完全に廃れないのはなんでだと思います?

横山: ひとつのジャンルみたくなってるのかな。でも、メロディックに特化したバンドがまた増えてくるっていう現象に目がいくのはいいことでもあるけども、なんとなくつまんないことでもあるかな。日本ってガラパゴス化してんのかなぁみたいな(笑)。

- 一時期、バカにする意味で「メロコア」って言葉が、使われてました。

横山: いや、俺は今でもそう思ってるよ。メロコアのメロはメロディックのメロじゃなくて、メロドラマのメロだから(笑)。俺らが「Hi-STANDARD」を始めた時には、なかった言葉だから。「Ken Band」も含め、自分たちの音楽をメロコアだなんて思ったこともないし。今でも(メロコアという言葉は)、嫌いだね。

-「誰がメロコアって、俺がメロコアだ!」って以前にライブやインタビューなどで言ってたのは、ただの冗談だったんですね。

横山: 自虐だね。オリジナルパンクの人たちはパンクって言葉に随分振り回されたわけじゃない? 「SEX PISTOLS」にしても「The Clash」にしても、パンクなのかパンクじゃないのかって「どっちでもねーよ」みたいなさ。その気持ちはすごいわかる。ちょっと反体制的なことを音楽に盛り込んでやったらパンクっていうムーブメントになってさ。でも、本人たちは意外とどうでもいいのよ、周りがカテゴライズしたがるだけで...むしろいいじゃん、パンクって言われてかっこいいじゃん。俺なんかメロコアだからね(笑)。

-いやいや、パンクじゃないですか。

横山: そうだよ、パンクだよ。でも、メロコアとか言われてさ、どのツラ下げて45のオジサンがメロコアなわけ?って。

-今はそう思ってるかもしれないですけど、横山さんが前例になっていくわけじゃないですか。「横山健が45歳でもメロコアをやってるんだから、俺らにもやれる」って思うバンドが出てきてもおかしくないですよ?

横山: まあね、受け取り方は人それぞれだから。よくとらえてくれたらいいんだけど、悪くとらえるヤツがいるから厄介なんであって(笑)。まあ、悪く言われることにいちいちかまってられないけど、時々気になる時はあるのよ。

-すごく気にしてる時期がありましたよね。

横山: 2ちゃんねるが勢力を誇ってた時期ね。

-最近は、「勝手に言ってろ」っていう境地に達した雰囲気を感じるんですが、いかがですか?

横山: うん、だいぶね。麻痺したっていうのもあるけど。もう15年もネットで、ぼてくり回されてるわけだからさ(笑)。

-歴が長いんですよね。

横山: そうそう。'90年代の終わりからネットではいろいろ言われてたから。俺のなりすましが出てきて、「アメリカツアー行くんで」みたいなことを掲示板に書いたりとか。

-あぁ、ありましたね!

横山: そういった意味では、もう昨日今日のことじゃないし、全然気にもなんないよって言い切れる自分もいるけど、人間いつでも悪く言われることには頭くるからね。

-そうですよね。

横山: でも、Twitterが登場して2ちゃんねるが下火になってさ、それだけでも随分楽になったよね。もはや誰も2ちゃんのことは話題にしないんだよ。...随分助かったよ(笑)。

-でも、それってツールの変化なだけであって、お客さんの変化ではないですよね?

横山: ツールの変化イコール、お客さんの変化だと思うよ。だって、ツールによってその人の日常が変わっていくし、発信の仕方も変わっていくわけじゃない?

-実際にライブハウスで変化を感じることってあります?

横山: それはないかな。みんなライブハウスにはそれを持ち込まないから。ダークサイドだから(笑)。変わったと言えば、震災以降に変わったかな。

-どう変わりましたか?

横山: 音楽に熱狂する人が増えたよね、俺たちがそうやって発信したから。それを素直にキャッチしてくれてる人は震災前よりも全然高い温度でライブハウスに来てくれてる。

-では、最近の『PIZZA OF DEATH RECORDS』について話を聞きたいんですけど、Jun Gray(「Ken Band」のベース担当)が手掛ける『Jun Gray Records』など4つのレーベル内レーベル(他に『TIGHT RECORDS』、『Rotten Orange』、『IN MY BLOOD RECORDINGS』)を始めるという動きに驚きました。かなり思い切ったん決断だったんでしょうか?

横山: いや、全然。やってダメなら閉じりゃいいやって、思ってるから。ワクワクしかないね。

-『PIZZA OF DEATH RECORDS』は新しく何かを始めることに対してすごく慎重なイメージがあるから、今回の動きに思い切りを感じたんですよね。セールスが見込めないと新しいバンドは出せないっていう時期も実際あったわけで。

横山: だって、今はもうセールスが見込めるバンドなんかいないでしょ。

-そういう風に思考が変わったタイミングはいつだったんですか?

横山: 俺の中では『Four』(4thアルバム)かな。2010年ぐらい。本当にCDはダメなんだって思った。そこから少しずつ意地を張ってた部分を自分の中から取り除いていったら、レコードレーベルの役割っていうのはCDを売ることじゃなくてバンドのサポートなんだなって、心底感じ始めて。そりゃあ、売れたらうれしいよ。でも、音源を出す場を提供することと、バンドの存在への担保をしてあげるってことが今の『PIZZA(OF DEATH RECORDS)』の役割な気がする。

-以前、「レーベルは慈善事業じゃねぇんだ」とおっしゃってましたが、ヘタしたらバンドにとってはそうなってしまうかもしれないですよね。

横山: あるバンドにとってはね。でも、あるバンドはしっかり結果を出すわけだから。昔みたいに慈善事業じゃないってつもりもあるし、ちゃんとビジネスなわけだから、お金儲けしなきゃいけないけども。よく思うんだけど、自分が言ったことやったこと、自分の方針に対して、俺は政治家じゃないから別にいちいちこだわる必要もないのかなって。例えば、昔はよく「俺たちはTシャツ屋じゃねぇんだ」って言ってたの。でもさ、物販ってしっかり売れるのよ。だから、今は別にもうTシャツ屋でもいいなって思うし。しっかり儲けを出せるものを手掛けようって時期もあった。でも、今はそこがプライオリティのナンバーワンじゃない。

「下を育てないことには何も楽しくない」

-今の、自分にとっての最優先事項はなんですか?

横山: 楽しむことだね(笑)。面白いヤツを見つけること。世代に関わらずそういうヤツは絶対いると思うんだ。

-なるほど。余裕ともまた違うんですけど、横山さんの思考の段階が前よりも1、2歩先に進んだ感じがします。

横山: かもね。自覚したからかもしれない、本当に自分はもう若くねぇんだって。

-下を育てる意識が強くなってるんですか?

横山: 育てないことには何も楽しくない。

-そういうことを楽しめるようになってきたんですね。

横山: 例えばさ、『PIZZA(OF DEATH RECORDS)』から世代を象徴するような若手バンドが出ましたと。そしたら、そいつらのツアーに「Ken Band」を連れてってもらいたいもん。「The Offspring」のサポートを「Bad Religion」がする、みたいな(笑)。そんな日を夢見てるかな。

-こないだ楽屋でとある若手バンドのボーカルに発声法を教えているのを偶然見ました。冗談半分でやってるのかと思ったら、けっこう"マジ健ちゃん"な雰囲気だったから「あれ!?」と思って。

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横山: なんでそう思ったの?

-ああいう場で真剣にアドバイスしてる姿ってあんま見たことないな、と感じて。

横山: してるよ! でも、最近は顕著かもしれないね。自分よりも若いバンドによく言うのが、「盗めるものはなんでも盗んでくれ」って。それでそれをまた自分たちの下のヤツらに教えてやってくれればよくて。聞かれることも多いんだよ。発声法にしても、ギターにしても、ステージでの立ち居振る舞いにしてもさ。立ち居振る舞いなんかに関してはさ「嫌われるの、怖くないんですか?」とか。

-それに対して、どのように答えるんですか?

横山: 日によって違うけどね(笑)。「上等だよ!」って言う時もあれば、「いや、そりゃ俺だって怖いよ?」って言う時もあるし(笑)。でも、どういう言葉が出てくるかじゃなくて、たぶんそいつらは俺の言葉の向こう側をちゃんと見てるんだと思うよ。

-それにしても、横山さんがギターじゃなくて発声法を教えているってところが感慨深いですね。ボーカリストとしての自覚は、かなり強くなっているんですか?

横山: 本当は人に言うほどのことでもないんだけど、やっぱり10年間歌ってきて、自分なりに体の使い方とかが分かったから、それを教えてあげてるのさ(笑)。俺もそういうことを先輩たちにいっぱい教えてもらったのよ。その人の言うことをイチ聞くも十聞くも俺の自由だったし、どんなアドバイスをもらっても迷惑ではないわけじゃない? 先輩ってそういうもんだと思うんだよね。だから、俺も遠慮なく分けてあげたい。思い出話もするし。最初に「Hi-STANDARD」で海外ツアーに行った時('96年頃)はどうだったとかさ、震災後に何を考えているかとか。あと、25年間も人前に立ってきて自分なりに得た哲学とはなんだったのか、とか。

-自分が先輩から教えてもらったものはちゃんと下に伝えていきたいと。

横山: 先輩っていってもFAT MIKE(アメリカを代表するパンクバンド「NOFX」のフロントマンであり、「Hi-STANDARD」の1stアルバムのプロデューサー。海外盤は彼が主宰する『FAT WRECK RECORDS』からリリースされている)だけどね。MIKEとか海外のバンドはよく話してくれた。日本のバンドで先輩って言える先輩はいないじゃない? 今や、いっぱいいるけど、その人たちに細かいことを教えてもらう機会はなかったからね。

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