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PUNKROCK BELIEVERS 緊急掲載!パンクロックに魅せられた男達

2014.06.02

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「自分の歌じゃなくても、歌ってくれ歌ってくれって」

-先日、「新木場Studio Coast」(2014年4月6日)でのライブを観て思ったんですけど、横山さんの歌がどんどん"みんなの歌"になっていると感じます。なんかもう、ひとりの歌ではなくなってきている。こんな風に言われてどう思いますか?

横山: あるべき姿かなって思う。

-以前、「作品は一度世の中に出たらみんなのものだ」と発言されていました。でも、その感覚をライブハウスで得ることはこれまでなかったんです。

横山: そこは俺なりに一生懸命、可視化しようとしたのよ。ツアーの日程を組みました、告知しました、お客さんはお金を払ってチケットを買いました、当日俺たちがライブハウスに乗り込みました。でも、それだけだとどうしてもステージとお客さんが一緒にはならないわけよ。そこを壊したいと思ったのね。俺はステージ上から一方的に放出するのはもう飽きた。それはどのバンドもやってる。そんな光景はどこでも観れる。もっとぐしゃぐしゃにしたい。もっと何かあるんじゃないか。お客さんに歌ってもらったら、そうなれるんじゃないか。それでマイクを客席に投げ入れたりとかさ。それはもう俺の中では「みんなの歌になってほしい」っていう思いを可視化するための動きだったわけ。だからすごくうれしいよ。「こいつら、英語をカタカナに書き起こして一生懸命覚えてきたのかな」とかさ、「"俺のところにマイク振ってくっかもしんねぇから曲覚えなきゃ"とか思って覚えたのかな」って。他のバンドのお客さんにはそんなのいないじゃん。

-長渕剛のライブ盤で本人がほとんど歌わない『乾杯』があって、それがめちゃくちゃいいんですよ。長渕はアコギだけ弾いてお客さんが歌うっていう。個人的には、『Believer』(1stアルバム『The Cost Of My Freedom』に収録されている代表曲)でもその光景を観たいなと、ずっと思ってて。こないだのライブでは最初のサビだけじゃなくて、平歌も歌ってなかったから「よっしゃ!」って思ったんだけど、さすがに全部歌わないとなるとまだ難しいのかなと。

横山: まあね、『乾杯』と比べたら『Believer』は全然一般的ではないからね。確かに、『乾杯』ぐらいの存在になったらみんなの歌だもんね...。俺、こないだのステージ上で「BRAHMAN」の『霹靂』を歌ったじゃない?(2014年4月6日でのライブ)あれもうれしかったな。

-なぜですか?

横山: だって、みんな歌詞覚えてて、歌うんだもん。ああいうの、うれしいのよ。

-自分の歌じゃなくても?

横山: 自分の歌じゃなくても。歌ってくれ歌ってくれって思った。パンクのライブに行ったら暴れる、とかさ、そういうある程度形が決まってきちゃってるものに対して、あまり今まで俺たちが提案してこなった、歌うとか踊るとかそういったものを盛り込んでいきたいんだよね。

-未だに、チャレンジし続けているんですね...。『Believer』、もっとみんなの歌にならないですかね。

横山: 英語だから難しいよね。

-でも、続けてたら絶対にその日は来ると思います。『乾杯』、『Don't Look Back In Anger』、『Believer』。

横山: わはははは(笑)! そうね、『Don't Look Back In Anger』なんかライブで観たら歌いたくなるもんね。

-詳しくは分かりませんが、あれもメンバー観客に、歌詞を口ずさむように仕向けているんじゃないでしょうか? それが浸透しているからみんなが歌う現象になってると思うんですよ。

横山: 長渕さんにしても「Oasis」にしても、お客さんと真面目に対峙してるんだと思うよ。自分だけのステージを果たそうとしたら、自分で歌うことがベストなんだもん。でも、自発的であれ、誰かに促されたのであれ、歌うことがどれだけその人の記憶に残るのかってことをすごく考えてるんだと思うよ。俺もガキの頃、好きなバンドに目の前で好きな曲やられて、モッシュピッドで一緒に歌ったらなぜか涙が出てきた経験があるし。俺の場合は「健さんは歌うことを放棄してる」みたいに言われるけどさ(笑)。そこについてはもう好きなように言ってくださいって感じ。全然そんなんじゃないし。

-いつか伝わると思います、絶対。最近のライブを見ていると、たとえ、音源の売上が下がっていくとしても、ライブステージとフロアの光景は10年後、20年後も今と変わらないんじゃないかって思ったんですよ。横山さんがどんなナリで歌ってるかは分からないけど、お客さんは今と変わらない感じで。そう感じたのは、年を重ねた今でも横山さんはステージ上でまったく無理をしてない印象からなんです。ただその時の、ありのままの自分を見せてるだけ。

横山: 「Ken Band」をやって、そこは随分考えさせられたからね。人前に出るってことはどういうことかって。間違えないようにやることが音楽なのかってところから始まってさ、「いやいや、そんなじゃないでしょう」って。その場のことをその場で無理せずパッと出すのが優れた表現者なんだと思うけれども、じゃあ、そうなるためにはどうするかっていうことも考えてやってるからさ。日頃から思いついたことをすぐ口にするトレーニングっていうのかなぁ。こういう取材とかも一種のトレーニングだよね。そうすると段々ああいう(無理をしない)人間ができ上がっていくっていう。

-それを聞いてさらに確信しました。さっき、「45歳でメロコアなんて」って言ってましたけど、若い奴だけがやる音楽じゃなくなる。

横山: そうなってくれたら別にいいけどね。でもさぁ、俺がもし死んでよ、俺が会ってもない孫がよ「うちのおじいちゃんはメロコア作った人だぞ!」とは言ってほしくねぇなぁ(笑)!

-そこで「そうだそうだ!」とはならないんですね。

横山: ならないね。今のは「メロコア」って言葉に対してどれぐらい拒否反応があるかっていうことの例えなんだけどね(笑)。

-それは相当ですね(笑)。ライブの話に戻りますけど、楽曲単位で言うと、『Your Safe Rock』(4thアルバム『Four』に収録)はあの当時の横山さんの気分が色濃く反映されている楽曲だし、もう演らないと思ってたんですよ。今はもうそんなモードではないじゃないですか。

横山: 確かにね。

-そこに抵抗はないんですか?

横山: 実はあの曲に関してはないのよ。『Your Safe Rock』を演る時は、あの瞬間だけ2009年のROCK IN JAPAN (FESTIVAL)のステージ上に戻るんだよね。

-へー!

横山: それだけあの夏の記憶が強烈だったんじゃない? それ以降のライブハウスとかフェスででき上がっていったマナーにもの凄く抵抗を感じる自分がいるわけ。あの曲をやる時だけスチャッとそのモードになれる。自分にとっては心強いよね。

―これだけ自分をさらけ出した歌を歌い続けてると、そのうち自分のムードに合わない曲も出てきて歌わなくなったりするのかなと思ったんですけど。

横山: うん、その理論は自分の中にもあるし分かるんだけど、なぜか『Your Safe Rock』はならないね。逆に必要。2009年の夏の記憶を外して考えても、日本のチャートの上位にあるような音楽しか知らない地域もあるわけで、ロックバンドがそこに入り込む隙って全然ないわけじゃない? そのことをまだ巨悪って捉えたい自分もいるんだと思う。

―では、自分がシーンを盛り上げなきゃっていう意識はありますか?

横山: そんなにないかな。たぶん"責任感"って言葉じゃないと思うんだよな。ただ、自分が聴いたり影響を受けたものはいい物だったって信じてるから、横山健から受けた影響はいいものだった、『PIZZA OF DEATH (RECORDS)』から受けた影響はいいものだったっていう若者が出てきてくれるような活動をしたいっていうだけで。

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-それがゆくゆくはシーンの盛り上がりに繋がればいいなというぐらいの。

横山: うん。CDの売上で言ったら惨憺たるものだけど、どれだけみんなの日常に入っていけるのかっていう、数値に表せないところで自分の気持ち的には盛り上がってるからね。

-ところで、もう人に曲を書いたりはしないんですか?

横山: 人に書いてる余裕はないかなぁ。

-もったいないと思うんですよね。

横山: 才能が(笑)?

-そうです(笑)。忙しいとは思うんですけど、横山健にできることってまだまだいっぱいあると思っていて。

横山: でも、ひとりの人間が生きてるうちに発せることってこんなもんだと思うよ? で、これがマスに響かないんだとしたらそれはそれで俺の限界なんだろうし。逆に、すごく売れてる人の曲を書いてさ、それに引っ張られていっちゃう自分も嫌だし。

-引っ張られちゃうと思います?

横山: うん。世の中ってそういうものだもん(笑)。それがきっかけで知られるのも嫌だし。

-意外ですね。世間の目はもう気にしなていないのかと思っていました。

横山: まだもうちょっと格好はつけてたいかな。例えば、「嵐」に曲を提供しました。それで100万枚売れちゃって、「ああ、あの曲書いた人ね」って思われるのも嫌なわけよ(笑)。いや......、もしかしたら1周回ってそれも良いかもしれないけどね...「嵐」、いいねぇ(笑)。俺、薬師丸ひろ子さんの『セーラー服と機関銃』がすごく好きだったんだけども、あの曲は来生たかお(昭和を代表するシンガーソングライター)さんが書いてて、それで来生さんのこと知ったもん。

-じゃあ、横山さんがそういう存在になってもいいじゃないですか。

横山: ...まあ、そこはお話次第ですね(笑)。

-最後に、横山さんは今後どうなっていきたいですか?

横山: うーん、どうなっていきたいのかなぁ...いろいろ思うのよ? 「人をもっとワクワクさせたいなぁ」とか。でも、ワクワクする人は勝手にするだろうし、「ワクワクさせたい」って自分で言う年じゃねぇかなとかも思ったりすんの。でも、まだ火は残ってるからさ、その時々の自分なりの格好よさを探してやっていきたいなぁとは思う。それが「横山健のやることだから」って楽しみにして、ついて来てくれてる連中やお客さんにとっていい物であればいいかな。

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