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小西康陽×坂本慎太郎 対談"音楽のはなし"--後編

2013.01.10

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僕はレゲエを絶対聴かないようにしてるんですよ、昔から。(坂本)

ーお二人はソロでライヴをされる予定はないのでしょうか?

小西:坂本さんはソロでライヴなさらないんですか?

坂本:やってないです。まあ、どうなるか分からないですけどね。

小西:ドラムマシーンを置いて、ひとりでやるっていうのもアリなんじゃないですか?

坂本:そういう感じになっちゃいますよね、やるとしたら。またバンド組むっていうのはなかなか。あとは、上手い人を集めてバックバンドみたいな感じで唄うっていうのも、あんまり面白くないかなっていうのもあるし。

小西:僕は去年、僕のレコードを聴いた何人かに、ソロ・アルバムからライヴをやらないのかって聞かれて。でも、やらないってキッパリ言っちゃいました。「このアルバムは独りで聴く音楽だ」って言って、ライヴをやらない言い訳にしてて。

坂本:でも『11のとても悲しい歌』っていうのは、ソロ・アルバムで、ボーカルが外国人で、英語の曲のカヴァーで、ジャケットには小西さんが写っていて。よく考えるとおかしいですよね。

小西:変過ぎますよね。

坂本:僕もあのアルバム聴いていて、今何聴いてんのか分かんなくなるというか。

小西:さっき坂本さんが仰った「自分の聴きたいレコード」っていうのをまさに作ったんで。

坂本:ほんとそうですよね、そんな感じだと思います。そういえば、小西さんって絶対に聴かない音楽のジャンルとかあるんですか?

小西:僕は好きなものがすごく狭いんですよ。

坂本:僕もそうです。ジャンルは色々なコーナーのものを買うんですけど、探してんのって結局同じ印象のレコードなんですよね。ボーカルの感じとか、質感とか。何か特定のジャンルが好きっていうのとはまたちょっと違うんですけど。

小西:どのジャンルも聴くことは聴くんですけどね。でも好きなものは少ない。

坂本:国だと、例えばアメリカとイギリスだったらどっちですか?

小西:どっちだろう。でもアメリカとイギリス、フランス、ドイツ、ブラジル、そして日本のレコードしか自分はほとんど聴いてないんだってことに最近気がつきましたね。僕の回りの友人はアジアのレコードも分け隔てなく聴いてるんですけど。

坂本:レゲエは聴きます?

小西:聴いてた時期もありましたね。お好きですか?

坂本:いや、僕はレゲエを絶対聴かないようにしてるんですよ、昔から。それで、頑なに守ってたんですけど、最近それが決壊しそうになっていまして。良いのがあるのはもちろん分かるんですけど、なんとなくそっちに行くと負けのような気がしていて。さらに、そこに行きだすとまたそこを掘らなきゃいけないわけじゃないですか?

小西:そうですね。キャロルのギタリストだった内海利勝さんのソロって聴いたことあります? レゲエなんですよ。シマロンズというグループと一緒に曲を出しているんですが。

坂本:へえー。

小西:で、僕はそれを聴いて、坂本さんに通じる何かがあると思ってるんです。

坂本:カッコいいんですか?

小西:カッコいい。70年代頃ってロックでギターを弾く人がちょっとレゲエに接近したりするじゃないですか? ああいうの、絶対好きですよ。

坂本:僕ね、そういうの知っちゃうとダメなんです(笑)。ローリング・ストーンズタイプのバンドが音楽性に行き詰まるとレゲエを取り入れるんですけど、リズムはレゲエじゃない。ギターだけ裏で入って、テンポが遅くて、バラードっぽいレゲエのような、そうなるのがすごく嫌だった。あと、当時は20年くらい前ですけど、ロックの人がラスタカラー入れるのも嫌で、そこからダメなんですよ。もうそんな分かりやすい人はいないけど。

小西:いないいない。

坂本:ダブとかミニマルなやつとか、後々知るとすごく好きなタイプの音楽なんですけど、まだちょっとね。昔の自分が引っかかってて。でも是非聴きたいですね、内海さんのやつは。

小西:うん、すごくいいですよ。当時ビックリして。「こんな音楽になってんだ!」って。「鏡の中の俺」って曲です。

坂本:なんですかそれ。カッコ良さそうな名前ですね。小西さん、パンクとかも聴きます?

小西:パンクは聴きますけど、熱狂的なファンではないですね。

坂本:小西さんの世代って、思春期にもろにパンクとかニュー・ウェイヴの頃ですよね。当時はやっぱり一番流行ってる音楽に飛びついた感じですか?

小西:そう、ある日トーキングヘッズを聴いて。もう今までの音楽は聴かないって気分になっちゃったときもあった。どっちかというと、パンクじゃなくてニュー・ウェイヴかな。僕がモダーンミュージックに行ったりしたのも、そのすぐ後だったし。

坂本:僕の世代だと、ほとんどパンクを通ってるんですね。で、そこが前提になってて。だから、ゆらゆら帝国にしてもそういうパンク的な論調に話が進むことが多かったんですけど、じつは僕はそこを通ってなくて。

小西:え、そうなんですか?

坂本:昔からずっと古いのばっかり好きで。ガレージとかも一時期ハマって聴いてて、60年代のレコードとか集めてたんですよ。でも、日本でガレージシーンにいる人たちって全員パンクを通過してからのガレージだったから、なんだろう、ちょっと違うんですよね。だから、同じガレージでもそこに共感が持てないのは何故だろうと考えたら、僕はパンクを通過してないっていうことになって。

小西:へえ、意外でした。

坂本:最近はマイナーなソウルの再発モノは買いますけど、あとは普通に(ディスク)ユニオンに行って聴いたことない安いレコードをジャケ買いして、って感じです。

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