2018SSシーズンのエピローグでは、アメリカの詩人でビート文学の代表格のひとりであるアレン・ギンズバーグの名作『HOWL(吠える)』から“The weight of the world is love. Under the burden of solitude, under the burden of dissatisfaction.”(世界の重さこそ愛である。孤独を背負うこと、不平不満を背負うことなのだ、という意味)という言葉が引用されていました。今シーズンは、何が正しくて何が必要なのかを突き詰めたメッセージを発信している、と伺いましたが、それは具体的にどんなものなのでしょうか?
ルーク・メイヤー(以下ルーク)ここ最近は、世界中で色々なことが起こっています。目を疑うような暴力や差別、不正や腐敗。こんな社会的な状況がこのまま続くとしたら世界はこれからどうなってしまうのだろうと、自分なりにそのことを考え、前向きなメッセージを発信しています。個人的には、最近の世の中は60年代にリンクしている部分があると考えていて、2018SSシーズンは60年代のアイビーリーグやプレッピーを意識したものを展開しました。グラフィックはアイビーリーグのスローガンや当時の抗議運動に関係していて、洋服はアメリカントラッドスタイルからインスパイアされています。ユニフォームのようなジャケット、ボタンダウンシャツ、プレッピー風ニットなど、アイビーの要素を歪めて捉えることで、反権威的なアティチュードを表現しています。伝統的なアイテムのシルエットを遊ぶことで〈OAMC〉らしさを出しているんです。
ルークはい、今シーズンはクリップピンの使い方もポイントになっています。60年代のフォーマルは、ピン使いも印象的でしょう? これらのアクセサリーは、シルバーやガルバリウムを使ったハンドメイドです。ワッペンには、シーズンを象徴する抗議のメッセージが込められています。カモフラージュ柄はハンドペイント。靴はスチールトゥのワークブーツやハンドペイントのスニーカーを展開しています。メッセージを込めた〈OAMC〉の洋服を手にしたそれぞれが、思い思いに解釈しカスタマイズし、ファッションを通して個人の考えを発信してもらえたらいいなと思います。ファッションはアイディアがすべてじゃない。アイディアも大事だけど、プロダクトとしての完成度も大事。アイディアをきちんと形にして、人が着ることをイメージしながら洋服を作らないといけない。伝統と先鋭をミックスしたカスタムで遊び心を入れるクリエイションが〈OAMC〉流のアドベンチャーなんだと思っているんです。
〈OAMC〉は自分自身だと、ズバッと言い切る姿からは自信が感じられた。カナダに生まれ、イギリスやNYの学校を経て〈シュプリーム〉でストリートのインフルエンサーとなった。グローバルな視点を持つ彼ならではのスタイルでテーラーとストリートを融合させた。それから3年の時を経て、次なるステップへ進む彼の今後の活躍に注目したい。
Luke Meier / ルーク・メイヤー
多様なインスピレーションをもとに、現代の空気感を反映させたメンズウエアを提案する〈OAMC〉のクリエイティブディレクター。2017年4月、妻のルーシー・メイヤーとともに〈ジル・サンダー(Jil Sander〉のクリエイティブ・ディレクターに就任。