まず初めに今回の展示に至った経緯を教えてください。
ノンチェリー今年の夏にユンキーと韓国のソウルで出会ったのがきっかけです。そのときに、彼が「今度冬に日本に行くよ!」っていうから、じゃあせっかくなら一緒に展示しようよって話になって。ズマーフのことも少し話していたら、「ズマーフってやつは一体何者なんだ」って(笑)。それで、すぐその後に3人のLINEが始まったんです。
ズマーフ結構すぐ決まったよね? まだユンキーのライブスケジュールすらも出ていなかったと思います。11月に来るから、とりあえずそのスケジュールに合わせようって感じでしたね。
「GRAJOOLA」というタイトルはどのようにして決まったんですか?
ユンキーぼくがグラジューラって言葉を使ったのがきっかけだったと思います。
ノンチェリーでも、ゴジラみたいな怪獣をイメージしたんですよね? ゴジラの兄弟みたいな。
ユンキーあれ、そんなこと言ったっけ? じゃあ、そういうことだね(笑)。ズマーフと僕がこの展示のタイトルについて考えていたときに、なんか「グラジューラ」みたいな変な響きのやつがいいと思う、って言ったら彼が「それ!いいじゃん」ってなったんです。それをノンチェリーに伝えたら「めっちゃクール!って(笑)。
ノンチェリーそしたら次の日には、もうタイトルの文字が送られて来たんです。
ノンチェリー見た時、めっちゃテンション上がりましたよ。
ズマーフとノンチェリーはもともとユンキーの大ファンだと伺いました。
ノンチェリーそうですね。ぼくらは同じ高校の同級生で、席が前と後ろだったから仲良くなったんですけど(笑)。当時、2人とも読んでいた雑誌、『relax』にたまたまユンキーが出ていたんです。
ノンチェリーそう、ラヴァーズロック特集。韓国人でロンドンに住んでいて、スケートもするし絵も描くし、レゲエやダブの音楽を作っているっていうんです。もうその当時は全部がフレッシュでした。
ズマーフ俺たちもレゲエが好きで、スケボーもしていたし。音源もヤバかった。
ノンチェリーそう。『ASIAN ZOMBIE』っていうアルバムを出していて、カバーの質感とかもちっとLowな感じとか。
ズマーフでも、今でも全然聴きますよ。色褪せないですね。
ユンキーさんはその後、少し制作を休まれていたんですよね?
ユンキーそうですね。2009年ごろから活動を休んでいました。そしたら、ある日父に「音楽や絵の制作をしないお前は何者でもない。すぐに死ぬよ」って言われたんです。僕は「そうかな?」って感じだったんですけど(笑)。その言葉を言われてから、また制作するようになったんです。
ユンキー父は「もっと音楽を制作しろ」って言ってくれて、母と妹は「もっと絵を描きなさい」って言ってくれたんです。
再始動しはじめたことはお2人はどうやって知ったんですか?
ノンチェリーチェックするとホームページも色々変わっていたりして。活動していたときはやっぱり結構充実したような感じのサイトだったんですけど、休止してからは更新されなくなって。絵の質感もデジタルな感じになっていきました。そんな感じで追ってたら、ある時からどんどんまた更新されてるようになってて(笑)。
ユンキーそうですね。大体8年くらいは活動を休んでいました。再度始めてからは、少し作るものも変わったりして、『ASIAN ZOMBIE』をリリースしたときはレゲエアルバムを作りたいっていう気持ちだったんです。2000年ごろでしたかね、どんどんレゲエ音楽にハマっていって。今ももちろんレゲエは僕のルーツですが、少し違う音楽をやりたいっていう気持ちになっていたんです。似てる部分ももちろんあるとは思うんですが、僕の中の気持ちが違うんですね。
ユンキーはもともと2人のことを知っていたんですか?
ユンキー共通の友人に紹介されてノンチェリーの作品はネットとかで見たことがありました。それに、友達のスタジオに遊びに行ったときに彼の音楽がかかっていたこともあって、音楽も聴いたことがあったんです。
ユンキー確か、1年前くらいだったと思うよ。ファンキーで遊び心のある、面白い作品だなって思ったよ。そしたら、ノンチェリーが韓国に来るっていう話を聞いて、同じことイベントに出ないか?って友人に誘われて。いいね!って感じで。それからどんどん話が展開して、今ここにいるんだ(笑)。
ノンチェリー(笑)。そう、その後はもう本当にトントントンって話が進んで行きましたね。
それぞれの作品について教えてください。まずユンキーさんの今回の作品についてお話を伺えますか?
ユンキーそうですね。大きいペインティングはスプレーペイントで描きました。室内でやると臭うので韓国の公園でやりました。小さいのは基本的に家で制作をしていて、描く時は特に何かを考えて制作はしていなくて、自分から湧き出るものを表現しようと心がけています。ペンを紙の上で動かす動作や、ブラシが持つストロークなど。自然に出るものを活かしています。
ユンキーあとは、グラフィティ的な要素があります。19歳のときに地元でいつも街に出ては絵を描いていました。でも最近は、やったら捕まる気がして(笑)。それに、ペイントを街に使うのがもったいなって思ったりして、最近は紙にスプレーをするようになりました。
3人の作品に”グラフィティ”という要素も共通点としてあるんでしょうかね?
ノンチェリーそうですね。やっぱりさっき言っていたようにスケートや音楽っていう要素とも通じていますし。
ズマーフ世代的にもやっぱり影響を受けた要素は大きいと思いますね。
ズマーフさんは最近立体の作品を制作していますよね。
ズマーフそうですね。あらかじめ存在する物、例えばゴミ箱とかテープ、什器に使用するような道具だったりを組み立てて、新しいもの(作品)を作るといった制作をしています。さっき言われて気がついたんですけど、最近は花を使うことも多いなと。まあ偽りの花(造花)なんですけどね。例えば、このぶら下がってる作品は造花なので、一生ドライフラワーになることはないんですよね。
ノンチェリードライフラワーに対するイメージも含んでたんだね。
ズマーフもう一つは、最近京都に行くことがあってそのときに見た龍安寺の石庭がとっても良くて。禅とまでは言いませんけど、“不完全な美”っていう概念には感動しましたね。なので、そんな要素も入っていたり?(笑)
ノンチェリーの作品は今回いつもと少し違った印象がありますね。
ノンチェリー最近めちゃめちゃ絵を描いているんです。毎日毎日描いていると、自分の描いているものに飽きてくるんですよね。自分が出せるもの、シルエットや形みたいなものがどんどん固定されてきてしまっているというか。だから、日々それをどうにか変えようって試みたんです。ニューシルエットを足していこうと。それで、今回展示しているやつは今回のための作品で、膝と腰を極端にくねらせてひょうきんなVIBEを出す研究の一部で、体にハリガネが入っていて頭がトロル人形みたいな人形が醸し出す’18じゃない感じのシリーズなんですけど。こういうスタイルでやってる人いたよね?
ズマーフWK Interactだね。18歳くらいのときに見てたよね。フランス出身で、街の中に大きなグニャっとなった人を貼ってく人。やっぱり今、10年前くらいに見てたものがヤバいね。
ノンチェリーそうだね。高校のとき、すぐシールを貼る友達の部屋のタンスに、なんかの雑誌の付録のそのシールが貼ってあって、実家の明るい木目調のダサいタンスとの組み合わせから醸し出すVIBEを異常に覚えてる。その時代感も含めていいなって思う。引用しても全体のムードは光合成みたいな感じだから、合うっていうか。今やるっていうタイミングも良かったかもしれないですね。
ズマーフそうだね。この際、でっかくして街に貼っていこうよ(笑)。
ノンチェリー(笑)あとは昔から韓国語のハングル文字のフォルムが好きで、まあ、それもユンキーがきっかけなんですけど。韓国っていう国に目を向けさせてくれたのは彼が理由なんで。今回はユンキーとの展示ということもあってハングルの要素を積極的に取り入れてみました。でも、実はこれとかよく見ると、ハングルじゃなくて”KOOL”って描いてあったりするんです。
ノンチェリーええ、そうなんですね。なんて意味になるんですか?
ユンキー”Gifted Cow”(プレゼントされた牛)
ズマーフでも、確かに韓国ってやっぱり僕らにとったら少し近い存在だったというか。ノンチェは福岡の百道浜って言うところの出身なんですけど、そこの浜辺に行くと韓国からの漂流物とかもあったりするんですよ。
ノンチェリー韓国はとっても近いんで。親しみはやっぱりありますね。あと、こっちの作品は漫画です。日焼けクリームの訪問販売が題材になっているんですけど、容器の中身は醤油で、塗るだけで即効で黒くなれるっていう(笑)。
ノンチェリーいや、っていう話を僕が作ったんですけど。そのストーリーになっていて、やっとここに本物のハングルを意味のある感じで作品に紛れ込ませれたんです。好きなんですけど、ただ単純に意味がなくて使うのはファッションみたいになりそうで嫌だったので、今回入れました。
今回の展示のために3人でスペシャルBOXを作ったんですよね?
ノンチェリーそう、BOXを作ったんです。トートとみんなの作品をまとめた、本とテープが入ってます。
ノンチェリー作るの早かったよね。1日くらいじゃなかった?
ユンキーいやいや、1日じゃないよ(笑)。1~2週間くらいかかったよ。
ノンチェリーあれ、そうでしたっけ?? 3日くらいかと思ってました。僕らは「もうできたの?!」って驚いてましたもん。
ズマーフBOXのプリントはノンチェリーが全部手刷りで刷りました。福岡で刷って、持って来てくれました。トートバックも3人のそれぞれの作品が載ってます。
ノンチェリーあと、これは高校生の子達でも買えるくらいの値段に設定しようってことで。値段もかなり安く設定してます。
ズマーフ高校生向けのBOXですね(笑)。っていうのもユンキーがすごくそこにこだわっていて、熱く語られたので僕らも動かされた感じですね。
ユンキー手が届くくらいの値段にすることは、やっぱり若い子のことを考えたらとっても切実なことだと思うんです。
ノンチェリーいやあ、だからもうこれは慈善事業みたいなもんですよ(笑)。
ズマーフ5000円を持っていない高校生はもう、万引きとかしてくれたら上がりますね。
ノンチェリーあと、さっきズマーフが言っていた“禅フィーリング的”なものには少なからず影響されてますね。本当はBOXも2版使って刷って、ピザBOXのようにしたかったんですけど、最終的にはこんなメインビジュアルになりました。無ですね。シンプルです(笑)。
ズマーフあと、3つ限定でスペシャル版も作りました。10000円でトートの色が違ってサイン付きです(笑)。ミントグリーンです。
ノンチェリーいやあ、展示中ずっと滞在したいですね。(注:ノンチェリーは搬入のために来ていて、福岡にその足で戻る前に取材を受けています)
ズマーフあと20分くらいしかないやん。いやあ、帰したくないなあ(笑)。
ノンチェリーでも、セットアップにだけ来れただけでも良かった。
ユンキーうーん。Have some pizza(ピザでも食べて行って)。