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FEATURE|SWITCH INTERVIEW 金子恵治×尾崎雄飛 服に命を捧げる、愛すべき服バカたち。後編

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金子:セレクトショップに卸すという時代は終わったのかもしれないね。僕がこういうことを言うのもなんなんだけど。

尾崎:なんかだんだんすごい話になってきましたね(笑)。

金子:終わったというのは言い過ぎかもしれないけど、いろいろ考えていかなきゃいけないのは確かだと思う。

尾崎:商売的に原価率のことを考えると、セレクトショップはPBを作ってそれが上代で売れるのが一番儲かるわけですよね。だから今や仕入れの商品とPB商品がかつてとは逆転した成り立ちになってきています。レショップは例外ですが。だから、そういう意味でも〈サンカッケー〉みたいな個性的なブランドは、セレクトショップ側にとって扱うのが難しいブランドなんですよ。セレクトショップに入って優等生になりうる商品がどんなものかというのは、僕みたいにブランドとバイイングを二軸でやってる人間にはものすごくよくわかるんです。なので、ビジネス的 にはこういうものを作るべきなんだとわかりつつも、アーティストとしての僕はそれとは違った方向性のものを作りたいわけで。じゃあどうするの?となったら、卸しだけではない、新しい方法を考えようかな、と。そういう話なんです。卸しを目掛けた価格設定では世の中に通らないような原価のものにも常に挑戦していたいですので。

金子:そうだね。〈サンカッケー〉に興味がある人も、できることなら尾崎くんから買いたいだろうし。だったら素直に彼が売る方が、この手の商品はいいんじゃないかと思います。

尾崎:だから、場所を借りて、サロン的な直売会をする、みたいなことをやっていこうかなと思ってます。全国各地に足を運んで。

金子:それでいいと思うよ。

尾崎:幸い旅も好きなんで、全然苦にならないですし。

金子:お店側とブランド側が抱えているストレスを、うまく解消していくやり方を探していくべきだよね。

尾崎:外国の人って、日本とは違うやり方でもうまくやってますよね。

ーというと?

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尾崎:アメリカを旅してみると、半年に一回展示会に行って、そこで仕入れをして、という流れではないタイプのお店がいっぱいあるんです。自分で作ったものと、友達が作ったもの、あとは古着屋とか蚤の市で仕入れてきたものを並べて、それで運営しているっていう。で、お店を休みたかったら休むんです。僕が〈ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズストア〉というブランドで本当にやりたいことは、そういうことなんです。だから、ブランドを始めるときに、小さく商売をやりたいということを皆さんにお伝えしたわけです。そのわりには随分忙しくなりましたけども。。

金子:でも、そのやり方はみんなハッピーになれるから良いよね。

尾崎:そうですね。

金子:ある意味での正解なやり方というか。みんなが喜ぶような形だよね。ただ、「レショップ」でやっていることも、会社内でしっかり数字をとっている業態があるからこそできることで。どこまで許されるのかっていう。

尾崎:あと最近は、そんなに高いお金を出してまで洋服を買うのはなんだか損をしてる、みたいな風潮というか雰囲気ってありませんか? 価格が安くて利益率が高いものを売りたい人からすると、本当に良くて高いものを買いにいく人のお金を止めたいわけですよね。6万払うなら6000円でウチのを10着買ってよ、みたいな。そういう部分は10年前とかなり変わったところだと思います。でも、僕が言うところの狂ったように服好きな人たちって絶対に一定数いなくならないと思うんですよ。そういう人でも、「レショップ」に足を運べてない、来れてない人がまだたくさんいるわけです。

ー前編でも言ってましたね。

尾崎:はい。それは今回僕が強く言いたいことなので。でも今は、情報が誰にも等しく届く時代なので、「なんか面白そうなことやってんじゃん、この人たち」っていうのが例えば「フイナム」みたいなメディアを通じて伝われば、きっと変わっていくと思うんです。僕らがめちゃくちゃに服を買ってるのを見て「ちょっと待て、つまんないな、今の自分の着てる服。この人たち狂ったように高い服着て、でもめちゃくちゃ面白そうにやってない? めちゃくちゃ幸せそうじゃない?」って。「やばい、服おもしろい」みたいに目覚める人って結構いると思うんですよ。「レショップ」はそういう人を作るお店だと思ってます。そういう人たちにとって可能性がある店というか。そういう人をたくさん増やしたいんです。僕も当然のように狂ってる人なんですが、狂ってる人の生きる道って面白いよってことを、その予備軍に伝えていくようなことをしたいですね。

金子:ウチだけじゃなく、尾崎くんにもがんばってもらわないと(笑)。

尾崎:いまは金子さんのブログに頼ってます(笑)。でもあれで変わった人っていると思うんですよね。

ーそう思います。

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金子:とにかく「洋服楽しい!」って風にならないとやばいよね。すでに衰退し始めてるから。

尾崎:洋服の楽しさが減ってますよね。いや違うな、減ってないのに見えなくなってるんですよ。陰謀論じゃないですけど。楽しいはずなのに、違う競技になってきてるというか。勝ったものが強いとか、強いものが勝つ、みたいになってる。そういうことじゃないと僕は思います。

ー根源的に面白いものは今も昔もあって、変わらないというか。そこにあるんですよね。

尾崎:いろんな種類の服があるから面白いんです。顔も体つきもみんな違うし、似合う服も違うんです。なのに、みんなが同じものを欲しがるように誘導されている節がありますよね。その方が商売になりやすいんで。だけどもうちょっとみんなが洋服の楽しさに気づいて、「私にはこれの方が似合うし、これを着てる私が私らしい」って思ってほしいです。

ーわかります。

尾崎:海外にはそういう人がたくさんいますよね、だって、流行りってものが無いんですもの。例えば、〈ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズストア〉のリブT、この夏はけっこう売れまして、どうもリブTというもの自体が流行ったよ うなんです。で、ちょっと青山や代官山なんかであたりを見渡すと、たいていリブTを着てる人が一人くらいは歩いているわけです。もちろんウチのブランドの製品だけではないですけどね。すごいなあ、日本人!

金子:そうだよね。

尾崎:そういうのがダメって話ではないんですよ。それはとてもファッション感度が高いってことで。ただ、それがちょっとアメリカへ旅に出てみたら、リブT着てる人はもちろん見かけないんですよ。明らかなトレンドもない。何を着るのかは何が自分に似合うのか、何が楽なのか、っていうマインドで、ドレッドヘアにボロボロのおっちゃんから、ブロンドにボディコンのお姉さんまで、躊躇せずに好きなものを着ている。面白いことに、日本でも最近すごく若い子の方がそういう感じありますよね。変に知識もこだわりもないので、自由にやってる感じがします。

ー20代前半くらいの子とか。

尾崎:はい。みんな自由で楽しそうですよね。「いいの着てるね」って言うと、「え? なんですかこれ?」っていう。

金子:そういう意味では、尾崎くんが一番自由にファッションを楽しんでるよね。

尾崎:それは心がけてます。一応「36歳のオッサンがこの服装で出かけて大丈夫か…」って思う日もあるんですよ。でも、僕の立場で服を着ることを楽しんでなかったら、もうこの商売をやる資格が無いと思うんですよね。自分はコンサバに生きて、他人にはもっと面白い服着てくれよって言うのはちょっと違うかなって。何より、自分が 好きなことを抑制するためにファッションを好きになったわけじゃないんで。カッコよくなりたい、目立ちたいっていうのが原動力なんです。その楽しさを知ってもらいたいっていうのがものすごくあるので、そういうことをフイナムのブログに書いてこうかなと思います。

ーおっ!何年ぶりかに!

尾崎:はい、やっときっかけ掴みました(笑)。

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ー嬉しいですシンプルに。ではそろそろシメですかね、後編も。金子さん、最後に尾崎さんに聞きたいことありますか? この企画、一応「SWITCH INTERVIEW」なので(笑)。

金子:ありがちですけど、やっぱり将来なにをしたいのかっていうのは気になりますね。何かを目指してるとか、おそらくないと思うけど、でもなんとなくどういうところに着地するんだろう?って。

尾崎:それは僕も金子さんに聞きたいです(笑)。でも、昔よりは先のことを考えるようになりましたね。昔は明日のこともちゃんと考えてなかったんで。最近ようやく見えてきたのは、ひとりでできる仕事をひとりでちゃんと全うするっていうことなのかなって。やっぱり自分には小さい商売が向いていると思うんです。自分のやるべきことをひとりで完結させて、それで人を納得させたり、あるいは感動させたりするっていう仕事が向いてるなあと思っています。

金子:わかるなぁ。

尾崎:もしかしたら、今後はそれがもうファッションじゃなくてもいいのかもしれませんね。まぁ、できるんだったらですけど。目下のところは今のことを続けることに力を注ぎたいと思います。あと最近は周りに年下の人が増えてきたので、そういう人に対して「こうすればファッションは面白いよ」というのを教える側に立つことも必要なのかなと思うようになりました。なんかちょっといやなんですけどね(笑)。

金子:そうだね。気づいたらもういい歳だよね。

尾崎:もう教える側の歳ですよ、僕ら。教わってきたことを次に教えていかなきなって、普通に思うようになってきました。ますますブログ再開かなぁ。

金子:いいね。文才あるからね、尾崎くんは。

尾崎:やります、ブログ。金子さんの「着ぶくれ手帖」を超えよう(笑)。

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