HOUYHNHNM

FEATURE|LEGEND AGAIN. AG SPALDING&BROS.伝説のアスレチックブランド、AGスポルディング&ブロスが復活。

AG_w1200_2

LEGEND AGAIN. AG SPALDING&BROS.

伝説のアスレチックブランド、AGスポルディング&ブロスが復活。

1900年代初頭から半ばにかけて数々の名品を残してきた伝説のアスレチックブランド〈AG スポルディング&ブロス(AG SPALDING & BROS.)〉が、今秋より満を持して復活します。当時としては最先端の技術を持ち、ベースボールをはじめとしたアメリカンスポーツを根底から支え、アスレチックウェア界を牽引してきたパイオニアとして知られています。時を経たいまでも、独自のディテールや作りの良さからヴィンテージ愛好家達から高い支持を得ています。今回はこの復活を記念し、ヴィンテージを熟知したアーカイブ&スタイルの坂田真彦さんとウエアハウスの藤木将己さんを招いて〈AG スポルディング&ブロス〉の魅力について、じっくりと語っていただきました。用意した〈AG スポルディング&ブロス〉のスペシャルヴィンテージとともに、二人の会話を通してブランドの功績を辿っていきます。

  • Photo_Takeshi Kimura
  • Text_Shuhei Sato
  • Edit_Yosuke Ishii

  • Tweet
  • Hatebu
  • Google+
  • LINE

_S5A3709

右:坂田真彦(アーカイブ&スタイル 代表)
1970年生まれ。和歌山県出身。専門学校を卒業した後にデザイナーとしてのキャリアをスタートさせ、2001年に「アーカイブ&スタイル」を設立。数々の有名ブランドのクリエイティブディレクターを務める一方で、大の古着好きとしても有名。過去には青山でヴィンテージショップを営んでいたほど。

左:藤木将己(ウエアハウス プレス)
1973年生まれ。京都府出身。ヴィンテージを忠実に復刻するアメカジブランドの草分け〈ウエアハウス〉のプレスを担当。業界ではヴィンテージクロージングに精通する指折りの識者として知られた存在。今回の対談にあたり、私物の20年代の〈AG スポルディング&ブロス〉のカタログなどを持参した。

究極のヴィンテージスエットを探すとAGスポルディング&ブロスに行き着く

_S5A3630

—おふたりはヴィンテージの〈AG スポルディング&ブロス〉と聞いて、まずなにを思い浮かべますか?

坂田:自分の中では、やはりスエットですね。20~40年代にかけて、良質で面白いものを色々とつくっていた印象があります。あとは創業者がプロ野球選手だったからベースボールのイメージも強いですね。

藤木:僕も坂田さんと全く同じイメージです。我々〈ウエアハウス〉でも、デニムと並んでスエットは昔から作っているのですが、ベースとなるデザインのよいヴィンテージスエットを探していくと、結局〈AG スポルディング&ブロス〉に行き着くんですよね。

坂田:それはわかります。独特のディテールが多いし、細部に至るまでよく作り込んでいますよね。特にダブルフェイスのボクシンググローブポケットの付いたパーカは、ヴィンテージ市場でも昔から根強い人気を誇っていますよね。

_S5A3627

腹部に設けたポケットの形状から、通称「ボクシングブローブポケット」と呼ばれる、〈AG スポルディング&ブロス〉独自のディテール

—このパーカですが、カタログにはサイドラインパーカと記載されていたようです。

藤木:いまで言うところのベンチウォーマー的な位置付けですよね。ダブルフェイスになっているから保温性が高く、クルーネックと比べて作りが大きいのが特徴なんです。腹部のポケットは、待機している選手の手を寒さから守るために付けられたのが元々の由来。いわゆるカンガルーポケットやセパレートポケットは他社でも見ますが、このボクシンググローブ型のポケットは〈AG スポルディング&ブロス〉の専売特許ですよね。

坂田:この変形型のポケットは、きっと少しでも外気がポケットに入ってこないように手の突っ込み口を狭くして工夫したもだと思います。この頃のアメリカのプロダクトは、まだ大量生産を前提にデザインをしていないから、複雑な作りやディテールのものがよく見られますよね。特に〈AG スポルディング&ブロス〉のウエアはそれが顕著に表れています。

藤木:見れば見るほど、本当に手の込んだつくりで驚かされますよね。特にネック部分のつくりは秀逸で、耐久性と伸縮性を持たせるために表裏からダブルステッチのロックミシンをかけたりしているんですよ。

坂田:あとはショルダーがリブになったジャージーも〈AG スポルディング&ブロス〉らしい印象があります。このカラーリングってきっとスクールカラーですよね?

_S5A3558
_S5A3544

ショルダーヨークをリブ編みで切り替えたウール素材のジャージー

藤木:おそらくそうだと思います。きっといろんなカラーバリエーションがあったと思います。ウールのスポールウエアが全盛だった20~30年代の頃のものですね。

坂田:この辺りのウール製品が進化して、後のコットン製スエットやフットボールジャージーが生まれるんですよね。〈AG スポルディング&ブロス〉は、いち早くウールからコットンに移行しましたよね。

素材や技術で圧倒し、アスレチックウエア界をリードしてきた

—そもそもスウェットはいつの時代からあるものなんですか?

藤木:20年代からすでに〈AG スポルディング&ブロス〉はコットン製のスウェットを作っています。今日持ってきた24−25年のカタログで確認できますよ。

_S5A3642

_S5A3491

〈AG スポルディング&ブロス〉の24−25年カタログに記載された両Vスエットのイラストと当時の実物

坂田:これは凄いですね。カタログにもしっかりとコットンと記載されている。

藤木:ウールからコットンに移行される20~30年代のアスレチックウエア界において、〈AG スポルディング&ブロス〉は間違いなく最先端にいましたよ。

_S5A3618

坂田:コットンに注目したのは流石ですね。伸縮性や吸水性を考えると、スポーツウエアとしてはコットンの方が断然に相性が良いですから。しかも洗濯にも強いですし。また、アメリカという土地柄、羊毛よりも綿の方が簡単に手に入れるし安かったと思いますよ。企業としてもコストメリットがあったはずです。

藤木:スポーツウエアにおいてウールがコットンに勝っている点は保温性くらいですが、吊り編みで作った裏毛生地を起毛させることでそれがカバーされましたよね。このカタログに載っている〈AG スポルディング&ブロス〉のスエットは裏起毛されていますよ。まさにスウエットの原点と言ってよいでしょう。

坂田:確かにこの両Vのスエットは凄いよね。しかも表はコットンだけど、裏起毛しているのはウールなんだよね。

_S5A3481

首元の内側からチラッと覗くスエットの裏地面。起毛しているのがしっかりと確認できる

藤木:多分これはスエットがウールからコットンへ移行していく渦中に作られたものだと思います。スエットは通常、表糸、中糸、裏糸の3つで構成されているのですが、きっと中糸もしくは裏糸にウールを使っているのだと思います。これを見ると、この年代頃のコットンスエットが裏毛を必ず起毛させていた理由がわかりますよね。

坂田:この当時の〈AG スポルディング&ブロス〉のスエットといえば、このリブも見逃せないですよね。三角形に変形したリブ型、これもブランドのアイコンのひとつでしょう。生産効率を考えるといまの時代この作りはしないですからね。

_S5A3483

内側が三角形状に伸びた袖リブも〈AG スポルディング&ブロス〉のスエットを代表する独自のディテール

藤木:タグが取れていてもひと目で〈AG スポルディング&ブロス〉とわかるディテールですよね。デザインもさることながら、フィッティングも向上させた素晴らしいディテールだと思います。素材やディテールを見ても、明らかに他社の製品と比べても作りが良いですよね。カタログを見ると、このスエットで当時の価格が1.75ドルとかなり高いんですよね。

—同年代の他社のカタログを見てみると、アンダーウエアで1ドルを切るくらいでした。そしてそのほとんどがウール製です。

坂田:この当時〈AG スポルディング&ブロス〉を着てスポーツをしていた学生は、きっとアイビーリーガーのような東海岸のエリートたちだと思いますよ。アメリカの国民的スポーツである野球とも深く関わっていましたし、オリンピックの代表選手もサポートしていたりと、アスレチックウエアメーカーとしては、当時のアメリカで1番だったのではないかと思います。

藤木:そうですね。今日持ってきた写真集の中に1932年のロサンゼルスオリンピックの写真があるのですが、アメリカ代表の水泳選手がウォーミングアップウェアとして〈AG スポルディング&ブロス〉製のスエットの上下を着ているんです。他の国の選手は見る限りウールなのですが、アメリカだけコットン製のスエットを着用しています。今もそうですが、国の威信を掛けたオリンピックをサポートするウェアは、最先端のものが採用されますよね。こういった過去の事実をみても〈AG スポルディング&ブロス〉がいかにすごいブランドだったか分かりますよね。

_S5A3508

右ページ中央の女性選手が着用している杢目のガゼット付きスエットが、ほかでもない〈AG スポルディング&ブロス〉製のもの

—確かにオリンピックは今でもスポーツメーカーにとって、自社製品の技術をアピールする絶好の機会ですもんね。

藤木:次の1936年に表彰台に上がっている選手でもコットンスエットを着ているのは、アメリカの選手だけなんですよね。それだけ〈AG スポルディング&ブロス〉の製品が一歩も二歩も技術的に先を行っていたのでしょう。

復活を遂げるAGスポルディング&ブロスへの期待

_S5A3539

—では最後に、この秋冬に復活する〈AG スポルディング&ブロス〉の復刻についてお伺いしたいと思います。どういったアイテムの復刻を希望されますか?

坂田:個人的には変に今っぽくシルエットやディテールをイジるのではなく、ヴィンテージのグリーティングのまま作ってほしいかな。多少の野暮ったさも、今なら大きめに着るだけでも良い雰囲気になると思いますし。個人的にはインナーにシャツを合わせてヴィンテージライクなスエットを着たいですね。

藤木:確かに身幅が大きいスエットをオーバーサイズで着る人が最近また増えてますよね。僕としては当時と同じ手法で丸胴でつくってもらいたいですね。いまとなってはちょっと作るのが大変ですが。

坂田:大きめのサイジングでいうと、ボクシンググローブポケットのパーカなんかちょうどいいかもしれませんね。ただ、ダブルフェイスにすると乾きにくいし着られる時期も短いんだけど(笑)

藤木:確かに、大勢の人のニーズを考えると一重の方が絶対に売れるんでしょうが、ダブルフェイスに反応するコアなファンもいますからね。

坂田:まだ全貌が見えないので、どういったアイテムが作られるのか分かりませんが、ヴィンテージ市場でも抜群の人気を誇る〈AG スポルディング&ブロス〉が実名復刻するというだけでも興味があります。あの幻のアイテムが新品で手に入り、しかもサイズが選べるなんて素晴らしいことだと思いますよ。こだわりのディテールを楽しみながら、昔ながらのアンファッションなヘリテージアイテムをファッションとして合わせるのも醍醐味のひとつですよね。

次のページではAG スポルディング&ブロスのヴィンテージアーカイブを紹介!
Page Top