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「古着を通して伝える洋服のバックボーン」
冨井 啓志
JOURNAL STANDARD ルクア店
「古着を通して伝える洋服のバックボーン」
冨井 啓志
JOURNAL STANDARD ルクア店
「古着が好きになったのは高校生のとき。ぼくは野球部だったんですけど、仲のいい友達数人も同じ部で。みんなファッションが好きで、色々と情報交換をしていたんです。そしたらひとりの友達が〈リーバイス®〉の“66(ロクロク)”をゲットしたっていうんですよ。最初は『なんやそれ?』って思ったんですけど、詳しく話を聞いたらすごく価値があってカッコいいものだということがわかって。それがきっかけで古着に興味を持つようになったんです。新品のアイテムに比べると値段も手頃ということもあって、それ以来古着の世界にどっぷりですよ」
「ぼくがアイコンにしていたのは、村上 淳さんですね。彼は古着と裏原ブランドのアイテムを上手にミックスしていて、そのスタイルに心を奪われてしまいました。それで〈グッドイナフ〉とか〈アンダーカバー〉などのブランドにも興味を持つようになって。当時買ったTシャツとかいまでも持っていて、それを見ていると写真と同じで当時の思い出が蘇ってきます」
「ぼくにとっての古着の魅力は2つあります。ひとつは独特の味わいがあること。いくら洋服の加工技術が上がったといっても、古着とまったく同じものはつくれないですよね。やはり、人が着ることで出てくる味に敵うものはないと思うんです。もうひとつは、いろいろなアイテムのルーツとなるものが古着にはあるじゃないですか。例えば、最近はミリタリーをアレンジしたアイテムがたくさんありますけど、その元ネタを辿ると古着のウェアに行き着く。洋服の根源を楽しめるのも古着ならではのおもしろさですね」
「無地も含めたら家には300枚くらいあると思います。『断捨離? なんですか、それっ?』っていうくらい捨てられない性分なんです(笑)。ジャンルはバンドTとか、90年代のスケートブランドのものとかいろいろ持ってきました。ぼく、時期によって傾倒するカテゴリーが違うんです。一時期はアメリカにあるハードロックカフェのTシャツを都市別に集めたりしてましたね。最近はNine Inch NailsのバンドTを漁ってます」
「おもしろいTシャツは額装して部屋に飾ってるんです。これは、Nirvanaのカート・コバーンもファンだったというTHE DEAD MILKMENというバンドのTシャツ。こうやって額のなかに入れると、プリントがたちまちアートになる。着れないアイテムはそうやって楽しんでますね」
「古着屋のなかにも得意・不得意な分野があります。例えば、ミリタリーに強いお店は軍物のアイテムに対する値段はしっかりつけるけど、スケート系のアイテムの値段を知らなかったりする。そこを狙うと、欲しかったアイテムが相場よりも安く手に入るんです。あとはフリマも狙い目ですね。一度、リサイクルショップみたいな業者の出店スペースで、古着屋で買ったら何十万もするデニムを数百円で買ったことがあって。何も悪いことしていないんですけど、お金を支払ったあと逃げるようにしてそのブースから離れましたね(笑)」
「やっぱりうんちく好きのお客さまは、服のディテールにまつわる話をすると喜んでいただけますね。そういうとき、知らず知らずのうちに自分も楽しく会話していることにふと気がつくんです。洋服って着るだけでも楽しいんですけど、そのアイテムにどんな背景があるかを知るだけで魅力が倍増すると思うんです。つまり、ひとつの情報が洋服の価値が変えるということ。ぼくの仕事は可能な限りその価値を上げることだと思っています。これからも古着を通して知識や情報を蓄えながら、その魅力や背景を伝えていきたいですね」
冨井 啓志(とみい けいし)
2001年に入社し、社歴15年目のベテラン。関西の店舗を渡り歩き、現在はルクア店に所属。その豊富な知識と経験により、お客さまからはもちろん、店舗スタッフからの信頼も厚い。プライベートでは一児の父。