歴史に培われたラストは様々な足の形にフィットします。

―素材と並んで〈オールデン〉を語る上で欠かせない存在なのがラスト(木型)だといえます。改めて代表的なタイプの説明をお願いします。

血脇:そうですね。ではまずモディファイドラストからにしましょうか。これはフットバランスと呼ばれるシリーズ中の1つとして誕生しました。汎用性の非常に高いものだといえますね。1930年代にあった原型を改良して1963年に今のタイプになりました。ハイアーチやハンマートゥ、X脚などといったトラブルを抱える方にもアーチに沿ったフィッティングで蹴り出しが良く、足が安定する位置に納まり体重を支えるようになっており、疲れにくくなっているのが特徴です。

―実は本国アメリカでは一般的ではないとの話も聞き及んだんですが。

血脇:ご指摘の通り、アメリカの普通の靴屋では販売していません。純然たるハンディキャッパー向けオンリーではないのですが、専門性の高い店舗での展開になっているからです。一般の人には目に入りにくいといえますね。

―日本での1番人気はこのラストになるんですか?

血脇:その時々で異なるとは思いますが、やはり疲れにくく履き心地がいいのでリピーターの方はとても多いですね。

―次は、これぞアメリカ靴といえるようなバリーラストについてお願いします。

血脇:アメリカントラディショナルの最たるものだといえるでしょう。非常にベーシックで、どなたにでもオススメできるラストです。プレーントゥの♯990 に代表される丸みやボリューム感などが特徴ですね。安心感が合って間口が広い定番ですが、近年はモードファッションとの親和性の高さから人気が再燃している感覚があります。

―確かに一時期は〈トム・ブラウン〉の代名詞的なアイコンだった感もありますしね。バリーと同様にアメリカ靴らしいといえばミリタリーラストですが、こちらはどういったものなのでしょう?

血脇:1940年代に第二次世界大戦の際に米軍の将校向けのドレスユニフォーム用に作られたラストになります。アメリカは合衆国ですので、多種多様な人種の足形に合うように開発された歴史を持つのが面白いですね。ちょうど平均を取ってといいますか、万能な型になっているといえます。

―最後はバンラストについてお願いします。

血脇:これはモカシン用に作られたものなので、基本的にローファーに採用されるタイプのものですね。どのラストも靴のデザインに最適なものを選ぶという大前提があり、どのラストが最も優れているというような事はありません。足の形にフィットするものをお選びいただければと思います。

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アーチフィッテイングを基準に採寸を行うための道具。おおよその目星はこれで計測することができますが、経験値があってこそだといえるでしょう。

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実際に足入れをし、収まりを見ます。カカトのフィット感や全体的な部分はシューレースを締める前にも見ていきます。

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シューレースを結び、掌や指先をフルに使って触診します。その動きはさながら名医のよう。後は対話によって、より完璧なフィットを追求していきます。

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