書籍としての体裁で雑誌的作りにこだわった。
ー気が遠くなるような取材で完成した1冊だというのがよく分かりました。モノを見続けてきた山口さんならではの仕事だと思います。
山口:僕の得意分野がモノと服だからこそ、このような内容になりましたけど、まだまだJFKには掘り出し物の情報や遺品が眠ってますよ。レストランの領収書も多かったので、グルメに強い方が取材すればそういった方面での掘り出し物の情報も得れるでしょうね。僕自身もまだまだすべてを取材し切れたとは思ってないですし。
ー今回は泣く泣くカットしたものとかも少なくなさそうですもんね。
山口:それは本当に多かったですよ。構成上、どうしても削らなければならなかったモノや写真もかなりありました。ぜひ、別の機会に取り上げたいですね。
ー書籍ということで制限も多かったのではないでしょうか?
山口:ファッション誌やモノ雑誌だったら、もっと予算もあってやりやすかったかもしれません。でも、この内容はちゃんと書籍として残しておきたかったんですよ。だから、読んでもらえる人の想定も間口を広く、色々な人が読めるように留意しました。
ー確かに、重厚な内容かと思いきや、コラムみたいで1つ1つの記事が短くて読みやすくなってますよね。
山口:それが狙いでした。長くなっても4ページまでだって決めていました。その方がテンポよく読み進めますからね。あとは、ファッションだったりギアだったりの専門用語は極力使わないようにしました。知ってる人には少し回りくどいかもしれませんが、読者層を考えると、モノ好き、服好き、ヘミングウェイの作品好き、ライフスタイル好き、いろんな人がいるはずですから。
ー下段が全て注釈になっている本になっちゃったら気軽さが減ってしまいそうです。
山口:構成が雑誌っぽいコラム集を目指していたこともあって、今回はライターの職域を超えて、企画、構成、デザインから配本までかなり細かく口を出させてもらいました。担当の編集者の方が理解のある方で本当に助かりました。
ー今回はビームス プラスでの店頭販売もされているんですよね?
山口:自ら売り込みました。客層が、この書籍の読者層と重なる部分がありますからね。ビームスのホームページやプラスのプレス遠藤さんのブログやツイッターで告知してくれた効果もあって仕入れていただいた150冊はすでに完売したそうです。僕の知人が偶然最後の1冊だったみたいで、発売2週間後に「最後の1冊だ」って言われたと連絡をくれました。とにかく発売約1週間で増刷も決まったので、我がままをいわせていただいた版元の方にも恩返しができたかなと思ってます。
ー本類って基本は委託販売なので、返本リスクとかも考えると今の時代には難しいというか厳しい販売業態だと思います。セレクトショップなどでも趣向に合った本が今まで以上に買えるようになるといいですよね。
山口:冒頭で話したプロとアマの壁が曖昧になってきたのと同じように、今後は電子書籍やネット直販など本の売り方も変わらざるを得ないでしょうね。CD販売の衰退とかと一緒です。よりユーザビリティが高いものが生き残ると思いますね。
文字数も適度なボリュームで、スラスラと読めてしまうことうけあいです。