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Extreme対談 vol.1 渋谷慶一郎×オノセイゲン(後編)

2011.12.07

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楽曲と演奏、そして録音の3つが良くないとだめですよ。

―お二人は、家で音楽を聴くときにそういうところまで意識して聴いていますか? 例えばオーディオにすごいこだわって、聴くときはスピーカーと向かい合って......みたいな感じで。

渋谷:僕は全然いいオーディオで聴いてないですよ。外出のときも耳が痛むから音楽は聴きません。ヘッドフォンとイヤホンは、音楽を作るときですらノイズチェックくらいでしか使わないかな。あと、旅行先でどうしても作らなきゃっていうときは、Etymotic Researchっていう医療メーカーが作ったイヤホンを使います。耳の中に突っ込むから、すごく低いボリュームで低音や振動まで判別できるやつがあって、それ以外は極力使用しないようにしてます。

―意外ですね。

渋谷:あとは、仮に家で良い環境で聴いたとしても、一般ユーザーにはどう聞こえるかっていうのが分からなくなっちゃうんで、自宅には良いオーディオセットは置きませんね。iPodなんかが差し込める普通のオーディオで、自分が作ってきた音源をかけてみて、どう聞こえるかっていうのを確認します。他にも、普段聴いているクラシックやポップス、クラブミュージックなんかと比較してどうか、っていうのをチェックに使っているから、家でいいスピーカーで聞き出したらマズイなというのはありますよ。

―それはオノさんも同様ですか?

オノ:んー、いや、自分が好きな音楽は、一番正確な再生システムで、つまりサイデラ・マスタリングでということですが、1回か2回だけ集中して聴きたい。一期一会とまでは言わないですが、自分の人生の時間の中から1回聴くのに5分とか10分とかかかるわけですから。ただし、楽曲と演奏、そして録音の3つが良くないとだめですよ。重要なアルバムは自分で聴くためだけにDSDにアップコンバートしてリマスタリングもできる。家では、音楽に対峙してないから、それは聴いてるとは言わない。もちろんアマゾンでCD購入するのに間違わないようにパソコンで確認とかしますよ。実際に食べなくても食事のメニュー見てるのと同じ。

渋谷:なるほど、僕はそういう聴き方を普段しないからなぁ。普段、僕は音楽掛けるときって、なんとなくかけるんですよ。なんとなくかけたときに、ふっと耳が行く箇所っていうのはどこなんだろうとチェックしていて。それは人のCDでも自分のCDでも。そこには、いわゆる曲のフックとは違うフックというのが存在していて、「今のなんだ?」「どこだ?」っていう聴き方なんです。あとは、僕は普段から生活していて、すごく物音が気になるから、物音を消すっていう用途もありますね。だから、生活しているときはほぼ音楽を流していますね。

―どういった音楽を流すのでしょうか?。

渋谷:クラシックが80%。あとはやっぱり、テクノロジーを使っている音楽は、技術的にHIP-HOPが主導しているから、HIP-HOPの新しいものというのはチェックしています。この「チェックしている」っていうのは、家で流しっぱなしにしておいて、音量とかダイナミックスの詰めかたを見ていたりだとか、なんとなく引っかかる箇所を探っているって感じですね。仕事場では音楽をずっと作っているから聴く暇はないんです。

オノ:クライアントが持込みの音源にはあらゆるジャンルがありますから、スタジオで何でも真剣に聞きます。するとオフの時間にわざわざいろんな音楽を流そうとは思わないというか、時間がない。職業柄ね、作業中にBGMって流せませんから。

渋谷:そういえば、9月にタイコクラブに行って新潟でライブをやってきたんですけど、大きいPAのシステムがあるでしょ? で、いろんなミュージシャンやDJがラップトップでライブをやっているんだけど、あの規模のPAセットと音量であれば、さすがに鳴らしているデータがCDと同じ44.1KHzなのか、それより少し良い48KHzなのかは聴いていて分かっちゃうんですよ。見ていると、CDやアルバムで人気のある人というのは、最初こそ人が集まって来るんだけど、音が悪いとすぐに空気が冷めて散って行くということが分かりましたね。曲が良いのは分かるし、その人の人気があるのも分かるんだけど、そういった「野外で体感したいな」というときは、CDと同じ44.1kHz 16bitの音源だと体感にまでたどり着かないんですよね。

―そんなことがあるんですね。

渋谷:CDを作る際に、最初っからCDフォーマットの44.1kHzで制作する人と、48kHzとか96kHzとか、もうちょっと高いレートで作っておいて、マスタリングの最後にバッとCDフォーマットに落とす人と両方のタイプがいるんですが、絶対に最初は高いレートの方が良いと思います。ライブであれば、CDと違ってそういう高音質なデータをそのまま出せるけど、そうすると、やっぱりすごく響きがビビッドなんですよね。クラブでは44.1KHzでやられても全然響かない。だから、そういうフェスに出て、どこのレーベルで人気の、って言われるから聴きに行くじゃないですか? で、音が悪いと「何だよこれ。アングラじゃん」で終わっちゃう(笑)。それを決めるのは、音圧じゃなくて音質なんですよね。

オノ:その通りですね。

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