Extreme対談 vol.1 渋谷慶一郎×オノセイゲン(後編)
2011.12.07
そういう無意識で多層な体験になっていると思うんです。
―最後に、最近の音楽の聴き方というのを、おふたりはどう見ているのか、教えてください。
オノ:それはまったくもって聴く人の自由だと思います。1ビットDSDはほとんどの人が知らないけど、すばらしいクオリティです。マーケットにも、それなりに提案は続けているんですけどね。まったく押しつけではなくて。あえて言うなら、まず自分に問いかけてください。本当に好きな音楽があるかどうか? で、もしそうであるならMP3をタダでダウンロードするんじゃなくて、せめてCDを買いなさいと薦めます。
渋谷:僕も売れるために何かしたりはしないですけど、ただやったことがある程度聴かれたほうがいい、つまり売れた方が良いとは思っている。最近よく思うのは、人は継続的な耳では音楽を聴いていなくて、音とそれにまつわる記憶とイメージを一緒に聴いているんです。
―というと?
渋谷:11月22日に僕は狂ったコンサートをやるんですが(笑)、渋谷のWWWで前半40分ピアノソロ、真ん中20分がトークショー、最後1時間半がATAK Dance Hallでストロボがビカビカ光る中で踊りまくるという、2時間半の濃厚なイベントがあるんです(笑)。それって、客層がまったく分かれていないんですよ。ピアノでファンになったOLもADHのノイジーなダンスミュージックで狂ったように踊ったりする。結局、彼女たちの話を聴いていると、ノイズは嫌いだけど僕のノイズは聴けるって言う人が多い。それはすごく面白い話で、彼女たちはノイズの後ろにピアノのイメージを聴いているんです。同時に直接的に音の刺激にもやられている。多分、音楽をいま接種するっていうのはそういう無意識で多層な体験になっていると思うんです。
トークショーをはさんで行われた、evalaとのユニット「ATAK Dance Hall」のライブ。圧倒的な音響空間を実現させてのダンスセットは、観客を未体験の領域へと誘うほど刺激的なものとなった。 Live Photo ©Shin Suzuki
―本日は、お2人に非常に興味深いお話を聞くことができました。どうもありがとうございました。