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"ハイスタ"14年ぶりの全告白 『AIR JAM』舞台裏、東北復興、原発問題、バンドの仲、そして...新曲発表!?

2013.08.23

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震災から2週間後のこと。この日は、多くの音楽ファンが伝説のパンクバンド「Hi-STANDARD」の再始動を予感した日だ。数年ぶりに会ったギター担当の横山健(43)とヴォーカル&ベース担当の難波章浩(42)がtwitter上にふたりで登場し、「GO JAPAN!」と記したのである。翌月、ドラム担当の恒岡章(41)を含め3人は「9.18 ハイ・スタンダードAIR JAM。届け!!!」と、バンド復活を示唆するツイートを投稿。11年目のあっという間の雪解けだった。その後、彼らは『AIR JAM2011』(横浜スタジアム)、『AIR JAM2012』(宮城県国営みちのく杜)を開催。そこにある想いはひとつ、「日本を、みんなを、元気にしたい」----。3人揃ってのインタビューは実に14年ぶり。観る者のケツを蹴りあげ、勇気を与え続ける彼らの現在地に迫る!(文中敬称略)

Edit&Interview_Daichi Sasa
Photo_Eiji Hikosaka[makiura office]
Text_Hiroyuki Konya

「『エア・ジャム』持ってきたぜ、東北!!!!!」
2012年9月15日・16日。『AIR JAM2011』(横浜スタジアム)の収益をもとに、東北(宮城県川崎市)で『AIR JAM2012』が開催された。2日間の観客動員数は4万5000人。チケット代は2日間で7500円。大型の音楽フェスイベントでは異例の良心価格だった。主催した「Hi-STANDARD」のメンバーは口を揃えて、「少しでもチケット代を抑えたかった」と話す。出演ミュージシャンは彼ら3人が掲げる"東北復興支援活動"に賛同した、「AA=」、「ASIAN KANG-FU GENERATION」、「BRAHMAN」や「DRAGON ASH」、「KEMURI」、「SLANG」、「マキシム ザ ホルモン」、「10-FEET」......。総勢27アーティストにのぼった。期間中、会場内では地鳴りともいえる大歓声が途切れることはなく、彼らはそれぞれの方法で言霊をぶつけ続けた。なぜ、東北の地を選んだのか? 首謀者の3人、「Hi-STANDARD」に聞いた。
Hi-STANDARD are
難波章浩(Vo & Ba) 恒岡 章(Ds & Cho) 横山 健(Gu & Vo)
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RUI HASHIMOTO[SOUND SHOOTER]

恒岡章(以下恒岡/敬称略): 僕らが動くことで喜んでくれる世代、楽しんでくれる人がいる限り、力になりたい。11年、12年と2回、『AIR JAM』をしたけど、この気持ちは今も変わらない。自分たちは演奏を楽しみ、お客さんがそれに応えてくれる。僕らの楽曲『Mosh Under the Rainbow』のイントロが鳴った瞬間、みんなが肩を組んでいくつものモッシュサークルを作る姿を見たときは、言葉にできないほど嬉しかったです。

難波章浩(以下難波/敬称略): じつはこの曲、11年の『AIR JAM』ではあえて演奏しなかったんだよね。モッシュで1つになろうってイメージの曲で、ライブの最後に演奏して、みんなで盛り上がる、我も忘れて踊る!っていうのが"ハイスタらしさ"だと思うんだよ。象徴的な楽曲だからこそ、どうしても東北で最初にやりたかったんだ。そんな思いがあったから、会場でみんなが1つになっていく姿には涙が浮かび上がるぐあらいグッときた。人と人との繋がり、その場その瞬間にしか、生まれないパワーってある!そう感じられた瞬間だったな。あと、東北では会場近くに住む人たちのことを考え、花火を打ち上げなかったから、「モッシュっていう"人の花火"を打ち上げようぜ」っていう意味も込めていたんだよ。

恒岡: 会場に集まってくれた人たちが起こしてくれた奇跡、たくさんあったよね?

横山(以下横山/敬称略): ボクが普段ライブで使うギターの形をガムテープで真似て作って息子に持たせている、"ガムテ一家"って呼んでいる、ソロで組んでいる「KEN BAND」の常連ファンがいてさ(笑)。『AIR JAM2012』二日目に、この家族が地元の人たちの気持ちをスケートボードにたくさん書いて、楽屋まで持ってきてくれて。ボードには『AIR JAM』や『PIZZA OF DEATH』(横山が運営するレコード会社)のロゴだったり、熱いメッセージがぎっしりと書いてあった。本当に感激だよ。それを見た瞬間、「これ、ステージに並べよう」とメンバー間で即決。合計10枚ぐらいだったかな。今でも大切にうちの事務所に保管してるんだ。関係スタッフだけでなく、会場にいる何万人の来場者と一緒に『AIR JAM』を盛りあげられたの。あのスケートボードは東北に『AIR JAM』を持っていった意義を心から感じられる象徴的なモノだったな。あと、亡くなった友達や同世代の仲間のため、被災地に置かれた慰霊碑(宮城県仙台市の荒浜地区)に『AIR JAM』のパンフレットをお客さんが置いていたっていう話もあったよね。

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TEPPEI

難波: あれは、心にグッときたよね。

横山: 弔いの気持ちがビンビン伝わった。自分らでは思いもつかないことをお客さんが代わりにやってくれるって、素敵だよ。亡くなった方たちにもきっと、彼らの気持ちは届いているはず。僕らや彼ら彼女らも、目には見えないけど繋いでもらったっていうさ。

難波: そうだね。メンバー一同、まったく同じ想いだよ。

横山: 現場での僕らの過ごし方って話になるんだけど、「東北ライブ大作戦」っていう活動があってさ。(募金によって集められたお金で)被災地(岩手県・宮古市と大船渡市、宮城県の石巻市)にライブハウスを作ろうっていう活動なんだけど、その中心人物の一人が(ハードコアバンドの)「SLANG」のKO(ボーカル担当)ってやつで。出番前、舞台袖で彼らのライブを会場で観てた時なんだけど、KOが、1つ1つライブハウスの名前をステージ上で伝えだして。それを聞いて涙している石巻出身のミュージシャンが涙してる姿をみた時は、ヤバかった。気づいたら自分、その後に鳴らした曲で観客に混じってダイブしてたもん。

難波: 今回参加してくれた現役バリバリで頑張っている若いバンドのパワーもヤバかったよね。一緒にできて純粋に嬉しかったな。会場に10代のロックキッズや可愛い女のコが多いのは、きっと彼らのお陰。シーンの裾野が広がるっていう意味でも、感謝しなくちゃね。

恒岡: 改めて今回のDVDを観て思ったことだけど、会場に息子さんや娘さん、奥さんを連れてきてくれる往年のファンの存在を再確認できたのも、個人的には嬉しかったな。青春時代に、夢中だったバンドを次の世代に繫げてくれているってことだからさ。

難波: 僕らが歳を重ねていくのと同じように、確実にハイスタ世代の年齢も上がってるって感じる。ライブ中、「風俗にハイスタT着たヤツで溢れてるらしいね!おまえら、本当にいいやつだな!」と、思わず言っちゃたのも、ずっとファンでいてくれる人たちへの感謝の言葉だよ(笑)

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横山: こっち系の話でいうなら、難ちゃん、AV(アダルト・ビデオ)で男優が三人の顔が描かれたハイスタのTシャツを着てる作品あるの知ってる(笑)!? 男優さんが立ちながらAV女優さんに"フ○ラ"してもらってる場面があるんだけど、ちょうど女優さんの顔の所に恒ちゃんの顔があるのよ!あとさ!あとさ!いや......話の本筋からずれそうだから、このへんでやめておこう(笑)。

恒岡: (笑)。で、話しを戻すと?

難波: 自分の子供を会場に連れてきている俺からすると、当時の僕らを知るハイスタ世代に家族ができているってのは、嬉しいよ。後から聞いたけど、今回の『AIR JAM2012』のチケット購入の際、「まずは東北の人に買ってほしい」っていう理由で自粛した人も少なくなかったみたいでさ。

横山: 昔に比べてファンの方たちが成熟してきているのは、感じるね。とにかく、東北で『AIR JAM』を開催できてよかった。ライブを観て、一緒に体感し、嫌なことが多い世の中かも知れないけど「いいことあるじゃん!」って思ってもらえたのだとしたら、純粋に嬉しいよ。

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難波: "心の支援をしたかった"。このひと言に尽きる! 「みんな喜んでくれているな」というのを肌で感じることもできたし。たった2日間だったかもしれないけど、これから皆が多くの山を乗り越えていくうえで、このフェスを思い出してくれたら......ね。

横山: 東京から被災した人たちにエールを送ることはできるけど、直感、本能的に、物理的に被災地に近いところで開催したいというのもあった。僕らが近くに行く、近くの人が喜んでくれる。開催するにあたって苦心したこともあったけど、終わってみればあっという間。もちろん、活動はまだ始まったばかり!「Hi-STANDARD」を再始動したときに、良く"再結成ビジネス"なんて叩かれたりしたけど、僕らをそんなバンドと一緒にしないで欲しい。そんなモノでは決してない。これだけは断言できる。5年、10年と活動をみてもらえればわかるから。

恒岡: 活動休止期間もありましたが、僕たちのペースでまだまだ動き続けます。

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