適材適所に合わせて選べるようにモノを所持する。
―ちなみに、西山さんのアトリエの一角には写真集が大量に置かれていますね。『IN MY EYES: JIM SAAH』や『FUCK YOU HEROES: Grean E.Friedman』『Out & About: Ari Marcopoulos』『BEASTIE BOYS: SPIKE JONZE』など、ハードコアパンクやスケート関連の写真集が目につきますが、どういった基準で置いているんですか?
西山: 本棚のラインナップってアイデンティティそのものじゃないですか。そういった意味で、ここに置いてあるのは、ぼくのメンタルをこれまで守ってきてくれたカルチャーの写真集ですね。これも自分にとってのエッセンシャルのひとつと言えると思います。
―〈ライカ〉もそうですが、西山さんがモノ選びで大切にしている考え方はありますか?
西山: すべてに対して一貫した基準があるわけではないんです。例えば、バイクであればハーレーにもスクーターにも乗りますから。強いて言うなら、その時々の気分とかシーンに対して適切なものを自分の感性で選んでいる、ということですかね。フォーマルな場にフォーマルな服を着ていくみたいなことで、日常で使うカメラとして〈ライカ〉を選んでいるのもそういう判断からですし。そうやって適材適所に合わせて選べるようにモノを所持する。そんな考え方が、自分のモノ選びの基準かもしれないです。
―それで言うと、いまはどんな気分でモノ選びされているんでしょうか?
河内: 最近、「東芝」のラジカセを買ったんです。「waltz」の角田さんから聞いたカセットテープの話にすごく引き込まれて、もともと持っていたカセットテープを改めて聴いたりしてるんですよ。そういうオールドメディアにしかない魅力をもう一度探しているような感覚があります。やっぱりテープはテープにしかない音があるし、DVDもVHSもちゃんと観る時間をつくる必要があるじゃないですか。そうやって向き合わないとすべてが片手間になってしまうので。それはひとに対しても同じで、いまはスマホひとつで事足りることが多いけど、ちゃんとひとと会う時間を少しずつ取り戻しているような気がします。
―もちろんスマホやサブスクなどのサービスがあることで生活が豊かになっている部分もありますが、一方でアナログなメディアや実際にひとと過ごす時間からしか得られないものも多いですよね。
西山: 懐古主義というわけではないし、新しいものも好きなんですけど、向き合う時間が減ってくると、なにかに真剣になることもなくなってきますよね。そうすると、今回のテーマのエッセンシャルなモノというのも世の中から消えていくんじゃないかという気がしていて。だから、いまはなにかに向き合う時間を大切にしたいですし、その手段のひとつとして〈ライカ〉のカメラで写真を撮っているんだと思います。
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