FEATURE
essential designs – あのヒトの欠かせないモノ –Case03 尾花大輔とエルメスのバッグ。

essential designs – あのヒトの欠かせないモノ –
Case03 尾花大輔とエルメスのバッグ。

あのヒトにとって、なくてはならないモノ。その必要不可欠な理由を知れば、モノ選びの視点や暮らしのこだわりが見えてくる。服も、日用品も、仕事道具も。ひとの数だけあるエッセンシャルのかたち。その一つひとつの裏側にあるストーリーを辿っていきます。第3回は、尾花大輔さんとエルメスのバッグ。

PROFILE

尾花大輔

1974年生まれ、神奈川県出身。高校時代から古着屋で経験を積み、その後、原宿の名店でバイヤーやショップマネージャーを兼任。1996年、立ち上げに携わった古着のセレクトショップ「ゴーゲッター」をオープン。「古い物とコンディションがいい物ほど価値がある」という古着界への価値観に疑問を抱くようになり、店舗内でリメイクやオリジナルの展開をスタートし、2000年にショップ「ミスターハリウッド」を原宿にオープン。翌2001年にブランド〈N.ハリウッド〉を設立。その他にも、多岐に渡るクリエーションで世界的に活躍する。
Instagram:@daisuke_obana

“未完成から生まれた逸品”という奇跡。

ー尾花さんが紹介する私物の〈エルメス〉のバッグ。読者にも興味があるひとは多いと思います。

尾花: ワークアウトグッズや愛車も、最初に候補として挙げたんですけどね。そうしたら「いいですね! 他の候補もありますか?」なんて言うから(笑)。もうちょっとファッション寄りの方がイイのかと思い、これを選びました。

ーわがまま言って申し訳ありません! 今回ご紹介いただくのが〈エルメス(HERMES)〉のアマゾニア素材の「ガーデン・パーティ」。アマゾニアって聞き慣れないなと思って調べたところ、1998年の春夏シーズンにデビューした素材だそうですね。

尾花: 〈エルメス〉が「ラテックス(生ゴム)を使ってレザー風素材がつくれないか」と開発したようで、当時は定番シリーズを目指して、上位クラスだと「バーキン」まで幅広いアイテムに使われていた素材です。なかでも「ガーデン・パーティ」は豊富なサイズがラインナップされていたみたいで。ただ、経年劣化に理解を得られずアマゾニアは10年ほどで廃盤になったらしく、そうなると、元・古着バイヤーとしては廃盤モデルだし全シリーズ揃えたくなるじゃないですか。

ーそれでいくつかサイズをお持ちいただいたワケですね。

尾花: いくつか人にあげちゃって、いま手元に残っているのは6つぐらい。なかには、乗馬用のブーツ入れなんかも持っています。

尾花さん曰く、「シンプルな上に比較的軽くて使いやすい」と3拍子揃った「ガーデン・パーティ」。荷物をラフに、かつ沢山入れられる点が気に入っている。サイズは左から、TPM、PM、GM。「購入先は基本的にネットオークション。人気が出て高騰するのがイヤだったので、これまでメディアでの紹介は避けていました(笑)」

ー活躍頻度が一番高いのはどれでしょうか?

尾花: 小さいサイズのTPMは使い勝手がいいので、一時期よく持ち歩いていました。ただ自分は普段から車移動で、アウターからジムギアまでなんでも入れるので、結果、使用頻度でいうと1番大きいサイズのGMを持つことが多いですね。

ーこの経年劣化によって生まれた表情もまた、何とも言えないおもしろみがあります。

尾花: 手に入れた当初はここまでじゃなかったんですが、表面のコーティングが擦っただけでポロポロ落ちる。その様がおもしろくて、近所の公園の砂場で砂をゴシゴシ擦り付けてみたらこうなりました(笑)

ーこれまでも各メディアで、尾花さんの愛用品として〈エルメス〉のアイテムが紹介されてきました。同社のレザーバンドに付け替えた〈ロレックス(ROLEX)〉の「エクスプローラー1」や、〈ゴローズ(goro’s)〉のピンキーリングと馴染むと着用されていたシルバーリングしかり。このバッグも以前から愛用されていたんでしょうか?

尾花: 10年くらい前かな。これと同じバッグを持っていた先輩がいたんです。先輩のは下地のキャンパス素材がもっと露出していて、エイジングされたブランドのバックかと思うほどでした。本人曰く、新品で買って気づいたらそうなっていたようで。自分はそこが逆にシブくて美しいと思ったんです。ピカピカの「バーキン」を持って歩いている自分は想像できないけど、これなら〈エルメス〉でも持てると。

ーたしかに「バーキン」を持つ尾花さんを見たら、「なんか意外だな」とは思うかもしれません。

尾花: 意外性とか違和感って言葉自体はすごく好きなんですけどね。そもそも重いバッグは好きではないので。「ガーデン・パーティ」の場合、コットンキャンバス素材のシンプルなトートバッグだから、軽くて使いやすいのがいい。

ーステッカーカスタムもされているんですね。

尾花: 〈N.ハリウッド テストプロダクト エクスチェンジサービス〉の「ウェアラブルステッカー」です。クリアシートの上からステッカーを貼ると内側がポケットになるので、SuicaなどのICカードを入れて、素早く駅の改札も通れるように7,8年前につくったもので。ただ、モバイル対応できるこの時代にはもうその用途は推奨してませんが(笑)。もう1つはフィンランドのミュージアムでもらったステッカー。なんか可愛いんですよね。

活躍頻度が一番高いというGMサイズは、自身でステッカーカスタム済み。彩度の高いオレンジとグリーンの色合いが、ボディのラフな素材感を引き立てる。最初からそうであったかのような自然なマッチング具合に、「すっかり馴染んできました」と尾花さん。左手の薬指には、さりげなく〈クロムハーツ〉のリングが。

ーあえてのエイジングの上、ステッカーカスタムまで。すごく尾花さんらしい〈エルメス〉のバッグとの付き合い方だなと感じました。

尾花: 思いっきり王道のモノにも手を出しますが、普段使うのなら、わかりやすいのはちょっと照れくさくって。そういう意味でもちょうどいい塩梅だったのが、これ。“未完成から生まれた逸品”っていうところも気に入っています。

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