INTERVIEW with Cole Young
PROFILE
1994年生まれ。カリフォルニア州サンディエゴ・カールスバッドで育ち、ロヨラ・メリーマウント大学でゴルファーとしてプレーするためにLAへ。2017年、ゴルフブランド〈マルボン ゴルフ〉に参画し、約4年間にわたりブランドディレクターなどを務める。2020年に独立し、自身のブランド〈メタルウッド スタジオ〉を設立。90年代から2000年代初頭のレトロなゴルフスタイルに、ストリートウェアの感性を融合させたアイテムを発信している。
Instagram:@metalwoodstudio
エリート主義からの脱却。LAで起きた、ゴルフのカジュアルダウン。
─コールさんがゴルフを始めた頃、LAでゴルフをするひとたちはどんな服装をしていたんですか?
Cole: ぼくはサンディエゴのカールスバッドで生まれ育って、LAには大学のゴルフチームでプレーするために来ました。2012年のことです。当時のゴルフはすごく“お堅い”というか、エリート主義っぽい雰囲気があって、いまみたいなカジュアルなスタイルをコースで見ることはほとんどなかったですね。
─それが変化したのはいつ頃からでしょうか?
Cole: 2017〜18年頃から、いまみたいにカジュアルダウンし始めたと思います。最近はTシャツやジーンズでもプレーできるコースも多いし、本格的なアウトドアウェアを取り入れたスタイルも見かけるようになりました。LAは、そういう新しいゴルフスタイルや、これまでのゴルフウェアに違和感を持っていたひとたちを最初に受け入れてくれた場所だったんです。
〈メタルウッド スタジオ〉のショップが位置するのは、〈ステューシー〉や〈カーハートWIP〉、「ユニオン」などが軒を連ねるストリートファッションの中心地、ラ・ブレア通り。
店内にはアパレルだけでなく、コール自身がセレクトした希少なヴィンテージクラブも販売されている。さらに、クラブのメンテナンスやカスタムができる修理工房から、パターの練習ができる人工芝のスペースまで併設。
─そのきっかけは何だったのでしょうか?
Cole: 何かひとつの出来事があったわけではないけど…ただ、ぼくがかつて〈マルボン ゴルフ(Malbon Golf)〉にいた2017年〜2020年は、すごく重要な時間でした。というのも、彼らが業界で初めて”ゴルフ以外のブランド”とコラボレーションするようになったから。それが、他の多くのブランドがこのニッチな領域に入ってくるきっかけになったんだと思います。そこから、スケートボードやサーフィンのカルチャーがゴルフに浸透し始めたことも、大きく影響していますね。
─先日、〈アディダス ゴルフ〉とのコラボレーションを記念したゴルフイベントでは、多くのスケーターやデザイナーが集まっていましたね。彼らのようなひとたちがゴルフをすることに驚きました。
Cole: イベントに来てくれたのは、「初心者のゴルファー」か「経験のあるコアなゴルファー」かなんてことは気にしていないし、自分をどちらかの枠に当てはめたいとも思ってないようなひとたち。彼らはただ、自分らしくいたいだけなんです。〈メタルウッド〉はまさに、そんな“真ん中”にいるひとに向けて発信しています。だからぼくたちのアイテムは、普通のゴルフ専門店ではなくて、「Kith」や「PACKER」のようなファッションブティックに置いてもらうようにしているんですよ。みんなはゴルフ向けではない場所で〈メタルウッド〉を見つけてくれる。それが、ぼくたちが提案する“ゴルフという世界への第一歩”なんです。
〈アディダス ゴルフ〉とのカプセルコレクション発売日、〈メタルウッド スタジオ〉のショップではレセプションパーティが開催された。オープン直後からレジ前に会計待ちの列ができるほどの盛況ぶり。
思い思いのストリートスタイルに身を包んだ来場者たち。一見、普段ゴルフと縁がなさそうなひとたちが自然と集まっていることが、〈メタルウッド スタジオ〉がいかに現地のストリートで支持されているかを証明している。
─たしかに、日本で〈メタルウッド スタジオ〉を取り扱っているショップも、ほとんどがゴルフ専門店ではないですよね。
Cole: 東京でゴルフをするのにはお金がかかるから、難しいところもある。だからこそ、日本では「WISM」や「C.E.L.STORE」「Bonjour Records」のようなお店に置いてもらっているんです。若くておしゃれなひとたちが買い物をするけれど、ほとんどがゴルフ用品を探しているわけじゃない場所。それがゴルフへの入り口になると思うんです。
─むしろ、ゴルフに興味がないひとにこそ〈メタルウッド スタジオ〉に触れてもらいたいということですか?
Cole: そう。すでにゴルフをしているひとに「自分はかっこいい」と思わせたいわけじゃない。〈メタルウッド〉はかっこいいひとたちを見つけて、彼らに「君たちもゴルフをやっていいんだよ」って伝えたいんです。
90年代への憧れと、アディダスという原風景。
─〈メタルウッド〉は90年代から2000年代のゴルフスタイルから着想を得てるそうですが、当時のどんなムードに惹かれているのでしょうか?
Cole: ぼくはその時代に育って、ゴルフが大好きだったけど、当時は欲しかったギアを全部新品で買えるような余裕はありませんでした。だからいまでも、あの時代に対してすごく思い入れがあるし、ロマンチックな憧れがあります。大人になってヴィンテージを手に入れられるようになって、気づけば自分のクローゼットにはその時代のものばかり。
そうしたアイテムだけじゃなく、音楽やアート、ファッション、スケートボードやサーフィンといった他のカルチャーからもインスピレーションを受けていて。それらの要素が自然とミックスされて、ぼくのデザインに影響を与えているんですよね。
─Instagramには、〈アディダス〉の服を着てプレーしている、幼い頃の写真も投稿されていましたね。
Cole: そうそう。ぼくが育ったカールスバッドという街は、ゴルフメーカーの拠点が集まる場所なんです。学校には〈テイラーメイド〉や〈アディダス〉で働くひとたちの子供がたくさんいて。あるとき、〈テイラーメイド〉の元メタルウッド開発責任者(編注:元々は木製だったウッドクラブを金属素材でつくったものをメタルウッドと呼ぶ。テーラーメイドはその先駆者)の娘さんと友達になりました。彼女の家のガレージに行くと、〈テイラーメイド〉と〈アディダス〉の製品が山積みになっていて、もう頭がおかしくなるくらい興奮しましたよ(笑)
─そのエピソードを聞くと、今回〈アディダス ゴルフ〉とコラボレーションしたのも必然な流れのように思えます。
Cole: 高校時代には競技ゴルフを本格的にやっていたから、〈アディダス〉のプロダクトテストチームに入っていたんです。2週間ごとに新しいウェアが送られてきては、レポートを書いて提出していました。当時からお気に入りの選手はみんな〈アディダス〉のウェアを着ていたし、〈アディダス〉は間違いなくぼくのアイデンティティであり、DNAの一部。だから、昔からたくさんの繋がりがあったブランドとこうしてコラボできるのは、本当にクールなことですよ。
─これまで〈メタルウッド スタジオ〉は「ガゼル」や「プレデター」をアレンジするコラボレーションを行ってきましたが、初めて〈アディダス ゴルフ〉とアパレルも含めたカプセルコレクションをつくってみて、いかがでしたか?
Cole: 〈メタルウッド〉として自分たちでオリジナルの靴をつくることはないと思うから、大好きな靴のデザインを〈アディダス ゴルフ〉と一からつくれるのは本当に最高で、特別な機会をもらえて感謝しています。今回は単にいまあるモデルの色を変えるだけじゃなく、全く新しい靴をつくることができました。もうすぐワールドカップが北米で開催されることもあって、サッカーからインスパイアされた、ロープロファイルのトレンドを取り入れたコレクションにしたいと思って。アパレルも含めてすべてがごく自然にまとまって、服の色合いも靴に完璧にマッチしていて、本当に興奮しています。
コールが一から制作に携わったゴルフシューズ。1970年代のサッカーシューズからインスパイアされ、レザーアッパーに飾りステッチが施されている。
〈アディダス〉が2006年のワールドカップに向けて開発したデザインコンセプト「チームガイスト」。今回発売されたポロシャツには、その象徴的な曲線のデザインが落とし込まれている。
─普段からプロダクトをつくる上で、デザインと機能、どちらを先に考えるんですか?
Cole: 間違いなくデザインが先ですよ。何よりもまずかっこいいものをデザインして、その後に「よし、これをゴルフで使えるようにしよう」と考えるです。〈アディダス ゴルフ〉も〈メタルウッド〉もスポーツがルーツにあるブランドだけど、“おじさん向けのゴルフウェア”をつくるのはぼくの仕事じゃないから。とはいえ、もちろん機能も大切にしていますよ。たとえば今回つくったパンツは、スケーターが穿くようなストレートシルエットだけど、サイドには90年代後半のサッカーウェアからヒントを得たベンチレーションを備えているんですよ。
─今回のコラボウェアも、ゴルフコースだけでなく街でも着られるデザインですね。最後に、このインタビューを読んで「ゴルフを始めてみようかな」と思ったひとに、アドバイスをお願いします。
Cole: ゴルフは、ただボールを穴に入れるだけのスポーツとは思ってほしくないです。コースの周りをカートで走ったり、友達と一緒にふざけ合いながら遊ぶ。それがゴルフをしていて一番楽しい時間なんです。ゴルフは最高ですよ、何よりもね。