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essential designs – あのヒトの欠かせないモノ –Case05 藤井隆行とヴィンテージのスツール。

essential designs – あのヒトの欠かせないモノ –
Case05 藤井隆行とヴィンテージのスツール。

あのヒトにとって、なくてはならないモノ。その必要不可欠な理由を知れば、モノ選びの視点や暮らしのこだわりが見えてくる。服も、日用品も、仕事道具も。ひとの数だけあるエッセンシャルのかたち。その一つひとつの裏側にあるストーリーを辿っていきます。第5回目は、藤井隆行さんとヴィンテージのスツール。

PROFILE

藤井隆行

1976年、奈良県生まれ。武蔵野美術大学を中退後、セレクトショップ、ブランドの販売員を経験し、2001年より〈ノンネイティブ(nonnative)〉のデザイナーを務める。ワークやミリタリー、アウトドアの要素を現代的に再構築し、ファッション性と機能性を兼ね備えたリアルクローズを提案している。
Instagram:@takayuki_fujii_

どこに置いても、いくつあっても。

ー藤井さんは他誌で“本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南する”連載をされていますよね。

藤井: 連載開始からもう5年は経ちますね。

ー服以外のありとあらゆるモノを紹介されていますが、選ぶ際の基準ってあるんでしょうか?

藤井: 前提として“読者が必ず買えるモノ”というのがあります。それでいうと今回紹介するモノは、またちょっと違うかもしれません。

ーインテリアにもこだわりをお持ちの藤井さんが紹介してくれるのはスツール。初歩的な質問ですが、チェアとの違いとは?

藤井: これは一目瞭然で“背もたれの有無”。無いのがスツールです。背もたれが無いことで花瓶やオブジェをディスプレイするベースなったり、足を乗せればオットマンとしても使えたりと万能なんですよ。

ー色々な用途に対応すると。いくつかご用意いただきましたが、これらはいわゆるデザイナーズになるのでしょうか?

藤井: そうですね。ただ、アートではなくプロダクト(工業製品)です。あくまで使うことを前提にしているから1点モノではなく、それこそ同じモノが何百脚とつくられていたりします。とはいえ、この辺のスツールは、特定の施設とその用途に合わせてつくられているので、いまでは買えないモノも多くて。世の中に出回っている数も限られているんです。

ーその中でもお気に入りということですね。

藤井: 数自体は結構持っているのですが、その中からピエール・ジャンヌレとシャルロット・ペリアン、ルイ・ソニョが手掛けたスツールを選んできました。ジャンヌレは、コルビュジエの従兄弟にあたるスイスの建築家で、コルビュジエの重要なパートナーでもありました。ルイ・ソニョは装飾芸術家でデザイナー、シャルロット・ペリアンは建築家でデザイナー。この2人はどちらもフランス人です。3人は同時期に活躍していて、ジャンヌレとペリアンは一緒に働いていたりしますし、1935年のブリュッセル万博では、コルビュジエ、ルネ・エルブストらとともに展示も行っていたりと、背景を知るとより面白いんですよね。

ピエール・ジャンヌレ(上2枚)、シャルロット・ペリアン(左下)、ルイ・ソニョ(右下)が制作したスツール。名作揃いで、エイジングも味わい深い。

ーなるほど。藤井さんは何をキッカケにこうしたスツールにハマったんですか?

藤井: 車、家具、服、靴って大概の男性が好きなモノなのかなとは思うんですが、ことデザイン的な視点で考えると、どれも1950年代~60年代に大体が完成されちゃってるわけです。この年代のスツールを好むのはそこに理由があるのかもなと。あと、先ほど言ったように使い勝手もいいし、ヴィンテージ・ファニチャーの中では値段もそんなに高くないっていう理由もあるかもしれません。その結果、ついつい増えていってしまったといいますか。

ーたしかにサイズ感もちょうど良くって、ついつい集めたくなる感じはわかります。

藤井: チェアと違ってテーブルとセットである必要もないし、どこに置いておいてもイイ。しかも似たテイストとか色違いだったら、いつの間にか数が増えていても家人にバレる心配がないですからね。ここはかなり大事なポイントです(笑)

ー普段どうやって探しているんですか?

藤井: ヴィンテージ・ファニチャー好きにはファッションの世界と繋がっているひとも多いので、「アレが欲しい・コレが欲しい」と話していると、ちょうどいいタイミングで譲ってくれるひとが現れるんです。あとは何軒かある知り合いのインテリアショップから、いいアイテムが入ってきたら連絡が入るようにもなっていて。

スツールはリラックスタイムを過ごす際に足を乗せるオットマンとして使うのも心地いい。

ー引き寄せられて集まってくると。ヴィンテージ・ファニチャーではコンディションも重要なポイントと聞きます。

藤井: ぼくの場合、キズやダメージはあまり気にしません。そもそもフランスのヴィンテージのほとんどはダメージがあるのが普通なので。ショップも傷を直すことなく、あえてそのままの姿で販売しますし、そういったエイジングによる味わいも好きです。デニムなんかもそうじゃないですか。興味のないひとからしたら汚いだけでも、好きなひとにとっては「これがイイ」となるっていう。

ーまた、藤井さんはストーリーのあるデザインが好きというお話しもされてますよね。

藤井: どういった経緯で、どんな発想と思考の元にデザインされたのか。また、それはどういう場所で使われていたのか。“バックストーリーを知る”という行為が好きで、そうした知識を本などで得るとそのモノをより楽しめますからね。たとえばペリアンのラタンのスツールは、日本にも古くから伝わる藤編みの製法が使われていて民藝的要素が入っているとか。すごく興味深いですよね。

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