
monessay ─スリに気をつけて
フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。今回は〈ラコステ(LACOSTE)〉の長袖ポロシャツ。
- Text_Toshiyuki Sai
- Photo_Kengo Shimizu
- Edit_Ryo Komuta
フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。今回は〈ラコステ(LACOSTE)〉の長袖ポロシャツ。
フランス、パリには何度か行ったことがある。もっとも古くは1984年ごろ。以来数度、たぶん二桁には満たないが、それに近いくらい。
はじめての時、先輩方にスリに用心しろとアドバイスされた。観光地は当然ながら街角、あるいは地下鉄内でも油断するなと。荷物から目を離すととたんにかっぱらわれるなど。
ジプ◯ーの女子供には特に注意するようにとも言い聞かされた。近づいてきたら必ず逃げるようにしろと。人を見たら泥棒と思えだ。
パリではないが、ローマではホームレスのような中年女に付きまとわれて不快な思いをしたことがある。明らかにポケットに手を入れようとするのだが、こちらも若かった。中年女はこちらの機敏さには勝てないのであった。
バルセロナでは鳥の糞のようなものが肩に落ち、振り返るとみすぼらしい身なりの中年の男女がティッシュをくれた。とっさのことで何事かわからなかったのだが、どうやらこいつらが鳥糞のようなものをぼくの肩に掛け、助けるフリしながら何かかっぱらおうという魂胆だったらしい。途中、企みがわかり、やつらの手を振りほどいたのでことなきを得た。
ヨーロッパはいまでもこうしたスリ、かっぱらいの類の軽犯罪が多い。旅行する時は十分に気をつければならない。
毎年1月はパリコレのシーズン。アパレル事業のスタッフはランウェイショーの準備のため数名が渡航する。そしてフイナムチームもこちらは取材者側として各ブランドのショーを見にパリへ向かう。
この1月、このフイナムのスタッフ2名がパリの地下鉄内でスリにやられた。二人とも揃いも揃ってパスポートと財布をやられたらしい。うち一人はバッグの底にパスポートを敷き、その上にカメラを置いていた。しかしカメラはそのままでその下のものをパクられたという。重さの変化に悟られないようにしたのか、プロの仕業である。しかしそこまでゴソゴソやられているのに気づかない方はどうなのかとも思うが、離れ業的な仕事なんだろう。それがよりによって帰国前日。予定の飛行機に乗れなかった。
それが理由ではないが、個人的にはあまりパリ行きにモチベーションが上がらない。犬の糞もいっぱい落ちてるし、昔ほど買物するにも対ユーロレート、物価上昇などの理由でお得感もない。昔はパリといえば自分にとって買物だったけど、いまではちょっと薄れてしまった。
はじめて行った時は、まずは興奮しながらシャンゼリゼの〈J.M.ウエストン〉に行ってローファーを買ったもんだ。ギチギチのサイズを履かされてキツいといっても聞き入れてくれない。これがお前のサイズだ、なんて言い切られるのだから仕方がない。
次に〈セントジェームス〉とフレンチラコだなんて探してみてもどのお店に行ってもこれらは売ってない。東京ではインポートショップ(いまのセレクトショップ、当時こういう呼び名はなかった)には普通に売っているのにパリでは探すのが困難だった。
フレンチラコは東京でしか手に入らないというのが、当時の思い出。
ちなみにフレンチラコと言ってるのは、フランス生産のラコステのこと。80年代の半ばすぎだったか、ラコステの生産地がフランスから途上国へ移りはじめたので、フランス産が希少になっていたという時代背景がある。インポートかぶれの自分は途上国生産品を身につけるのを許さず、フランスの産にこだわっていた。いま考えるとアホである。
その途上国産のポロシャツは、いまではまたフランス産になったとか。しかしこれはどうやら日本では流通してないらしい。日本で売られているのは秋田県で作られているとのことだ。
自分にとってポロシャツといえばこれ。原則ちょうちん袖の半袖だけど、むしろ春先に着るのに長袖が嬉しい。寡聞にして長袖のポロというのはよそではあまり見ない。
さすがポロシャツの総本山。
フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。
電話:0120-37-0202
www.lacoste.jp